子供の貧困について質問

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48◯31番(山本明久君) 私は、格差と貧困の広がりのもとで、今、大きな社会問題になっている子供の貧困について質問をしていきます。

今回の質問では、岩波新書の「子供の貧困-日本の不公平を考える」という文献を参考にいたしました。著者は、国立社会保障・人口問題研究所の阿部 彩さんという方ですけれど、それによると、1人当たり世帯所得を順に並べた場合に、中央値の半分以下の所得の人を貧困、厳密には相対的貧困ということなんですが、どれだけ貧困の人がいるかというのを貧困率としています。ですから、子供の貧困率は、全部の子供数のうち何%の子供が貧困かということになっています。

日本では、90年代から上昇して2004年には子供の貧困率が14.7%に達して、子供の7人に1人が貧困だということが言われています。私は、弱肉強食の新自由主義路線、非正規雇用をふやしたという政治が、子供の貧困をふやしてきたというふうに思います。

同時に、子供の貧困を考える場合に、もう一つ大事な定義が、2007年の国連総会でされています。そこでは、子供の貧困とは単に今見た経済的な貧困だけではなくて、子どもの権利条約、これは、日本も含めて192カ国で批准されていますが、これに明記されたすべての権利の否定だということです。権利条約では、子供の権利は、子供の最善の利益を確保するために、生命への権利、学ぶ権利、成長と発達する権利、参加と意見表明権、遊び、プライバシーなどの子供固有の権利を定めて、行政にその措置を求めています。ですから、この概念を適用しますと、裕福な家庭でも学校現場でも、子供の貧困は起こる可能性があるという認識です。

そこで、市長部局と教育委員会に対して、この子供の貧困に対してどういう認識を持っておられるのか、まずお聞きしておきます。

次に、具体的には、やはり主に経済的な貧困への対応についてお聞きしていきます。

貧困は、子供の心身の発達、学力形成とか人格形成に大きな影響を与えますので、今回は時間の制約でわずかのことしか聞けませんが、1つは、お手元の資料にある就学援助ですけれど、就学援助率、資料によりますと、本市が平成20年度で5.38%に対して、右側にある政令市平均は、19年度ですが17.71%ということですから、本市は平均の3分の1しか受けていないということです。

また、年間11万円に及ぶ高校授業料の減免についてですが、本市が4.1%に対して全国の公立高校平均は、17年度ですが9.4%です。これも全国平均の半分しかないという状況です。

ですから、それぞれここ5年間の推移の実態について、どのように評価しているのかお聞かせいただきたいと思います。

もう一つは、義務教育費の保護者負担の実態についてです。

近年、教育負担の大きさが少子化の一因だと指摘されてきています。本市の義務教育において、保護者負担の内訳として、教材費を含めた教育活動にかかわるもの、また、学校行事、修学旅行や遠足、給食費、学年費というくくりもあるようですが、一定の分類ができる範囲で、どんな負担がどれくらい徴収されているのか、教育委員会としてどのように把握しているのか明らかにしていただきたいと思います。

以上、1回目です。

 

 

◯保健福祉子ども局長(寺前泰男君) 子供の貧困への対応についての御質問にお答えいたします。

子供の貧困について、どう認識しているかという御質問でございますけれども、子供の貧困は、一般的な所得の貧困ばかりでなく、教育や情報などの基本的な社会サービスを利用できない状態も含めると定義されております。このような状態は、子供たちの精神的、肉体的、情緒的な発達に悪い影響を及ぼすものとしておりますので、本市としても同様の認識のもと、さまざまな施策に取り組んでいるところでございます。

以上でございます。

 

 

◯教育次長(古屋光晴君) 子供の貧困への対応について、4点の御質問にお答えいたします。

まず、子供の貧困についての認識についてお答えいたします。

貧困を理由に子供たちの教育の機会が失われることがあってはならないということは、当然のことでございます。静岡市では、就学援助制度を初め、市立の高校の授業料減免制度などを実施しておりまして、経済的な理由により教育の機会を失うことがないように支援しております。

また、静岡市が平成17年に策定した新しい時代をひらく教育基本構想の中で、本市の基本姿勢として、自立・共生・協働を掲げ、子供たち一人一人を個人として尊重した教育の実現を図っているところであります。

2点目は、要保護、準要保護に対する就学援助の5年間の実態と評価についてお答えいたします。

平成16年度の認定者数は2,508人で児童生徒全体の4.6%でございました。その後、認定者数、認定率は毎年少しずつふえ、平成20年度の認定者数は2,930人、認定率は5.38%となりました。要保護世帯は減っておりますが、準要保護世帯は多くなっている傾向が見られます。

3点目は、高校授業料減免の5年間の実態と評価についてです。

減免を受けている生徒数の割合は、全日制につきましては、ここ数年間3.5%程度で横ばいでありますが、多様な生活環境にある定時制の生徒につきましては、年度により異なっておりまして、20%前後で推移しております。減免の対象者は、児童扶養手当の受給者が毎年度6割程度を占めており、母子家庭などに対する支援が中心になっているものと考えられます。

なお、経済状況の悪化により学校への経済的な相談も増加傾向にありますが、授業料の徴収率は毎年度100%であり、本制度に対するニーズには現在こたえられているものと考えております。

最後に、小学校等における保護者負担の実態を把握しているかという御質問でございます。

教育委員会としましては、現在、小中学校において保護者が受益者として負担する教育費については、正確な実態調査は実施しておりません。

以上でございます。

〔31番山本明久君登壇〕

 

 

◯31番(山本明久君) 子供の貧困がなぜ問題なのかということなんですけれど、先ほど紹介した本では、貧困と学力の関係についても、これはOECDが3年ごとに行っている国際調査で、その相関関係が明らかだという紹介がありますし、貧困と子育て環境の関係についてもこのような指摘があります。低所得の世帯に、子育てに困難を抱える親が偏っていることは疑いないというデータで示されています。

さらに、貧困と健康被害、貧困と虐待、大人になってからも不利になるという貧困の連鎖という問題についても、15歳児の貧困が教育機会を限られたものにして、それが恵まれない就職になり、それが低所得等生活困難の固定になるという、教育委員会も、一定、その配慮の考えが示されましたけれど、そういうことです。

また、日本は、OECD18カ国のうち、唯一、社会保障の再配分後の所得による貧困率のほうが、再配分する前に比べて高くなるというデータが示されています。つまり、低所得世帯にとって、社会保障の給付より税負担のほうが高いので、社会保障を受けて逆に子供の貧困率が上がるという珍しい逆転現象が起きているというふうになっています。

ですから、一番の問題は、子供が希望を持つことさえ奪われることになっているということで、これは、自己責任という問題では解決できないことです。子供の貧困は社会的には絶対容認できないものだという認識が、行政には必要だというふうに思います。ですから、両部局とももう少し、絶対容認できないものだという深刻な受けとめをぜひしていただきたいというふうに思います。

ですから、その認識のもとで、子供の最善の利益を確保するという立場に立つと、福祉と教育という子供の発達を保障するための行政の対応というのは、極めて重要になってきていると思います。

その点から言うと、本市で今できることの1つは、市長部局ですが、次世代育成支援対策行動計画である子どもプランに、しっかりとこの問題を位置づけるということだと思います。これは、18歳までを対象にして21年度、今年度までの5カ年の前期計画で進められており、ことしは、来年度以降5年間の後期計画を策定する年度に当たっています。

そこで、具体的に子どもプランの後期計画の策定に当たって、子供の貧困をめぐる現状分析や市民ニーズの調査、そして住民参加と情報公開ということについてどう対応しようとしているのか、お聞かせいただきたいと思います。

次は、教育行政に関してです。

就学援助率が全国平均に比べて3分の1しかないことについて、答弁にもあったんですが、保護世帯全体がふえているのに要保護がなぜ減っているのかということもありますけれども、制度の周知方法、申請の受け付けなども反映があるのかどうか、課題についてどう考えているのかお聞かせいただきたいと思います。

また、17年度から政府は準要保護に対する補助金を一般財源化いたしました。本市は、それに対して必要な財源はしっかり確保されているのかどうかについてもお答えいただきたいと思います。

もう一つ、教育費の保護者負担の実態についてですけれど、調査すらしていない、受益者負担だからと言います。しかし、幾ら受益者負担とはいっても、学校教育の中で、ほぼ全員対象にして、これは必要なんですよということで徴収されていることですから選択の余地はないわけです。やっぱりこの問題でも、本来無償であるはずの義務教育にたくさんの費用がかかっている、その実態はわかりませんが、経済的に困難な家庭では、子供への深刻な影響になっているんじゃないかというふうに思われます。

ですから、一方で、教育費用を援助する就学援助率が全国平均のわずか3分の1だと。ですから、教育の負担に困っている家庭というのは、その条件をクリアしていようがしていまいが、本当にたくさんいると思います。ですから、小中学校における教育費の保護者負担の実態については、教育機会をしっかり確保するということは教育委員会も考えておられるわけですから、当然、人格形成という教育基本法の理念にのっとっても、これは少なくともしっかり調査すべきではないか。今までしていなかったなら、しっかり調査していただきたい。どのように考えておられるのかお聞きして、2回目を終わります。

 

 

◯保健福祉子ども局長(寺前泰男君) 子どもプラン後期計画の策定に当たって、子供の貧困をめぐる現状分析、市民ニーズ調査、住民参加と情報公開についてどう対応するかとの御質問でございます。子どもプラン後期計画の策定に当たりまして、市民の実態やニーズを把握するため、平成20年度に就学前児童及び就学児童を持つ保護者各2,000人、計4,000人を対象とした市民アンケート調査を実施するとともに、市内15カ所で236人の参加を得て市民懇談会を開催いたしました。これらの調査の結果、子ども医療費助成の拡大など、子育てのための経済的支援を求める声が多く上げられました。

この結果を踏まえて、後期計画案を策定し、パブリックコメントや市民懇談会などを通じて市民参加や情報公開を図り、平成22年3月までに計画を策定していきたいと考えております。

以上でございます。

 

 

◯教育次長(古屋光晴君) 2点の御質問にお答えいたします。

まず、就学援助率が全国平均より低いことについてどのように考えているのか、また、準要保護について、国庫補助が廃止になっても市の予算をしっかり確保しているのかという御質問でございます。

就学援助制度については、各学校を通じて保護者全員に対して、就学援助制度のお知らせを配布したり、広報しずおかや静岡市のホームページへの掲載などにより広く周知を図ってきております。

さらに、学校に対しては、年間を通じて、機会あるごとに保護者への働きかけをするなどのきめ細かな対応をお願いしております。

認定率は全国平均を下回っておりますが、認定者数はこの5年間で422人ふえております。また、就学援助の対象者の増加に伴い、その経費も年々増加しておりますが、経済的に困窮している世帯に対して、今後も義務教育がひとしく受けられるよう、就学援助制度の周知に努めてまいりたいと考えております。

次に、小中学校における保護者負担の実態を調査する考えはないかという御質問でございます。

各学校によって保護者負担の内容が異なることから、補助教材、学習用具、校外教育活動に伴う費用と項目ごとの実態を正確に把握することは難しいと考えております。

以上でございます。

〔31番山本明久君登壇〕

 

 

◯31番(山本明久君) 17年度に策定された前期の、今の子どもプランの策定前の市民ニーズ調査でも、子育てや教育に係る負担を軽減してほしいという声が断トツに多かったわけです。ですから、この今回後期に向けてのアンケートでも、この声がやっぱり一番多いというふうに聞いております。近々発表されるようですが、この声にしっかり今こたえることが、どうしても必要だと思います。

ですから、この調査結果を十分生かして、後期計画の策定に当たっては、子供のこの貧困問題について組織的にしっかり検討するということと、具体的に必要な負担軽減の問題について、あらゆる問題に対応していく、このことが求められていると思いますが、どのように検討しているかお聞かせいただきたいと思います。

次に、教育的な課題についてです。

実は、この3月に私、内職をして、子供さんを学校に行かせているお母さんから、内職で本当に収入が少ないと。子供の教育費を工面しているんだけれど、本当に負担を軽くしてほしいという訴えを受けました。ですから、教育費の負担の多さに耐えながら頑張っておられるこういう保護者の方々をしっかり応援するという姿勢が、今、教育委員会には必要じゃないかというふうに思います。

なぜ就学援助率が低いのかということについても、分析的な答弁はありませんでした。周知をしていると言いますが、なぜ低いのか。申請すれば、利用できる保護者の方はもっとたくさんあるはずだと思います。一般財源化についての答弁ですが、答弁をもししていなければしていただきたい。今、生活保護基準の1.3倍ということで運用されていますが、少なくともこれを緩和して1.5倍程度にできないかという考えについてお聞かせいただきたいと思います。

また、高校の授業料の減免についても、滞納がないという答弁でしたけれども、これも、そうはいっても全国に比べて半分の利用率ですから、この授業料減免の制度の周知と制度そのものの拡充について、どのようにお考えかお聞かせいただきたいと思います。

特に、高校の授業料という問題は、先ほど述べたOECD18カ国のうち、授業料を取っているのは、日本を含めてわずか3カ国だけなんですね。その問題からもぜひお答えいただきたい。

最後に、教育費の保護者負担ですが、調査は難しいと、ですからやらないという答弁でした。これは、子供の貧困についての認識が浅いからそうなるんですよ。そういうことで、現在、それは、くくりはいろいろ工夫すればあると思うんです。実態は、学校に行って教育委員会がつかめばいいわけですから。

 

 

◯議長(近藤光男君) 質問は、あと1分で終了してください。

 

 

◯31番(山本明久君)(続) そのつかんだ内容について、内容、額などについて、これは公費負担にしようと思えば政策的にできるはずなんです、受益者負担でやっているということですから。受益者負担ということそのものの不当な面はあると思います。先ほど言ったとおり。

ですから、公費負担を広げるように検討できないかどうか、見直せないかどうか。

そういうことで、教育委員会の真剣な対応を答弁で示していただきたい。

 

 

◯議長(近藤光男君) 時間になりましたので質問を終了してください。

 

 

◯31番(山本明久君)(続) 以上です。

 

 

◯保健福祉子ども局長(寺前泰男君) 子どもプラン後期計画の策定に当たって、子供の貧困問題への対応を検討しているかということでございますが、子供たちを取り巻く社会経済の状況や市民アンケート調査の結果などを踏まえ、子どもプラン後期計画における具体的な施策について検討しているところでございます。

以上でございます。

 

 

◯教育次長(古屋光晴君) 3点の御質問にお答えいたします。

まず、就学援助における収入基準の緩和についてどのように考えているかという御質問でございます。

平成17年度に準要保護に対する国庫補助の廃止を受けて、他都市の中では、認定基準限度額の引き下げや認定要件の厳格化が行われているケースも出ております。本市では、認定基準も従来と同様の生活保護基準の1.3倍を維持していきたいと考えております。

次に、高校授業料減免制度の拡充についての考えについてお答えいたします。

減免制度は自治体により規定が異なるものであり、また、授業料滞納状況や減免件数も各地域の社会経済情勢に伴い、かなりのばらつきがあります。静岡市は、他の政令指定都市や県に比べ減免の対象範囲を広く設定しており、授業料を滞納する生徒もいないことから、直ちに制度を拡充することは考えておりません。

なお、この制度につきましては、入学説明会、入学式や入学のしおりで保護者に説明した上で、随時、学級担任等が相談を受けているところでありますが、経済状況の悪化も踏まえ、今後とも制度の周知や積極的に相談に応じていく体制づくりに努めていきたいと考えております。

最後に、義務教育における保護者負担について、公費負担を広げるように見直せないかという御質問にお答えいたします。

保護者が負担する教育費については、必要最小限の受益者負担であり、各学校において保護者の理解を得ているものでございます。

今後も、できるだけ保護者に負担をかけないよう、学校へ指導、助言してまいります。

なお、国において教育費の保護者負担の軽減について話し合う有識者懇談会が設置されております。近々提言がまとまると聞いておりますので、その動向等については注視しているところでございます。

以上でございます。