市総合戦略策定に高校生・女性はじめ幅広い市民の声反映させよ

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DSC_0614◯38番(山本明久君) 策定中の静岡市総合戦略について質問します。
 本市においても、これまで国の方針に沿って地域再生や雇用創出、少子化対策などさまざまな施策を打ってきましたけれども、結局、地域経済の衰退や急速な人口減少を打開できないという問題を、今、深く全面的に検証して、今度こそ、真に有効な打開策となる方向を示すことが求められており、その役割が総合戦略になるべきだと私は思います。そうした点を踏まえて、本市総合戦略をより効果あるものにする立場から質問をしていきます。
 1点目は、策定プロセスについてです。
 内閣府がことし1月に示した「地方版総合戦略策定のための手引き」では、幅広い年齢層から成る住民を初め、広く関係者の意見が反映されるようにすることが重要だと指摘しております。私もそうだと思います。ですから、本市において、人口流出の焦点である若い女性や高校生などを含めて、高齢者や青年、中小業者や労働者などの声をしっかり聞いて、どうすれば安心して住み続け、働き続けられる静岡市にできるのか。いわば市民総がかりで知恵を出し合い、戦略に取り組んでいく必要があると思います。
 ですから、パブコメ以外に、幅広い年齢層の意見を反映する取り組みをどのように行うのか、示してください。
 2点目は、戦略の内容についてです。
 パブコメ用に示された静岡市総合戦略中間案における人口目標を実現するための6つの戦略体系とその取り組みは、ほとんど従来から取り組んできたものばかりですけれども、「地方版総合戦略策定のための手引き」においても、これまでに既に実施されている施策であっても、効果が高いものは含めてよいと言っております。政府が示す政策分野に沿った戦略体系で示された内容について、これまで取り組んできた結果、結局、負のスパイラルを打開できていないものが、今度の静岡市総合戦略に搭載して、果たして効果が高まるのかどうか。これまでの検証と総括をしっかりする必要があるのではないか、お聞きしておきます。
 もう1点、内容に関しては、10年後に人口70万人を維持するという人口目標を含めた基本的な考え方や、出生数をふやすという基本目標についてです。
 本市において、死亡数がおおむね毎年8,000人に、出生数が毎年6,000人にふえたとして、差し引きマイナス2,000人ですから、転出入の社会増については、ここ5年程度の推移で毎年マイナス400人という現状を、プラス1,200人にして、10年後の70万人維持につじつまを合わせるというものになっております。
 しかし、その中で出生数というのは、本来、国や行政が計画的にコントロールしようとすることが適切なのかどうかという点です。やはり、希望をかなえるというところにとどめるべきではないと思いますが、どうか。
 このことに関しては、ある著名な学者が、出生率を高めているフランスで人口政策を聞いた際に、その政府の担当者は、子供を産むか産まないかに政府が介入するなどということはあり得ないといった文章を雑誌に寄せております。このことを紹介して、1回目の質問を終わります。

◯副市長(小長谷重之君) 私からは、静岡市総合戦略中間案の6つの戦略体系の従来の施策について、これまでの成果をどのように総括し、どのように変えていくかについてお答えさせていただきたいと思います。
 本市では、国の動きに先駆けて、子ども医療費助成制度の拡充や待機児童園の整備など、強い危機感を持って人口減少対策に取り組んでまいりましたが、少子高齢化に伴う自然減圧力は想像以上に大きく、人口減少に歯どめがかかっておりません。これまでの取り組みを総括した上で、オール静岡体制で人口減少対策に取り組む必要があると判断をいたしまして、3次総では2025年の総人口70万人維持を目標に掲げ、さらなる子育て環境の充実を目指した子ども・子育て新制度や、地域経済のさらなる発展を目指した産業振興プランの内容等を盛り込んだところであります。
 現在、策定を進めております静岡市総合戦略では、国が示した、仕事を生み出す、移住・定住を促進する、若者、女性の活躍を支え、子育ての希望をかなえる、時代に即したまちをつくるの4つの戦略体系に本市独自の戦略体系といたしまして、交流とプレゼンスを高める、「ひと」を育てるの2つの位置づけをしているところでございます。また、総合計画では、主に現在、本市に住んでいる市民をターゲットとしておりまして、行政サービスの最大化を目指しております。
 これに対しまして、総合戦略では、例えば、本市への移住を働きかける先といたしまして、現在、首都圏に住んでいる人などを、いわゆる未来市民と名づけてターゲットとしておりまして、市外からの転入者増加策や、本市からの転出者抑制策を進め、人口減少に立ち向かうことを目指しております。従来とは異なるこの未来市民という新たな視点のもと、首都圏から本市への移住促進に向けた取り組みなど、新たな人口減少対策を総合戦略に位置づけることで3次総を補強し、加速させ、2025年の総人口70万人維持を実現してまいりたいと考えております。

◯企画局長(山本高匡君) 静岡市総合戦略に関します2点の御質問についてお答えいたします。
 策定プロセスに係る住民意見の反映状況についてでございますが、静岡市総合戦略の策定に当たりましては、若年世代、特に若い女性の転出が多いという本市の人口動態の特徴を踏まえ、それぞれターゲットを絞った意見聴取を行ってまいりました。
 若年世代については、市内在住の高校生年代3,000人を対象に、就職や進学に関する意識アンケート調査を実施したほか、静岡大学主催のフューチャーセッションにおいても人口減少問題をテーマに設定していただき、若年世代と一緒になって本市の人口問題を議論いたしました。
 女性につきましては、本市から首都圏へ転出した女性、及び市外から本市に転入してきた女性に座談会形式でヒアリング調査を行い、本市に転入しての印象や、転出の目的などについて意見を聴取いたしました。
 さらに、静岡市創生会議、産・学・官・金・労、メディア、それから市民の方々、22名に入っていただいていますが、それぞれの委員のところに直接出向き、御意見を聴取するなど、限られた時間の中で精力的に多様な視点から意見を聴取したところでございます。
 続きまして、出生数の基本目標を行政がコントロールすべきではないということについてでございますが、現在策定中の総合戦略におきましては、出生数を計画的にコントロールすることを目標としているのではなく、個人の結婚、妊娠、出産の希望をかなえることを目標としております。
 平成25年度に実施した静岡市子ども・子育て支援に関するニーズ調査によると、就学前、及び就学児童を持つ家庭における理想の子供の数は、3人という回答が最も多い結果となっております。一方で、26年度の本市の合計特殊出生率は1.40にとどまっておりますように、理想と現実が大きく乖離しているのが実態でございます。また、その乖離している理由としては、「子育てに係る費用負担が難しい」との回答が最も多く、次いで「仕事と子育ての両立が難しい」、「高齢や体質等で出産が難しい」という順位になっております。そのため、子育て環境を整えるために、ライフデザインの構築から結婚、妊娠、出産、子育てにわたる切れ目のない支援に取り組むことで、個人の希望を実現していきたいと考えております。
  〔38番山本明久君登壇〕

◯38番(山本明久君) 答弁いただきましたが、果たしてしっかりした検証になっているのかどうかというのが、具体的には明示されておりません。社会増プラスで1,200人という裏づけも具体的には説明はされておりません。果たしてそれでいいのかということもあるし、幅広い年齢層の意見についても、限られた時間で、限られた範囲でということですから、本来、今回の静岡市総合戦略に求められる役割からして、それでいいのかと。これは後で質問します。
 出生数をふやすということについては、コントロールではないと言いつつも、目標は出生数をふやすと行政が明記しているわけですね。もしそうでないというのならば、やはり表現は変更すべきではないかと思います。
 富山県の氷見市では、高校生の転出超過という、本市と同様の課題に直面するもとで、どうすれば地元に帰ってくるのか、高校生にしっかり議論してもらった結果、奨学金制度の創設という方向を市が検討しているそうです。ですから、当事業者の意見を聞き、方針にしっかり反映させるということが非常に大事だと思います。
 各階層の多数の市民参加のもとでこの戦略を議論して策定することで、市民みずからが自分のものとして、じゃあ、実行していこうというふうになっていくのではないか。それがないまま10月策定というのは、幾ら交付金の上乗せがあるにしても、余りにも拙速過ぎます。幅広い年齢層の市民の意見を反映させるというのならば、年度いっぱい計画は可能ですから、時間をかけて、各地で意見交換会やタウンミーティングなどを精力的に回を重ねて実施する必要があるのではないか。答えていただきたいと思います。
 2点目は、戦略内容です。
 従来施策の検証という点では、政府も「地方版総合戦略策定のための手引き」じゃなくて、内閣府のところで、これまで余りにも短期的な効果を追求し過ぎた、縦割りになり過ぎたという若干の反省はしております。けれども、本市の静岡市総合戦略案で、従来計画の目標しか掲げられていない1つの例として、答弁にはありましたけれども、産業振興プランを敷きながら、「しごとを産み出す」戦略において、雇用の創出目標で、設定が10年間で10人しかふえないという点があります。
 これは、戦略全体の勢いから見ても、移住促進を中心に、社会増は向こう10年間で1万2,000人ということになるわけですから、さらに家庭と就労の両立を進めていくという方針が掲げられて、子育て支援の戦略でも、就業数をふやしていくという構えがあるもとで、なぜ雇用数がふえない設定になっているのか、説明をしっかりしていただきたい。こんな構えでいいのかどうかという点です。
 幾ら人口が10年間で1万人の減少という見立てがあるにしても、社会経済を好循環にしていく戦略全体にふさわしく、この目標を基本的に見直すべきだと私は思います。
 3点目は、人口目標の基本的な考え方に記載されている、地域の持続的な発展のためにという点についてです。
 これは、非常に大事なことだと思いますので、このことを打ち出すのであれば、地域内で経済循環を活性化させて、消費や所得や雇用などが他地域に流れるのではなく、地域内で循環させて、内発的発展を進める地域循環型社会を目指すという中身を、戦略に具体的に明記する必要があるのじゃないかということです。どう考えるのか。これから人口減少社会の中で、このことは決定的に重要だと私は考えますので、考えをお聞かせください。
 以上、2回目です。

◯企画局長(山本高匡君) 静岡市総合戦略について、多数の市民への幅広な意見聴取を行う必要があるのではないかということについてでございますが、人口減少対策は、皆さん御承知のとおり、待ったなしの状態でございます。静岡市としては、一刻も早く実質的な対策に取り組む必要がございます。先ほどの答弁でお答えしましたように、市内の高校生、若年女性、それから市外の移住希望者や東京在住者などの生の声、それから、産・学・官・金・労・言という各界の創生会議委員の皆さんから専門的な御意見を短期間で幅広く聴取したものと考えております。
 策定した総合戦略については、今後改めて広く市民に周知いたしますとともに、人口減少の危機感を共有することで機運を醸成し、市民と一体となって人口減少に取り組んでまいりたいと考えております。
 次に、「しごとを産み出す」戦略における目標設定の考え方でございますが、2025年の総人口70万人維持の実現のためには、雇用創出や地域経済の活性化は不可欠でありますことから、静岡市総合戦略に仕事を生み出すという戦略を位置づけております。
 目標設定については、昨年度策定いたしました第2次静岡市産業振興プランと同一の市内総生産額、それから市内就業者数とさせていただいております。このいずれの目標も、現状で推移いたしますと著しく減少傾向にあります。それを上向きに改善しようとする目標でございます。これらは、地域経済の活性化や雇用の拡大を図られたかどうかを示す指標として適していると判断しましたことから、総合戦略の目標とすべきであると考えております。
 最後に、地域の持続的な発展のためには、内発的発展を目指すべきであるが、いかがかということについてでございますが、総合戦略の「しごとを産み出す」の戦略に位置づけております5つの戦略産業は、政府機関の地方移転などの一部の事業を除き、いずれも本市が比較優位性を持つ産業を生かした内発的な発展を目指すことを基本としております。地域の持続的な発展には、これら内発的な発展を目指す地域内での経済循環の活性化のみならず、関係の深い周辺自治体と一体となった広域的な連携による圏域の活性化も重要であると考えております。
 本市は、政令指定都市として、静岡県中部圏を牽引する責務を担っていることから、市内での経済循環の活性化のみならず、周辺市町と連携することで、本市及び中部圏域全体の持続的な発展を図ってまいりたいと考えております。
  〔38番山本明久君登壇〕

◯38番(山本明久君) やはり答弁を聞いておりますと、10月策定というのがありますので、せっかく政府も幅広い市民、各年齢層からの意見を聞いて反映させようと言っているのに、本来やられるべき市民からの意見聴取がごく限られたところでしか、十分されないまま、戦略が策定されようとしております。それは、今聞いてみると、内容の面においても、従来の施策が恐らく大半になりましょうから、今回、補正で2つばかりアルファベットのものが並んでおりますけれども、それがちょっと入る程度ですよね。本当にこの戦略が従来と変わらないのじゃないかと。これは打開できるというパンチが全然感じられないのですね。就業者数にしても、従来策定したプランから発展がないわけです。私はつじつまが合わないのじゃないかと思います。
 今の産業戦略策定プロセスの最大の問題というのは、そこにあるわけです。急いで10月までにやると。全国的には10月策定は4割ぐらいじゃないかと見られているわけですけれども、せっかくのチャンスなのに、幅広い年齢層の市民の意見の反映が十分されないまま、戦略が策定されていっていいのかと私は思います。
 そこで、3回目にお聞きしていくことは、3次総と一体になった総合戦略だと思います。第3次総合計画は議決をいたしました。内閣府の「地方版総合戦略策定の手引き」では、議会の議論を重視するよう求めているのですね。ところが、10月策定だと、その議論がほとんどされないわけです。私はその戦略の重要性からいって、議決すべきだと思います。ですから、年度末までしっかり意見聴取会、タウンミーティング等を含めて聴取をやりながら、2月議会でいいでしょう。しっかり議決をできるように、中身も充実させる必要があるのじゃないかと思いますが、どうか。
 最後に、戦略内容について1点お聞きしておきます。
 結婚や出産の希望をかなえるという、それはもちろん重要な位置づけがされているわけですけれども、特に女性や若者の所得増対策、正規雇用拡大策。現状では働く女性の6割が非正規だと言われていて、もちろん正規を希望されないという方もいらっしゃるわけですけれども、基本的にはやはり正規雇用をふやしていくという、地域で所得を拡大していくという。国が示すように、企業は移転したら、そこだけ限定正社員という形ではなくて、基本正社員というようなところを希望者には保障していくように、せっかく推進組織には企業代表も入るわけですから、企業にそこはしっかり行政としても求めて、はっきりと効果が上がるような取り組みを戦略に盛り込む必要があると思いますけれども、どうかという点です。
 これは、以前の議会で私は、内閣府の調査で20代、30代の婚姻状況が、非正規の方は正規の方の5分の1程度の結婚しかされていないと。所得も年間300万円未満の方が300万円以上の方の3分の1程度しか結婚できない状況が全国調査であると示しましたけれども、せっかく今回、総合戦略を策定するというのならば、この問題に社会全体でメスを入れていく必要があると私は考えます。それこそが実効ある政策、戦略になるのじゃないかと、不可欠だと私は考えております。
 総合戦略を今回、5年でという政策を打つわけですけれども、総合戦略が求める効果は、やはり長期的な効果を求めるわけですよね。しかし一方、今のまま政府が求めるままの……

◯副議長(遠藤裕孝君) あと1分で終了してください。

◯38番(山本明久君)(続) 静岡市が今やろうとしている、当面5年間の交付金メニューに基づく取り組みの中で、人口減少対策の効果が求められるということになっていけば、本当に従来の施策の枠を超えない、失敗を繰り返すことになりかねないのじゃないかと危惧を抱かざるを得ません。その背景には、今の政府による地方創生基本方針の中にローカルアベノミクスを浸透させるということで、人口減少を切り口に、人口流出をせきとめるダムをつくるとか、地域社会を拠点に集約するとかということが自治体に押しつけられようとしているのですね。人を人口という集団の総数として扱うと、人の暮らしも生業も見えてこないということがあります。今求められるのは、そこにしっかり対応する戦略だと思います。
 以上です。

◯企画局長(山本高匡君) 総合戦略を10月までに策定する意義、また議決すべきではないかという御質問についてですが、国の人口ビジョンによりますと、出生率の向上が5年おくれるごとに、将来の定住人口がおおむね300万人ずつ減少すると試算されており、人口減少対策は待ったなしでございます。人口減少対策を推進するためには、現在策定中の総合戦略の内容を来年度当初予算に確実に反映させる必要があることから、10月末の策定を目指し、現在、作業を進めております。
 総合戦略については、国から、議会と執行部が車の両輪となって推進することが重要であり、十分な審議が行われるようにすることとされているところです。この総合戦略については、本市の条例において議決すべき事件として位置づけられてはおりませんが、静岡市創生会議へ議長に住民代表として参加していただいているほか、適宜、策定状況を御報告するとともに、予算審議において委員会等で御意見をちょうだいするなど、十分に連携を図って策定してまいります。
 最後に、結婚や出産の希望をかなえるための取り組みについてでございますが、静岡市総合戦略においては、戦略体系の1つに、若者、女性の活躍を支え、子育ての希望をかなえるという戦略を位置づけ、結婚や出産に関する希望をかなえるために障害となっている社会的要因を排除し、希望の実現につなげることを目標としております。
 社会的要因の中には、議員御指摘の所得増の問題、それから正規雇用の拡大に関する問題もございますが、ワーク・ライフ・バランスなどの働き方の問題や、男性の育児参加などの家庭環境の問題など、多くの要素が含まれております。戦略においては、働き方の希望の実現のみならず、生産性の向上にもつながる可能性があるワーク・ライフ・バランス、及び女性の活躍に注目し、国、県、民間事業者の協力のもと、現在、プロジェクトチームにおいて具体的な事業の検討を行っております。
 最後に、今回の総合戦略では5年間のソフト事業も打ち出しますが、あわせて長期的な効果を持つ取り組みについても盛り込んでまいりますことをつけ加えさせていただきたいと思います。