今後も市教委の政治的中立性・独立性は尊重

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DSC_0553◯2番(寺尾 昭君) それでは、教育行政と大谷・大鹿まちづくりについて質問いたします。
 地方教育行政法の改正によりまして、本年4月から教育委員会制度が大きく変わりました。その主な点を見てみますと、首長と教育委員会による、この首長主導の総合教育会議が設置されたこと。自治体の教育、学術及び文化の振興に関する総合的な施策である教育大綱の制定を義務づけたこと。大綱については、総合教育会議で協議することになっておりますけれども、決定権は首長であるということです。
 さらに、教育委員長を廃止し、教育委員会のトップを教育長とするという内容。そのほかにもありますけれども、教育委員会制度は戦前の軍国主義教育の反省から、政治からの独立を図り、中立性を確保することを目的に、都道府県、市町村に設置されました。自治体に置かれた合議制の独立行政独機関という点では、人事委員会や監査委員などがありますけれども、独立機関として設置されているという点では、共通の性格を持つと言えると思います。
 このような制度変更により、首長が教育に直接関与できるようになったということで、予算編成などについては有利になったという反面、教育委員会の独立性という点でどうだろうかという声もあるわけです。
 教育委員会は、委員の一人でもあり、教育委員会事務局のトップでもある教育長を指揮監督して、委員会の決定事項を執行させるということになっておりましたこれまでの制度を、教育長が教育委員長の役割を持つことで、教育委員会そのものの役割を形骸化させるという批判の声もあるわけであります。
 そこで、質問でありますけれども、まず、総合教育会議に教育委員会として、どのような姿勢で臨んでいるのか、臨んでいこうとしているのかという点が1つ。
 2つ目は、教育委員会の独立性という点で、どのように考えておられるのか伺います。
 次に、小中一貫教育について伺います。
 教育委員会は、静岡市の小中一貫教育方針(案)を示しております。必要としている理由として上がっておりますのが、学習指導上のねらい、生徒指導上のねらい、少子化への対応などを挙げております。本市での導入が教育の課題を解決する1つの方策となり得ると言っております。
 その中には、小学校の適正規模化による統廃合も含まれております。
 しかし、私が思うには、これまでの長い間の6・3制というのが小学校、中学校でしかれてきているわけでありますが、それではなぜだめなのか。だめなのかといいますか、それを否定し、小中一貫にするということでありますけれども、そういう理由は必ずしも明確ではないと思うのですね。
 静岡市の総合教育会議の第2回の会合がこの間あったわけですが、教育委員会は小中一貫教育を2018年度に市内全域で導入する方針を示しております。市民の立場からは、市民的合意が果たして得られているんだろうかと、唐突な感も否めないと思うんですね。メリットだけを強調するだけではなくて、デメリットや課題をしっかり掘り下げる、克服する方策を示すことも必要です。
 また、この総合教育会議の中では、地域住民の理解の必要性、教職員の負担軽減が不可欠ではないかという意見も出されておりました。私も同感であります。
 昨年、文部科学省は中教審で小中一貫教育の実態調査の結果を公表しております。実施校への調査では、中学進学に不安を覚える児童の減少、小中の教職員間で協力して指導に当たる意識の向上などの成果はあったと言っておりますが、反面、教職員の負担感、多忙感、教職員間での打ち合わせ時間の確保の問題、年間行事予定の調整、共通化など、困難な課題もあると挙げております。
 国会で本年、6月17日に、小中一貫校の制度化を盛り込んだ、学校教育法改正案が成立いたしました。その審議の過程でも、さまざまな議論が行われております。
 参議院文教科学委員会での参考人質疑を見てみますと、児童生徒の発達の早期化、中学校進学後の不登校、いじめの急増に対応するために必要との主張に対して、必ずしもその点についての科学的根拠は十分ではない、薄弱だと法政大学の教授なども述べています。
 10年前に東京の品川区で既に実施をされておりますけれども、ここでは18校あった小中学校が6校になってしまうと。残った4校が1,000人前後の大規模校になってしまうという問題もあったということであります。
 質問です。現行の6・3制の課題について、まずどのようにとらえておられるのか。また、実際、小中一貫教育に期待される効果も明確にしていただきたいと思います。
 それから、次に全国学力・学習状況調査についても質問いたします。
 今年度新たに理科が加わり、6月の議会でも取り上げましたけれども、先日の報告では、平均正答率は小学校では理科を除き全国平均を上回りましたけれども、県内平均では全ての科目で下回る。中学校では、全ての科目で全国、県内を上回るという結果が出ております。しかし、差があるかというと、点数的には実はそんなに差がないという状況です。
 私は、いずれにしても、この結果を今後にどう生かすかが一番の問題だと思います。
 質問です。正答率が向上した理由は何か、どのように考えておられるのか。また、どんな対策をしてきたのか。
 2つ目は、本年度の結果を見て、新たな特徴と言われているようなものが出ているのかどうなのか、お伺いします。
 3つ目は、大谷・小鹿地区のまちづくりであります。
 東名スマートインターチェンジは、2年半後にはもう完成する状況になっております。これを軸とした大谷・小鹿まちづくりが進められるわけですけれども、地権者を中心に、関係住民の今後の生活設計に大きな影響を与えることであります。いずれにしてもそれぞれが異なる対応を迫られる、進捗状況によってそういう状況が出てきます。
 そこで、今後のやり方で先発エリア、後発エリアと分けて開発を進める考え方が出されております。説明会もやられておりますけれども、いずれにしましても、これらの説明会などで出された質問、意見・要望にしっかり答えて、今後にどう生かしていくかが非常に重要だと思います。
 そこで、質問です。東名スマートインターチェンジ建設の現在の進捗状況。そして、今後のスケジュールを、もう一度はっきりとしていただきたい。
 それから、2番目は、この整備の進め方についての地元説明会での意見。また、今後のスケジュールについても明確にしてほしいと思います。
 さらには、今後まちづくりの帰趨は人口70万人維持と非常にかかわりが出てくるわけであります。雇用の拡大とどういう形で結びつけていくかということが非常に重要だということで、企業をどれだけ誘致できるかが、大きな課題だと思います。
 そこで、質問ですが、大谷・小鹿地区が開発された場合の企業立地の可能性をどのように考えておられるのか伺います。
 1回目です。

◯副市長(山本克也君) 私からは、大谷・小鹿地区の今後のまちづくりの進め方のうち、企業立地の可能性について、お答えいたします。
 まず、企業の立地ニーズでございますが、企業訪問やアンケート調査等でニーズを把握しておりました企業に対し、本年4月以降、さらに詳細な計画内容や進出に向けた条件等についてヒアリングを実施いたしました。
 その結果といたしましては、本年8月までの時点で、既に工業・物流エリアの想定面積約28ヘクタールを上回るニーズを確認しているところでございます。
 これは、大谷・小鹿地区の市街地との近接性や東名高速道路と直結した抜群の交通アクセスなど、立地要地としてのポテンシャルが高く評価されているとともに、現在、設備投資意欲のある企業が本市内で新たな用地を確保することが難しいことなどを背景として、今回の開発計画に大きな期待を寄せているものと受けとめております。
 このことから、工業・物流エリアの開発が具体化し、用地価格やスケジュール、操業環境など、具体的な条件が整えば、企業立地が進む可能性は大いに高いものと考えております。
 このため、立地用地が早期に整備できるよう、土地区画整理事業の事業化に向けて、庁内連携して取り組んでまいりたいと考えております。

◯教育局長(池谷眞樹君) 教育行政についての5点の御質問にお答えいたします。
 最初に、総合教育会議に教育委員会がどのような姿勢で臨んでいるかについてです。
 子供たちを取り巻く環境が複雑化し、次々と新たな課題が生じる中、教育行政を確実に推進していくためには、教育委員会が教育の政治的中立性、継続性、安定性を確保しつつ、さまざまな行政分野と連携する必要があります。
 総合教育会議では、市長と教育委員が教育政策の方向性を共有し、協議・調整を行った事項については、双方がそれを尊重して事務を執行していくこととなります。
 教育委員会は、市長部局との連携をより一層強化し、教育に必要な施策を確実に実施につなげることを意識して、総合教育会議に臨んでおります。
 次に、現行の6・3制の課題についてですが、中学1年生になると不登校やいじめなどの問題が増加したり、学校生活に対して大きな不安や悩みを訴える子供がふえたりする、いわゆる中1ギャップの傾向があらわれます。
 これは、小学校から中学校へ進学する際に、学級担任制から教科担任制に授業形態が変化することや、中学校から部活動が始まり、放課後のみならず、休日の活動を行う機会もふえること、さらに中学校では定期試験が行われることなどの学習環境の大きな変化により、子供の生活が劇的に変化することで起こると考えられます。この中1ギャップを解消することが、6・3制の大きな課題であると考えています。
 次に、小中一貫教育に期待される効果ですが、小中一貫教育とは、小学校と中学校が目指す子供像を共有し、9年間の連続した教育課程を編成して、系統的な教育を行うもので、次の3つの効果があると考えています。
 1つ目は、小学生と中学生が交流することで、小学生が中学生をお手本にして学んだり、中学生が自分の成長や役割を自覚したりするなど、豊かな人間性や社会性が育まれることです。
 2つ目は、中学校の教員が小学校に入り授業をする乗り入れ授業や、小学校にも教科担任制を取り入れるなどの工夫を通して、より質の高い授業が提供できることです。
 3つ目は、小中学校の教員が9年間の子供の成長を連続してとらえ、協力して指導に当たることで、子供たちの心の安定や自己肯定感が高められることです。
 このような教育的効果は、施設一体型の小中一貫教育において特に期待されるところです。
 次に、学力調査の正答率が向上した理由についてですが、各学校は昨年度の調査結果を分析して、成果や課題を明らかにし、学力向上プランを作成して、教職員全員で授業改善に取り組んでまいりました。
 教育委員会が各学校を支援するための施策としましては、大学教授や指導主事等から成る学力向上専門家委員会を組織し、調査結果の分析や教育研修を実施してまいりました。
 また、教員経験のあるボランティアなどが子供の課題に対応した個別支援を行い、基礎学力の向上を図る学力アップサポート事業を実施してまいりました。
 正答率の向上は、このような取り組みの成果であると考えております。
 最後に、本年度の調査結果の特徴についてですが、本市全体としては、小中学校ともにおおむね良好な結果となりました。
 学力の状況に関しては、記述式問題の正答率で、小中学校ともに全ての科目において全国を上回る結果が得られました。
 家庭における学習状況に関しては、多くの子供が宿題に対して前向きに取り組んでいることが確認されました。
 一方で、子供みずからが計画を立てて学習に取り組むという点においては課題が残りました。

◯企画局長(山本高匡君) 総合教育会議について、教育委員会の独立性との関係はどうかという御質問について、市長部局側の考え方を申し上げます。
 総合教育会議は、市長と教育委員会が重点的に講ずべき施策等について、協議・調整を行う場であり、両者が教育行政の方向性を共有し、一致して執行に当たることを目的としております。
 そして、総合教育会議においては、市長が公開の場で教育政策について教育委員と自由に意見交換をすることが可能となり、このことにより、より一層、住民の意向を反映した教育行政を進めることを目指しております。
 教育に関する事務の管理執行については、これまでどおり教育委員会が最終責任者として決定いたしますので、教育委員会の独立性については、引き続き尊重されるものを考えております。

◯都市局長(塚本 孝君) 大谷・小鹿地区のまちづくりに関する2点の御質問にお答えいたします。
 初めに、東名新スマートインターチェンジ建設の進捗状況と今後のスケジュールですが、東名新スマートインターチェンジ整備事業は、高速利便性の向上、交通環境の改善、安全・安心な地域づくり、地域の活性化などを目的として事業を推進しております。
 平成25年6月、国から新インターチェンジ設置に関する許可をいただき、7月には中日本高速道路株式会社と新スマートインターチェンジ整備に関する協定を結び、事業に着手いたしました。
 平成26年度は、用地測量や詳細設計を実施するとともに、用地取得を進めてまいりました。
 本年7月には、中日本高速道路株式会社と新スマートインターチェンジの工事に関する協定を結び、工事を進める手続が整いました。
 今後のスケジュールですが、残る事業用地取得を進めるとともに、本年11月から新スマートインターチェンジ本体工事に着手し、平成29年度末の供用開始を目指し、進めてまいります。
 次に、大谷・小鹿地区の整備の進め方と地元説明会での意見、及び今後のスケジュールについてです。
 当地区は125ヘクタールと広大であることや、地権者が約800名と多いことから、6つの地区とし、検討を進めることといたしました。
 工業・物流エリアとして、恩田原、片山、富士見台の3地区、交流施設エリアとして宮川地区、居住エリアとして西大谷地区、農業エリアとして水上地区に分けて検討しているところです。
 本年1月の地権者を対象とする説明会では、地権者の事業への合意と企業進出の確実性などが重なった地区から、部分的な整備で段階的に進めることを提案し、7割近い賛同を得られました。
 本年8月の説明会では、まちづくりの進め方として、地区の道路状況等も踏まえ、早期の企業用地の整備や交流施設の立地が図れる恩田原、片山、宮川の3地区と水上地区の一部を、先行して整備する候補地区として提案したところです。
 説明会では。整備の進め方や具体的な土地区画整理事業の制度、減歩率について多くの質問があり、地区開発に対する関心の高さを感じたところでございます。
 平成27年度は、事業化を進めるために、3地区の土地区画整理事業の基本設計を行い、それらの資料をもとに説明会を重ね、関係権利者の理解を深めてまいります。
  〔2番寺尾 昭君登壇〕

◯2番(寺尾 昭君) それでは、小中一貫教育の点でありますけれども、中1ギャップの問題について、先ほどの説明で劇的な変化という表現もありましたけれども、そういう点は否定はできないと思います。
 ただ、そのほかに、思春期という時期を迎えて、さまざまな影響といいましょうか、環境の変化なども多岐にわたるということもあるのではないでしょうか。
 また、もう1つの問題は、小学校5年生、6年生というのは、高学年になって、リーダー性を非常に発揮することがあって、小学校の中でも大きな役割を果たすと言われております。こういう問題が逆に一貫教育で低下するという心配もあるのではないかと思うのです。
 そこで、質問ですけれども、中1ギャップの解消という点について、今言いましたように、いろいろな問題があると思うのですけれども、どのように考えておられるか、お伺いします。
 もう1つ、今触れました小学校高学年のリーダー性の育成という点で、この問題についても、一貫教育とのかかわりでどのように考えておられるのか、伺います。
 それから、学校統廃合ということが要素の1つになっております。統廃合が先行して小中一貫ということでは、これは本末転倒ということにもなりかねません。この辺のかかわりについて、どのように考えていらっしゃるのか。
 それから、全国学力・学習状況調査の結果の点でも、2つほど質問したいのですけれども、私は、6月議会でも、学校現場でいわゆる学力テスト対策が行われている現実があるのではないかという問題提起もしたわけであります。
 質問でありますけれども、今回の学力テストの結果が、どのような形で学校に伝わっているのかが1つ。
 それから、一番の懸念として言われてきておりましたのが、序列化、あるいは、競争をあおるというような問題が学力テストにはどうしてもつきまとっているということがあるわけでして、その辺を今回のこの学力テストとのかかわりで、どのように……

◯副議長(遠藤裕孝君) あと1分で終了してください。

◯2番(寺尾 昭君)(続) 考えていらっしゃるのか、質問いたします。
 いずれにしても、学校現場で今、教師が働きやすい環境で、どう力を発揮するのかが一番重要だと思います。現地現場主義という点では、市長もいつも言っていらっしゃることと共通すると思います。
 その総合教育会議で、教師の多忙化の問題が、今後中心的な議題にもなると聞いております。ぜひ実効ある方策がとられていくように要望したいと思います。
 大谷・小鹿のまちづくりについても、ぜひ、今話が出ておりますように、住民の皆さんの意向を十分に尊重して進めていっていただきたいということを申し上げます。

◯教育局長(池谷眞樹君) 小中一貫教育、全国学力・学習状況調査についての5点の御質問について、お答えいたします。
 最初に、中1ギャップの解消についてです。
 小中一貫教育では、小学生が中学生と交流することにより、進学前に中学校生活についての理解を深めることができます。また、小学校教員と中学校教員が子供たちの情報を十分に共有することで、協力して指導に当たることもできます。
 このように、小学校から中学校への環境の大きな変化を和らげることで、学校間の接続をより滑らかにでき、中1ギャップの解消が図られると考えております。
 次に、小学校高学年のリーダー性の育成についてですが、小中一貫教育において、小学校高学年におけるリーダー性の育成はとても重要であると認識しております。
 特に、施設一体型の小中一貫校においては、小学校高学年の子供たちのリーダー性を育て、発揮させる機会をどう保障するかが大きな課題となっております。
 このことについては、例えば児童会・生徒会を存続することや、運動会、遠足などの行事においても、小学校高学年の活躍の場を設定するなど、さまざまな行事を通してリーダー性を養う工夫をすることで解決できるものと考えております。
 次に、学校統廃合とのかかわりについてです。
 先ほども申し上げたとおり、小中一貫教育は、小学校と中学校が目指す子供像を共有し、9年間の連続した教育課程を編成して系統的な教育を行うもので、学校の統廃合を目的とするものではありません。
 しかしながら、少子化に伴う学校の小規模化が予想される中、学習効果を高めたり、社会性を養ったりする上で必要な集団規模を確保し、子供たちの教育環境の向上を図るためには、学校統廃合と小中一貫教育のそれぞれの効果を確かめ、検討していく必要があると考えております。
 次に、全国学力・学習状況調査の結果がどのように各学校に伝えられているかについてですが、各学校には文部科学省から直接調査結果が送付されています。その内容は、自校の結果と子供一人一人の結果です。自校の結果については、自校の概況、各教科の設問ごとの結果、及び学習や生活に関する児童生徒のアンケート調査の結果が記載されています。子供一人一人の結果については、各教科の設問ごとの観点とその正誤に関しての結果が記載されています。これについては、教師が説明を加えて本人に返却しています。
 また、教育委員会は各学校が結果を分析するための指標として、本市の各教科の平均正答率と学習や生活に関する児童生徒のアンケート調査の結果を各学校に伝えております。
 最後に、学力調査が序列化や競争につながらないかについてですが、実施要領において、本調査の目的は、児童生徒への教育指導の充実や学習状況の改善に役立てることと明記されております。また、留意事項として、序列化や過度な競争が生じないようにすることなど、教育上の効果や影響等に十分配慮することが重要であると明記されております。
 本市におきましては、これらの点を十分に理解し、実施要領にのっとって実施しておりますので、序列化や競争にはつながらないと考えております。