新型コロナウイルス感染症経済対策について、高齢者の認知症対策について

◯(杉本 護) それでは、通告に従って質問します。
 初めに、新型コロナ感染症対策における小規模・中小企業の支援策についてです。
 本市はこの間、新型コロナ危機の下、様々な対策を講じていますが、年末を迎え、経済の主役である中小企業及び小規模企業への支援策を緩めることはできません。失業者が7万人を超え、そして小規模企業の倒産割合が増える中、新型コロナ感染拡大第3波が押し寄せる状況で中小業者の経営は依然として厳しい状況が続いていると感じています。
 そこで伺いますが、本市の経済情勢について、9月議会では、厳しい状況が続くとの認識を示していましたが、現状ではどのような認識を持っているでしょうか。
 次に、高齢者の認知症対策としての補聴器補助についてです。
 まず、高齢化社会が進む中、認知症患者への対応は家族だけの問題ではなく、地域としても大きな問題となっています。昨年度、地域包括ケア推進事業の1つとして、千代田地区で行った、自宅でずっとミーティングに参加させていただきましたが、その中でも認知症への対応も重要な課題として話し合われています。
 そこで伺います。静岡市の認知症高齢者数の過去3年間の推移はどうなっているでしょうか。お願いします。

◯経済局長(加納弘敏君) 本市の経済情勢の認識についてですが、内閣府が11月に公表した本年7月から9月期の実質GDPは、4月から6月期に比べ5.0%、年率換算で21.4%の増と大幅なプラスとなり、また11月の月例経済報告では、景気は持ち直しの動きが見られるとされています。しかしながら、これらは本年4月から6月期の落ち込みからの反動による増加であり、GDPの前年同期との比較ではマイナス5.8%であることからも、本市の経済情勢は依然として厳しい状況が続いているものと認識しております。

◯保健福祉長寿局長(和田明久君) 静岡市の認知症高齢者数の過去3年間の推移ですが、要介護等認定者数のうち認知症高齢者数は、平成29年度は2万3,678人、30年度は2万4,399人、令和元年度は2万5,444人となっております。

◯(杉本 護) 中小企業、小規模企業への支援について質問を続けていきます。
 先ほど本市の経済情勢は引き続き厳しい状況にある、このように答弁されました。こういった厳しい状況であるということを共通の認識として、以下、聞いていきたいと思います。
 菅首相のブレーンである国の成長戦略会議の委員にデービッド・アトキンソン氏がいます。彼は、中小企業は日本という国にとって宝でも何でもない。宝なのは大企業と中堅企業。特別な理由がない限り、小規模事業者や中小企業に宝と言えるような価値はないと述べて、中小企業の数を現在の半分以下、160万社程度に減らすべきとの考えを示しています。
 私は、こういう考えの方が首相のブレーンにいることに大変な危惧を覚えるわけですが、この考えは、これまでの中小企業に対する本市の考えに反しているのではないでしょうか。
 そこで伺います。デービッド・アトキンソン氏の小規模事業者や中小企業に宝と言えるような価値はない、そのような意見について、静岡市の考えはどうでしょうか。

◯経済局長(加納弘敏君) 本市の考え方といたしましては、中小企業・小規模企業が産業の中核をなし、本市の経済と雇用を支え、また、地域に密着した社会貢献活動の主体としての役割を担う重要な存在であると位置づけており、このことは、静岡市中小企業・小規模企業振興条例においても規定しているところでございます。

◯(杉本 護) ただいま中小企業や小規模企業は、重要な存在というふうに御答弁なさいました。アトキンソンさんの考え方を明確に否定したと受け止めました。ぜひそのような立場を堅持いたしまして、中小企業の事業継続、発展に今後も力を注いでいただきたいと思います。
 そこで、じゃ、どのような対策が有効かです。今、国はGoToイート、GoToトラベルなどの景気浮揚策を展開しています。新型コロナ感染拡大で一部の地域でGoToトラベルの自粛要請、静岡県は12月1日からプレミアム付商品券の販売中止などの見直しも行うという状況でありますが、本市は独自の対策としてGoToしずおかキャンペーンなど経済活性化を図っています。取組の状況は、今、配布した資料にあるんですけれども、GoToイートの関連では、対象店舗が3,000以上ある中でオンライン飲食予約のサイトに登録している店は761、約4分の1です。赤富士券や青富士券と呼ばれる食事券事業に参加しているのは約半数です。また、GoToしずおか商品券の配布宿泊施設は、対象の施設160に対して94施設、約6割弱となっています。いずれも対象業者数から見ると、思ったより参加店が少ないように思います。
 そこで伺います。まず、GoToイートの取組について、市はどのように評価をしているでしょうか、お願いします。

◯経済局長(加納弘敏君) キャンペーンに参加している店舗からは、事務処理が煩雑で入金にも時間がかかるという意見がある一方、利用者が増えてとても助かったという声も伺っており、オンライン予約や食事券の発行も順調であったことから、飲食店の利用促進に一定の効果があったものと認識しております。

◯(杉本 護) それでは、GoToトラベル及びGoToしずおか、この取組についてはどのように評価しているでしょうか、お願いします。

◯観光交流文化局長(大石貴生君) 市内の宿泊客数は、新型コロナウイルスの影響により、5月は対前年比で約20%まで落ち込んだものの6月には、いち早く本市及び静岡県が観光キャンペーンを開始し増加に転じました。その後、国のGoToトラベルキャンペーンが追加され、9月の宿泊客数は対前年比約66%まで持ち直し、10月、11月は、さらに回復が見込まれています。
 宿泊事業の規模や形態により事業者間でキャンペーンの効果に偏りはありますが、全体としては、これらのキャンペーンの取組が観光需要の回復、消費の喚起に有効であったと評価しています。

◯(杉本 護) 今、答弁のとおり私もこのGoToキャンペーンが消費喚起として一定の効果があることは否定いたしません。しかし、問題は参加している事業者の数です。少ないということです。GoToイート参加事業者の立場で考えてみると、オンライン予約の場合、予約サイトに対して送客手数料や掲載手数料がかかります。食事券を扱えば換金が1か月単位で、長ければ現金になるまでに2か月かかります。その間の運転資金が必要となるために、現金決済の小規模な事業者はなかなか参加することにちゅうちょします。また、GoToトラベルは、宿泊費の35%が割引となるため、観光地で高額な宿泊施設に集中する傾向があり、低料金の施設はあまり利用されないと聞いています。
 こうした状況を見ると、全ての事業者に行き渡るような新たな対策が必要ではないかと思っています。そこで紹介したいんですが、相模原市が行った「さがみはら39(サンキュー)キャッシュバックキャンペーン」です。これは、キャンペーンに参加した飲食店を利用すると、サンキューキャンペーンの判こをついた領収書が発行されます。合計が1万5,000円以上になった領収書を市に郵送すると、指定した口座に3,900円キャッシュバック、サンキューという感じですね。キャッシュバックされる仕組みです。その仕組みならば、事業者は運転資金の心配はなく、利用者も商品券を買いにいく手間が省け、分かりやすいと話題になった事業です。今回のGoToイートなどに参加しきれないような小規模な事業者への支援につながるのではないかと思います。
 今、新型コロナの感染拡大、第3波が来ています。こういった中で今すぐやれということは言いませんが、事業者や利用者の負担を軽減した支援事業として有効だと思います。
 そこで伺いますが、本市でも相模原市が行ったような「さがみはら39(サンキュー)キャッシュバックキャンペーン」、こういった事業の支援策を実施してみたらどうでしょうか、お願いします。

◯経済局長(加納弘敏君) 相模原市が実施したキャンペーンは事業者の負担が少なく、参加しやすい手法である点は参考になるものと考えております。本市としても支援策を検討する際には、事業者の負担軽減に配慮してまいります。

◯(杉本 護) 新型コロナ感染が今収束していくという状況に向かって、そうなった場合にはすぐにでも支援ができる、そういったことが必要だと思います。しかもそれが素早く実行できるように、新たな事業として、今からでもぜひ準備していただきたいと思います。
 もう1点提案があります。中小業者の経営危機の下で、このままでは年を越せない、そうした声が聞こえています。新型コロナの感染が急速に広がっている中で、客足が止まった下での有効な支援はやはり直接支援、減収を補填する直接支援だと思います。国の支援が不十分な中で、市独自の年越し支援が必要です。財源は、既に事業が終了しているエール静岡事業者応援金、あとエール静岡観光事業支援金、もう1つは雇用調整助成金の申請事業費助成、この3つの事業で使われていない予算が20億円以上あります。これを有効に使うべきだと私は思います。
 そこで伺いますが、新型コロナ感染症の影響で困っている全ての事業者に行き渡るようエール静岡事業者応援金の制度を拡充した上で、いま一度実施する必要があるんではないかと思いますが、市はどのように考えているか、お答えください。

◯経済局長(加納弘敏君) 現時点においては、エール静岡事業者応援金のような支援策を再度実施することは検討しておりません。今後も地域経済の活性化に向けた消費喚起施策などを進めてまいります。

◯(杉本 護) 私も消費喚起そのものは否定はしません。必要だと思います。ただ、今は、今日も24人の感染者が出ています。東京に換算すると480人分です。まさに自粛が始まるような状況なんですね。こういった状況のときには、やはり客足が止まっていく。そのためには、中小業者が生きて年を越すためには直接的な輸血が必要なんです。そういう意味では、今まさにこういった事業を再開すべきだと私は思います。このことを強く求めて、次の質問に移ります。
 高齢者の認知症対策における補聴器補助についてです。先ほどの答弁のとおり、認知症の患者は年々増えています。また、高齢者に対する認知症患者の割合は、平成29年度は11.4%、令和元年度は12.1%と割合も増えています。
 こうした状況の中で、本市は認知症ケア推進センターを立ち上げました。市長は、このことを駆け込み寺と称しておりますが、ここでお伺いします。10月にオープンした認知症ケア推進センターは、どのような役割を担っているのでしょうか、お願いします。

◯保健福祉長寿局長(和田明久君) 認知症ケア推進センター「かけこまち七間町」は、認知症の総合的な支援を担うことが役割です。
 主な機能は3点です。1点目は、御本人や御家族などの認知症に関する困り事や悩みなどの個別相談支援と専門医療機関等と連携した支援、2点目は、効果的な認知症ケアの実践などの研究と介護従事者の人材育成、3点目は、脳の健康度チェックなどによる認知症の早期発見や認知症の正しい理解などの普及啓発と理解促進です。

◯(杉本 護) 認知症ケア推進センターは、今の答弁のとおり認知症になった方本人や家族のケアを総合的に支援していく、そういったことに大きな力を発揮するものと、私も本当に期待しています。しかし、そもそも認知症にならないことが一番必要なわけです。そこで、難聴の問題を考えたいと思います。
 加齢性難聴によって音を認識する脳の側頭葉が劣化すると、言葉がゆがんで聞こえるようになるそうです。すると、会話中も相手の言葉が分からなくなり、そして人とのコミュニケーションをとるのが億劫になり、そして社会から孤立してしまうケースも少なくないという指摘があります。
 2017年に開かれた国際アルツハイマー病会議で、ランセット国際委員会が認知症の約35%は予防可能な9つの原因により起こると考えられる、その中で難聴が最大の危険因子であると発表しています。また、国の新オレンジプランでも同様の指摘をしています。
 そこで伺います。高齢者の難病は、鬱や認知症になる危険因子との指摘がありますが、市の認識はどうでしょうか、お願いします。

◯保健福祉長寿局長(和田明久君) 平成27年1月に国が策定した認知症施策推進総合戦略──新オレンジプランにおいて指摘されているとおり、加齢や遺伝性、高血圧、糖尿病、喫煙、頭部外傷等と合わせて、難聴も認知症の危険因子の1つであるということは認識しております。

◯(杉本 護) 発表されたことは認識していると今おっしゃいました。まず、評論家のような考え方ではなくて、実際に現場に行って足を運んで現状を見ていただきたいと思います。
 私が最近会った方の話なんですが、耳が遠いので人前に出るのが億劫、家でテレビを見ていたほうが楽ですと言っていました。こういった方が段々社会から孤立し、そして私は認知症になっていく、そういう点が十分にあると思っています。
 私は、高齢者の難聴タイプというのは、鬱や認知症予防だけの問題ではないと思っています。今、少子高齢化の下で働く高齢者の年齢も年々上がっています。大事な労働力です。こうした高齢者が働く上でも、難聴化対策は大変重要な問題で、補聴器の活用が有効なことは言うまでもないと思います。そして、難聴を解決して鬱や認知症を予防することは、将来の行政コストを下げることにもつながると思います。
 日本の補聴器工業会の調べでは、日本の難聴者は推計で1,430万人、補聴器所有率は14.4%で約210万人とされ、所有率ではイギリスの47.7%、フランスの41.0%に比べ大きく遅れています。日本の補聴器補助の制度が貧しいことが大きな要因となっています。補聴器は、1つで15万円から55万円が相場とされ、必要を感じながらも手が出せないという方がたくさんいるわけです。
 本市は、18歳未満の難聴者には障害者の認定を受けていなくても補聴器の補助がありますが、18歳を超えると高齢者まで補助がありません。我が静岡市議会は、昨年の6月議会で難聴者への補聴器補助の公的支援を求める意見書を国に上げています。要するに市民の代表であるこの市議会が、全会一致でその必要性を訴えたわけです。
 そうした状況の中で今の市の考え方をお聞きしたいんですが、難聴の高齢者の認知症を予防し、社会参加を促すために早期から補聴器の使用が有効と私は考えますが、補聴器購入補助を行う考えはないのかどうか、お願いします。

◯保健福祉長寿局長(和田明久君) 難聴が認知症の危険因子の1つとされたことを踏まえ、現在、厚生労働省において聴覚障害の補正による認知機能低下の予防効果を検証中です。本年9月、大都市会議から国に要望書を提出し、この中で補聴器の医学的有効性が確認された場合、全国一律の公的補助制度を創設するよう求めております。本市としても、これらの国の動向等を注視してまいりたいと思います。

◯(杉本 護) 今、国の動向を見ると言っていました。やはりこの静岡市は政令市であります。県内でも磐田市とか、あるいは長泉町で既に実施しています。十分と言えませんけれども、そういった姿勢を示しているわけですね。ぜひともこの政令市静岡市、しかも誰ひとり取り残さない、こういったことをハブ都市としてやっているわけですから、そういった点を考えても、ぜひ率先して補聴器補助の積極的な検討を行い、実施することを強く求めて質問を終わります。