農業者の生産意欲低下を招く 農業委員の公選廃止・定員大幅削減

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寺尾11月◯2番(寺尾 昭君) 3つのテーマで質問いたします。
 第1は、今議会に上程されております農業委員、農地利用最適化推進委員の定数条例にかかわっての質問であります。
 私も議会推薦の農業委員ということで、ことし1年務めさせていただいております。
 日本の農業が、多くの問題を抱えながら、いまだ根本的解決にはほど遠い状況が続いていることは御承知のとおりです。
 輸入食品問題、食料自給率の低迷、生産費を賄えない米価やお茶の価格の低迷、きつい労働と後継者難の問題、耕作放棄地の拡大、生産基盤整備のおくれや、最近ではTPPの大筋合意というような問題もあり、困難な状況が横たわっているわけです。
 大幅な会期延長により、国会がこのたび9月で終わっているわけですけれども、この通常国会は、安全保障法と言いましょうか、いわゆる戦争法をめぐって大揺れの国会でありました。その陰で、余り話題にならなかったと言ってもいいのかもしれませんが、農業委員会制度の抜本改正とも言える農業委員会法の改正案が8月28日に可決、成立いたしました。それからわずか2カ月程度でありますが、この11月市議会で条例案が提案されたということであります。
 これまでの農業委員会制度は、昭和26年ですから、戦後間もなくと言ってもいいと思うのですが、法律ができまして、まさに戦後一貫して日本の農業生産を、農地の保全、確保という最も基本的な点で、この役割を果たしてきたと言えるのではないかと思います。
 改正内容の周知期間が極めて短いという問題があり、そういう点では、やや拙速な感は否めないということではないでしょうか。
 そこで、改正内容について質問いたします。確認の意味も含めまして、改正農業委員会法と現行法とで、どこがどう違ったのかという点を質問いたします。
 今回提案されている条例案でありますが、現行の農業委員は44人だったと思いますけれども、これを20人ということで、半数以下とすると。新たに農地利用最適化推進委員という制度を決めまして、これが37人ということになっております。しかし、新たな農業委員会がどのような役割を果たすのか、そのイメージは必ずしも明確ではないと言えるのではないでしょうか。
 この間、私も農業委員の皆さんとの懇談や、農業委員会の議論などを伺ってきているわけですけれども、なかなかイメージがはっきりしないと、戸惑っているというのが現状だと思います。
 そこで、新たなこの2つの委員の定数条例が提案されているわけですけれども、この条例で、どのような問題が解決されるのか、どういう期待をされるのか、その辺についても伺っておきたいと思います。
 次に、まちの商店街の活性化をいかに図っていくかという点で、その具体策について、伺いたいと思います。
 車社会と呼ばれる現在、大型店の出店ということで、商店街からお客さんが遠のいていると。多くの商店街は商売が成り立たず、後継者もいないというような問題。シャッター通りと言われて久しいわけであります。一方、車を持てない高齢者や障害のある方々などは、自宅の近くで買い物ができない、いわゆる買い物難民というような状況も生まれているわけであります。
 ということで、まちの商店街活性化は、経済を支えている商工業対策としても、重要な施策の1つだと言えると思います。
 そこで、私は商店の支援策の1つとして、個店のリフォームの助成をやったらどうかという点で提案し、この点についての質問をしたいわけです。先ごろ、共産党市議団は群馬県高崎市の商店街を視察いたしました。この高崎市では、商店が店舗改装などをする際に、工事費、備品購入費などの2分の1、100万円を限度に助成しております。
 高崎市では、この事業開始以来、大変人気がありまして、要望が殺到しております。平成25年度は2回も補正を行ったと。この年は4億4,000万円、26年度は3億5,000万円、そして、今年度は4億2,000万円という実績があったと説明を受けました。
 これまでの発注額は、これらを合わせると27億円になりますけれども、実際の経済波及効果になりますと、その4、5倍と言われておりますから、約100億円に近い経済波及効果があったと言えるのではないかと思います。
 そこで、質問でありますけれども、このリフォーム助成事業について、その効果などをどのように静岡市として評価しているのか。また、今後ぜひ実施してほしいと思うのですけれども、その辺の考え方はあるのかどうかということであります。
 次に、地震対策、耐震対策事業についてです。
 とりわけ木造住宅の耐震補強の助成についてであります。
 静岡県が行ってきましたプロジェクト「TOUKAI-0」という事業は、これまで14年間継続されてきております。静岡市はこれに上乗せ補助をしてきているわけですけれども、これは率直に言いまして、大変皆さんから評判がいいと思います。私も、身近な方から大変助かったという声を聞いております。
 あわせて、先ほどの商店街リフォームにも共通していると思いますけれども、これまた経済活性化に結びついたと思います。
 前回の9月議会で、県がこれを廃止するという報道があって、この市議会でも、継続してほしいという意見書を、全会一致で決めて県に上げたことは、皆さんも記憶に新しいところだと思います。
 そういう声にも押されて、県は来年度以降も継続することを表明したという報道がありました。
 そこで、質問であります。県のプロジェクト「TOUKAI-0」事業は、実際上、どういう内容で継続されているのか。いつまで延長されたのか。そして、事業内容はどうなのか。この辺についての質問です。
 2つ目は、本市が実施してきました木造住宅耐震補強事業はどういう内容だったのか。実施件数などはどのような状況か。そして、市民に対してはどのような周知をさせてきたのか、その方法。どのような成果があったのか。これらについても、あわせて質問いたします。

◯農業委員会事務局長(堀田仁司君) 改正農業委員会法と現行法との違いは何かなど、2点の質問にお答えいたします。
 初めに、改正農業委員会法と現行法との違いは何かについてですが、改正法で大きく変わる点は2つございます。第1は、農業委員会の業務のうち、従来、任意の業務とされていた担い手への農地集積、それから、耕作放棄地の発生防止等の農地利用への対応が法定業務となります。さらに、この業務を担う者として、新たに農業利用最適化推進委員を設置するというものでございます。
 第2は、農業委員の選出方法が大きく変わります。地域農業者の選挙制と議会や農業協同組合等の団体推薦者を市長が選任する従来の併用方式が廃止され、農業者や農業団体等からの推薦、公募に応じた候補者を、議会の同意を要件として市長が任命する方式に一本化された点にございます。
 次に、新定数条例によりまして、どのような問題が改善されるかという御質問ですが、新たな制度における農業委員は、従来から行っている農地法に基づく農地転用等の許認可事務を引き続き行うとともに、推進委員が活動の基準としなければならない農地利用の最適化の推進に関する指針の作成を通して、推進委員とともに農地利用の最適化をリードしてまいります。
 また、推進委員は、農業委員が作成する指針に基づき、農業の現場において、担い手への農地の集積、集約化、増大する耕作放棄地の発生防止や解消に努めるとともに、新規参入者の促進等も担当することになりますので、担い手の確保や農地の集積化が進むことが期待されます。
 さらには、国が農地集積を推進するために設けた農地中間管理機構や農業協同組合、行政等と連携して取り組むことにより、農地利用の最適化に大きな成果が生まれ、法改正の意図する目的を果たせるものと考えております。

◯経済局長(築地伸幸君) リフォーム助成事業の評価と実施についてですが、高崎市の事業は、店舗のエアコン入れかえ、あるいは天井の張りかえといった個別店舗へのリフォーム助成であり、例年の予算規模が3億円から4億円に上ると聞いております。
 この事例の評価等ですが、個別店舗への資産形成の側面が強く、多大な財政負担の懸念もございます。
 本市におけるハード面の支援といたしましては、商店街のアーケード、街路灯といった公共性の高い共同施設の整備について助成を行っております。また、個店については、ソフト面での支援を実施しております。
 そのため、高崎市のような個別店舗へのリフォーム助成の実施は想定していないところでございます。

◯都市局長(塚本 孝君) 木造住宅耐震補強助成について、2点お答えいたします。
 初めに、県のプロジェクト「TOUKAI-0」事業の延長と事業内容についてでございますが、本市議会の皆様を初め、県の市長会、県内各市町が県に事業の継続を要望したことにより、県は本年の9月議会において、来年度以降も事業を継続することを表明いたしました。
 延長期間については触れられておりませんでしたので、県に確認したところ、協議中であるとの回答をいただいたところです。
 県の事業内容につきましては、変更はございません。
 次に、本市が実施してきた木造住宅耐震補助事業の内容と周知方法、また、補助の実績件数についてでございますが、本市では、耐震改修促進計画を平成19年度に策定し、この計画に基づき、3つの補助事業を実施しております。
 1つ目は、わが家の専門家診断事業で、所有者が負担なく耐震診断を行えるよう、国、県及び本市で補助するものです。
 2つ目は、補強計画策定事業で、限度額を設け、耐震設計に係る費用の3分の2を、国及び本市で補助するものです。
 3つ目は、耐震補強事業で、建物の耐震強度に応じた補強工事に係る経費のうち、30万円から65万円を国、県及び本市で補助するものでございます。
 市民の皆さんへの周知に当たりましては、本市広報紙への掲載、パンフレットの配布やポスティング、出前講座の実施、建築関連イベントへの参加によるPRなどを行ってまいりました。
 これらの取り組みによる平成14年度の事業開始から現在までの実績は、耐震診断が約1万1,000件、耐震設計が約4,300件、補強工事が約3,700件の補助を実施いたしました。
  〔2番寺尾 昭君登壇〕

◯2番(寺尾 昭君) 今、お答えがありました。
 農業委員会制度が抜本的に変わるという内容であったと思います。公選制から市長の任命制へというようなお話もありましたし、新たに農地利用最適化推進委員というような委員も新設をされるという報告がありました。
 ただ、私は農業委員の定数について、国の基準に定める人数よりも静岡市の条例は若干少ないのではないかと思います。国の基準で言いますと、24人ぐらいになるんじゃないかと思うのですけれども、静岡市で提案されている条例では20人ということです。
 提案されている農業委員、農地利用最適化推進委員の定数条例は、国が示している基準の最大限の人数をどうしてやらないのかということに、私は疑問を持っているわけです。
 そういう点で、農業委員の定数を20人、推進委員を37人と決めた、国の基準と違う理由について伺いたいと思うのです。
 それから、今後、それぞれの委員について、先ほどお話がありました団体から推薦を受け、これから選任することになりますけれども、具体的に、その選任はどんな方法をとっていくのか、伺いたいと思います。
 次に、商店街の活性化のための個人商店、個店の支援策であります。
 商店街が次々と消えていくという状況で、静岡市の統計によりましても、この10年間で、小売業は62%に、従業員は71%に、販売額は80%に減少しております。そして、個店の規模になりますと、従業員2人以下が約半分、10人未満になると、もう85%という状況になっているのです。
 ですから、先ほどは想定してないという答えがありましたけれども、今後、どのような個店の支援策を行っていこうとしているのか、伺います。
 次に、耐震対策事業についてであります。
 平成22年度の補正予算で、国がこの事業を行ったということがありました。そのことによって、県、市の補助とあわせて、限度額がたしか95万円ぐらいにまで上がったと覚えております。そういう点で、私は国が再度この制度を復活をすることを強く望みたいと思います。
 また、先ほどお話がありましたけれども、実際に工事を行ったのはまだ3,700件程度ということでありますから、対象の数に比べればまだ到達度は圧倒的に小さいと、少ないと言わざるを得ないわけです。
 このテンポでは、いつ来るかわからない南海トラフ巨大地震に対して、到底耐えられない状況ではないかと思うのです。
 実施件数を上げてほしいと思いますが、今後、この木造住宅耐震補強事業をさらに推進していくためには、どのような周知方法等を検討しているのか、伺いたいと思います。
 さて、県内の……

◯副議長(遠藤裕孝君) あと1分で終了してください。

◯2番(寺尾 昭君)(続) 全自治体でこの木造住宅の耐震補強の独自の助成を行っております。一般家庭と高齢者のみの世帯ということで、高齢者のほうに増額しているという制度になっております。
 ただ、今、県内の各自治体との比較をしてみますと、実は残念ながら静岡市は最低クラスという状況になっているんですね。
 今、静岡市の場合は、先ほどもお話がありましたけれども、一般家庭の場合は30万円ということです。例えば、袋井市などは、一般家庭でも90万円を限度としているということでありますから、そういう点では、静岡市の場合は、もうちょっとこの助成額を引き上げてもいいのではないかと思います。
 以上、要望も含めまして、質問といたします。

◯農業委員会事務局長(堀田仁司君) 定数をそれぞれ20人と37人とした理由を含めて、農業委員会制度の改正に関する2点の質問にお答えさせていただきます。
 初めに、農業委員と推進委員をそれぞれ20人と37人の定数とした理由は何かについてですが、改正法と合わせて制定された政令では、各委員の配置基準が定められており、この基準に当てはめた場合、本市の場合、農業委員は農家世帯と農地面積から24人以内、推進委員につきましては、農地面積100ヘクタールに1人の割合となりますので、102人以内となります。
 農業委員を20人とした理由は、主な業務であります農地法の許認可事務に係る事前審査を4班、各4人の16人体制で実施可能であると判断いたしまして、これに役員会の4人を含めて、全体で20人の体制で、より機動的に運営を図ってまいりたいと考えております。
 また、推進委員を37人とした理由につきましては、現在の公選の農業委員の区割りである37地区にそれぞれ1人の推進委員を配置し、対応に当たっていただきたいと考えております。
 なお、各担当の区域は、事前に割り当てられますが、隣接区域につきましては、相互に協力し合って、その任に当たっていただくことを考えております。
 農業委員会全体では、これまでの44人体制が57人体制となりますので、さらに機能が強化されるものと考えております。
 次に、選任の方法はどのようなものかについてですが、農業委員につきましては、農業者、農業団体等から推薦のあった者、また、公募に申し出た者を候補者として、この中から議会の同意を得て市長が任命することになります。新たな農業委員の選任の議会同意は、来年の2月議会において求めてまいります。
 また、新たに設置される推進委員は、推薦のあった者、公募に申し出た者の中から選任されるのは農業委員と同様ですが、新たに組織される農業委員会が委嘱することになっておりますので、来年度の組織体制移行後に配置されることになります。
 なお、農業委員につきましては、改正前の法律では、農業協同組合等の団体推薦、議会推薦もありましたが、改正法では、これらの規定が全て削除され、過半が認定農業者であること、性別、年齢に偏りがないよう配慮すること、委員会の所掌に関し利害関係を有しない者が配置されなければならないとされております。これ以外に、特別の枠づけを意図した推薦の求め方は好ましくないとされております。
 推薦または公募に当たりましては、特に女性や青年農業者等の推薦等に御配慮いただくことを、関係する農業関係団体の方にはお願いしていくほか、公募案内においても、こうしたことを踏まえ、強調して対応していきたいと考えております。

◯経済局長(築地伸幸君) どのような個店支援策を行っているかについてですが、2つの支援を実施しております。
 1つ目は、個店強化のための大学生によるお店コンサルティング事業です。これは、静岡県立大学のゼミと連携し、マーケティングを専攻している大学生が、その知識と若い感性を生かして、新規顧客の獲得方法や新商品開発などについて、アイデアを提供するものでございます。
 2つ目は、店舗の顧客をふやすまちゼミへの助成です。これは、商店主が講師となって、みずからの店舗を会場とし、地元のお店ならではのお得な情報や技術など、知って得する内容を講座形式でゼミ参加者に伝えて、お店や商店主のファンをふやす取り組みです。
 これらソフト面での支援により、個店の成長支援を促進し、商店街の活性化を図っております。

◯都市局長(塚本 孝君) 今後の木造住宅耐震補強事業の周知方法についてですが、本市の木造住宅の耐震化をさらに推進するために、現在、1回目の答弁でもさせていただいた方法など、さまざまな周知方法に取り組んでいるところでございます。
 平成28年度は、今までの周知方法に加え、本年度の取り組みのうち、効果の見られる4つの方法を重点的に実施したいと考えております。
 1つ目は、昭和56年以前に建築された木造住宅に関する情報をデータベース化し、その所有者に直接、診断事業等を周知するダイレクトメールの送付。2つ目は、耐震診断は実施したが、設計及び工事を実施していない方をリストアップし、設計、工事の実施を促すダイレクトメールの送付。3つ目は、耐震補強に係る手続や費用などに関しての不安を払拭するため、行政、設計者、施工者による学区単位での住民の皆さんへの合同説明会の開催。4つ目は、耐震補助事業を広く周知するため、各連合自治会の役員の皆さんへの説明会の開催です。
 今後も、さまざまな周知方法を実施することで、さらに木造住宅の耐震化を推進してまいります。