県都構想も特別自治市もダメ。別の道がある

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山本11月◯38番(山本明久君) 県知事が提唱する県都構想と市長が目指す特別自治市について、それぞれの問題点を明らかにして、市民の利益と地方自治、基礎自治体の発展にとっては、静岡市は別の道を進んだほうがいいという立場から質問していきます。
 一言で言えば、県都構想は静岡市の廃止、特別自治市は県からの独立というものです。中身は相反するものですけれども、ともに制度設計はこれからであり、法律改正しなければ実現できないという点も共通しています。
 1回目はまず、知事の県都構想の問題についてです。
 これについての材料は知事の記者会見での公的な発言程度です。その範囲で、第1に地方自治、地方分権に逆行するという点です。知事は、この5月6月に、静岡市の廃止で中核市並みの権限を持つ3つの特別区にして、県と市を一体化することが基礎自治体として力をつけ、自治権を高めて地方分権の実を上げていくと主張しています。
 しかし、8月には区長と区議の公選と言っています。県が基礎自治体の司令塔になるかのような発想と、今の地方自治法の趣旨や民意を反映する公選とは矛盾するものだと私は思います。
 知事の考えについて、市長はどう認識しているのか示してください。
 第2は、県都構想は、基礎自治体の権限も財源も市民サービスも後退させる点です。知事はメリットとして、県市一体化で二重行政を解消すれば、効率化やコスト縮減できるなど、住民サービスや利便性が向上することを挙げています。しかし、市も指摘するように、県の施設は広域行政や補完行政の役割によるものであり、目的も違う、二重行政とも違うと言っています。私もそう思います。
 また、知事が言う効率化と利便性向上という点でも、これは市と市民にとっては逆です。今、市が一元的に行っている自治事業を県と特別区とに分割処理することは、そのために調整し、処理する費用が増大するし、逆に市民サービスの後退をもたらすとともに、特別区間の財政調整のための県による税収の吸い上げによって、財源が基礎自治体にとっては後退する仕組みではないか。市はどう考えているのか。
 例えば、東京都のように、消防や上下水道事業が県事業になって、市としての自治事業ではなくなり、また財政調整でも、東京都では固定資産税や住民税法人分などの調整3税の55%を都が吸い上げて各区に配分する権限を持つことになっています。これは大阪都構想でも同様で、学者、専門家の試算で、大阪市の市税3税6,300億円と交付金500億円が一旦、大阪府税に吸い上げられて、うち2,300億円は府税になってしまうという実態が示されました。大阪市も静岡市も交付税交付団体であって、ない金を取り合っても豊かにはなりません。
 第3には、政令市への権限移譲の流れと逆行する点です。県都構想の必要性について、知事は10月に人口60万人で2,800億円規模の市では政令市とは言えず、広域行政はとてもできない。県だから港湾、広域インフラ、河川、道路など広域行政を選択と集中でできると主張しています。これは市と連携して応援しようという姿勢ではなくて、さきの地方制度調査会でも議論を進めてきた、県から政令市への権限移譲という流れと露骨に逆行するものではないかと思うが、市長はどう考えるか。
 第4は、県都構想を政令市はどこも望んでいないという点です。知事は大都市制度のあり方のモデルとして提案したと言っています。しかし、この制度改革は、当然、当事者である静岡市、市議会、市民などが賛成、同意しないと実現できないのではないか。当然だと思います。市の意向を無視してできるはずはありません。市長は道理と世論の力で知事を説得して考えを変えさせるのか。
 共同通信のアンケートでは、大阪市以外の県庁所在地を含む19政令市市長が、この構想に賛成していないのはなぜだと考えるのか、解説していただきたい。
 以上、1回目です。

◯企画局長(山本高匡君) 県都構想と特別自治市に関する4点の御質問について、お答えいたします。
 県都構想に関するこれまでの県知事発言に対する本市の考え方ですが、当初、知事の発言として報道された首長は1人、すなわち静岡県知事が静岡市長を兼務するという考えは、最近は発言されていらっしゃらないことから、構想が変わってきているものと認識しております。
 ただ、そもそも憲法の地方自治の規定にありますとおり、地方公共団体の長は公選以外にはあり得ず、異なる地方公共団体の長を兼ねることはできませんので、当初、知事が市長を兼務するとおっしゃった構想は成り立ち得ないものと考えます。
 また、首長が1人という当初の構想は、特別区設置により公選区長を置くという、最近発言されている構想とも矛盾しているものでございます。
 次に、県都構想による財源、住民サービスへの影響についてでございますが、県都構想に関して税財源配分や事務配分等の具体的な内容が示されておりませんので、あくまで仮の話ではございますが、現在、特別区が設置されている東京都の例を本市に当てはめて考えますと、特別区が担う事務権限は、現在の本市が持つ事務権限よりも縮小することから、議員御指摘のように、県都構想の財源や住民サービスの後退につながるのではないかという懸念もあり得るものと考えております。
 次に、本市の人口規模や財政規模では広域行政はできないという御主張についてどう考えるかについてですが、港湾、河川は別にいたしまして、本市は連携中枢都市圏を念頭に置き、静岡県中部地域における周辺市町との広域連携に取り組んでおり、指定都市に期待される地域の牽引役を担っているところでございます。
 今年度は総務省の新たな広域連携促進事業の対象として選定され、周辺4市2町との連携を進めており、知事からの広域行政はできないとの御指摘は当たらないものと考えております。
 最後に、県都構想に対する他市の受けとめについてですが、報道によりますと、中部圏知事会における静岡県知事の御提案に対し、名古屋市長が名古屋は大名古屋を志向している、分割することはできないと思うという発言をされていることは承知しております。しかし、指定都市全体がそろった公に議論する場で、県都構想が俎上に上がったことはございませんので、そのほかの指定都市の御意向は把握しておりません。
 なお、指定都市市長会では新たな大都市制度の創設に関して、特別自治市を初めとした制度の提案を行っているところでございます。
  〔38番山本明久君登壇〕

◯38番(山本明久君) 基本的には問題点についての認識は共有される部分が多いと思います。
 2回目は、市長が目指す「しずおか型特別自治市」の問題です。
 第1は、この法制度ができたとしても、人口60万人の静岡市では実現可能性がないという点です。そうは言っても、まずお聞きしておくことは、「しずおか型特別自治市」は都道府県が統合し廃止される道州制の導入を前提にして本格実施されると見込んでいるのかという点です。
 つまり、30年も40年も先の話を見込んでいるのか、昨日も中長期的視野と市長が言っていますけれども、そういうことなのか。しかし、骨子における第1段階では、現行の政令市で、県から最大限38事業の権限移譲を受けるという予定ですけれども、それすら本当にできる力量があるのか。前回の私の質問には義務づけを1つ挙げただけでした。
 また、第30次の地方制度調査会の答申の議論では、全ての政令市を対象にせず、人口200万人要件で区切りました。静岡市は近隣を含めても対象外で、実現は無理ではないのか。市長の考えをお示しください。
 第2は、万が一、仮になれたとしても制度的矛盾がある点です。警察行政以外の事務を担う自己完結型行政を目指す、つまり県からの独立を目指す以上、県が設置する、きのうも議論がありましたが、高校、図書館、文化、スポーツ、病院、保健福祉施設、労働会館など、施設運営・維持管理を全部受けることになるのか。もしそうだとしたら、県の役割分担で目的も違って設置するという、今の市の立場とつじつまが合わなくなってきます。
 中長期的、30年先を目指すということで受けるとしても、そのとき県から職員や財源が一定は来ると思いますけれども、そのときの人口60万の政令市静岡で本当にその力があるのか疑問です。力量の問題もあってか、県と協議して受けるものと受けないもの、一部受けないようなことがあるようにも言っていましたけれども、警察以外は全部その行政分野を受けるということとも、矛盾してきます。
 無理して手間暇かけて、人も金もかけて、県から受けるという必要は全くありません。それでも受けるというなら、30年先の本市のアセットマネジメントの、2割施設削減という方針からも矛盾してくるんじゃないか。受けた後、施設の統廃合ということになれば、市民サービスの後退にもなります。
 第3は、市立大学の設置構想も特別自治市を展望したとしても無理ではないかという点です。10月に知事は公立になるまでに10年、初期投資は500億円もかかったというみずからの経験から、静岡市での財政規模の危惧や、他大学での学部の増設という道も示しつつ、大学の関係者との意見交換や、県の大学コンソーシアム構想との協議の必要性、また人口流出対策としての大学設置の妥当性などを指摘した上で疑問を呈しています。もっともな指摘だと私は思います。これにどう答えるのか。
 直面する課題解決のために短期間での設置なのか。県の協力なしにそれは本当にできるのか。仮に設置できたとしても、その後、特別自治市になって県立大学も引き受けるとなれば、本当に力があるのか、考えを示してください。
 第4は、特別自治市での都市内分権の制度的矛盾です。市長は究極の姿だと言いましたけれども、総合行政のために設置した区の権限、財源を移譲して都市内分権を進めていくと、今度は市と区の間で二重行政の問題が再生産されて、今の県と政令市の二重行政と同様の問題が、また仕組み上起きてくるんじゃないか。
 特別自治市で県から独立するので二重行政が解消されるという理屈で言えば、総合行政を進める身近な区の独立という理屈になってしまって、結局、合併前の姿に戻るという矛盾について、説明してください。
 第5は、知事が県都構想を提唱したことで、三者で合意した「しずおか型特別自治市」構想は破棄されたのかという点です。この2つは明らかに対立するもので、実質は一方的破棄です。市長はこれをどう考えているのか。何も言わなくてもいいのか。発言すべきです。破棄したという知事の言明はないようですけれども、知事は6月の記者会見で静岡市が特別自治市になるのはほとんど考えられないと言い、10月には非現実的だとも言っています。この点から、県が同意しなければ特別自治市は実現しないんじゃないか。となれば、市長は知事を翻意させ、説得する立場にあるんじゃないのか。はっきり明言していただきたい。
 第6は、静岡市が特別自治市になる必要性がないという点です。何十年先になるのかはっきりしないし、人口200万人要件もクリアできないし、知事も非現実的だと言っているから、実現する見通しはありません。しかし、どうしても市長が目指すというなら、あえてお聞きしておきますけれども、県から独立して自己完結型特別自治市を目指さないと、地域経済の活性化とか、人口減少対策、少子化対策、介護と高齢者対策、防災対策など、突き当たっている、直面する課題を解決できないのかという点です。
 私は現行制度のもとで基礎自治体と広域補完行政の役割を担う県とが一層連携を強めて、これらの課題について二重、三重に厚く取り組むことこそ、市民の利益になって、基礎自治体の役割を発揮できると思いますけれども、どう考えるのか答えてください。
 以上、2回目です。

◯企画局長(山本高匡君) 県都構想と特別自治市の6点の御質問にお答えいたします。
 「しずおか型特別自治市」の進め方についてでございますが、「しずおか型特別自治市」の制度骨子では、制度の実現までの道のりを3段階に分け、第1段階を現行の制度のもとでの基礎自治体の最大限の機能強化、第2段階を国による特別自治市の法制化、第3段階を道州制への移行と特別自治市以外の基礎自治体に対する権限、財源の移譲による基礎自治体の自立モデルの確立としております。
 第2段階の法制化までには相当な時間がかかるものと見込まれますが、現実的には本市が特別自治市へ移行するのは道州制の導入と同じタイミングとなるのではないかと想定しております。
 なお、議員から御指摘のあった人口規模200万人以上という数字につきましては、平成25年の地方制度調査会から内閣総理大臣への大都市制度に関する答申の中で、仮に特別市という制度を設けるとしても、一定以上の人口の指定都市に対象を限定する必要があるということで、例示されたものに過ぎないと理解しております。
 次に、特別自治市移行に伴う市域内の県の施設の取り扱いについてですが、県が保有する施設には、例示ですが、がんセンターやエコパアリーナ、グランシップなどのように、全県を対象として高度なサービスを提供するために設置されているものもあるため、単純に市域内の全ての県の施設を市が運営することになることはないものと考えております。
 こうした施設の運営については、県が広域的視点に基づき設置した施設の目的に照らして、最適な配置や運営を行えるよう、多様な選択肢の中から、きのうも申し上げましたが、市が負担金を支出し県が運営、県と特別自治市による共同運営、市への移譲など、地域の実情に応じて個別に協議していくことを想定しております。
 その上で、市に移譲された施設については、アセットマネジメントの視点に立って、資産管理を進めていくことになるものと考えております。
 次に、市立大学の設置に関する御質問ですが、静岡県においては、高校3年生の進学による県外流出人数が全国最多水準にあり、大学進学の受け皿不足への対応が急務となっております。
 こうしたことから、本市においては、これまで大学誘致、既存大学における学部増設に向けた支援のほか、既存大学の活性化や魅力向上につながる事業連携などに取り組んでまいりました。
 今後とも、こうした取り組みを継続する一方で、さきの創生会議、また本年9月の市議会定例会において市立大学の設置に関する御提案をいただいたことから、まずは産業界が望む育成すべき人材像や、大学進学希望者のニーズ把握、市内の既存大学の意向調査などを幅広く行ってまいります。
 これらを踏まえて、本市における高等教育のあり方を検討する中で、市立大学の設置も含めた高等教育の充実方策についても模索してまいります。
 次に、特別自治市の中での都市内分権は二重行政を発生させるのではないかという御質問でございますが、特別自治市内の区は大阪都構想や県都構想で示されているような特別区ではなく、現在の行政区と同種のものと想定しております。したがって、都市内分権を進めることがただちに二重行政につながる性質のものではないものと考えております。
 次に、平成25年のG3における合意についてですが、先日行われました今年度のG3においても、あくまで特別自治市から大都市制度のあり方について議論に入っていくという方向性で静岡県、浜松市、本市の三者で合意したところであり、決して平成25年のG3合意が破棄されたわけではございません。
 最後に、現在、本市が直面している課題の解決についてですが、議員の御質問のように、特別自治市の実現にかかわらず、現在直面している課題のほとんどは、現行の枠組みにおいて解決を図れるものと考えております。
 実際に日本平や三保松原など、本市にとって喫緊の課題であるまちづくりの推進に関しては、県市地域政策会議を通して連絡、連携、調整を図りながら取り組んでいるところです。
 また、現行の枠組みでも解決に向けて取り組むことができるからこそ、制度論に時間を費やすよりも、喫緊の課題に対して県・市連携により取り組むことを優先すべきであると、市長から知事に再三呼びかけを行っているところでございます。
  〔38番山本明久君登壇〕

◯38番(山本明久君) 今の答弁でもいろいろな矛盾は解決されていません。警察行政以外を受けると言いながら、県との協議で役割分担すると。もう違っていますよね。
 区に権限移譲を進めると言いながら、二重行政は起きてこない、その仕組みもちょっと解明できていません。
 知事は破棄していないと言いながら、同時に、特別自治市もあわせて議論するということになるのか。おかしな話ですね。
 いずれにしても2つとも、ともに重要な、静岡市をどうしていくかという問題提起ではありますので、今の段階からできるだけデータや制度の情報を市民に提供して、市民的な議論を徹底することを保障する必要があるんじゃないかという点について、考えを示してください。

◯副議長(遠藤裕孝君) あと1分です。

◯38番(山本明久君)(続) 私は県都構想の必要性もメリットも、特別自治市の必要性もメリットも全くないと考えています。ここら辺は市民的な議論で明らかになってくることだと思います。
 であれば、大局的に、市長が言うように、これから住民自治と地方自治の力をつけていって、市民の利益を守っていくのなら、市の廃止も県の廃止もせずに、現行制度のもとで直面する課題について調整・協議を、市も県も、今やっている以上に努力して一層強めれば、ほとんど解決できるという考えですから、県から独立する必要は全くない。基礎自治体と広域行政の連携強化で制度改善の道を地道に研究、追求することこそ必要じゃないか。考えを示してください。

◯企画局長(山本高匡君) 県都構想、特別自治市に関する市民の皆さんへの情報提供、それから市民的議論の必要性についてでございますが、大都市制度のあり方については、国と地方との統治機構、あるいは地方自治のあり方をどうすべきかという議論でありますことから、指定都市が一丸となって研究し、国や政府に対して働きかけていくことが必要であると考えております。
 研究や議論を重ねることは重要なことですが、一自治体だけで完結する内容ではありませんし、まさしく今、市民の皆さんは介護や子育て支援の充実、地域経済の発展や都市の発展といった実質論に関する議論を希望されているものと受けとめております。
 したがって、本市が市民の皆さんへ制度論について投げかけを行うことは時期尚早であると考えております。
 最後に、本市が特別自治市を目指す理由についてでございますが、将来、仮に道州制が導入された際、基礎自治体として自立できる力をつけておく必要がありますことから、現在、他の指定都市とともに特別自治市を研究しているところでございます。
 また、特別自治市に移行することで、大きく2つの効果があるものと考えております。
 1つ目は、事務権限と財源が集約され、地域の個性や魅力を最大限に発揮することができるように政策選択の自由度が高まるとともに、自立した都市経営が可能になること。
 2つ目は、市民の皆さんが受益する行政サービスと負担する地方税が一元化することで、市民の皆さんにとってわかりやすく、納得感のある行政の実現が可能になることです。
 これらは、いずれも市民サービスの向上につながるため、本市は現状に満足することなく、大都市制度の究極の姿といえる特別自治市を将来的な目標と掲げ、実現に向けて取り組んでいくものでございます。