少子化・人口減少の要因として、非正規雇用・低賃金の本市の実態を調査せよ

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◯38番(山本明久君) 私は、本市の人口減少への対応と、政府が打ち出している地方創生について質問していきます。

 昨年11月議会において、私は3次総基本計画において、70万人目標を重視するなら、重点プロジェクトで体系的に戦略展開することを明記すべきではないのかと質問しました。今回はその続編です。
 本市の人口減少の将来予測が出されていますけれど、本当にそうなってしまうのか、お手元のA3資料に沿って見ていきます。
 1)では、昨年末時点で10歳ごとの人口を見ると、結婚して子供を産む世代として、わかりやすくつかむために、30歳と40歳では合計1万8,769人、これが30年後には、30歳と40歳となる今のゼロ歳、10歳では1万1,318人、この世代が社会増減を除いてみんな本市にとどまったとしても、40%減ります。単純に数字だけ見ると、10年後には10%、20年後には20%減ることになります。
 出生率が上がったとしても、出生数はどんどん減り、一方、高齢化で死亡数は今、どんどんふえています。恐らく万全の対策をとったとしても、人口減少は避けられません。
 その出生率も、2)のように、市の子育て支援プラン案策定資料から見ると、ここ数年で年平均0.08ずつ上がっておりますけれど、出生数は減っています。結婚し、子供を産む世代人口が減っているからです。人口が安定維持する出生率2.07には、このペースでは当然ほぼ到達不可能です。
 70万人維持のための出生数は、数字としては出ないそうです。本市のほうでね。政令市の出生率はそこにあるとおりで、本市は7番目に高いというふうになっています。
 増田レポートによる自治体消滅論を露払いとして、政府が地方創生に走って、自治体も巻き込んでいます。この増田レポートの手法は、少子化や人口減少、地域経済衰退の要因が科学的に分析されているわけではありません。少子化や人口減少、そして、地域経済衰退、本市における女性の転出超過や首都圏等への流出などの要因をやっぱり全面的に分析してこそ、有効な対策が打てます。したがって、政府資料をもとに、青年や、子供を産み育てる世代の働き方の実態、低所得の実態が少子化の重要な要因の1つになっているのではないのかという観点から見てみますと、4)では、静岡県なんですが、厚労省のデータで、最低賃金や現金給与というのは、人口流出先となっている東京、神奈川、愛知、さらには全国平均より低い。地方創生で東京から多数流入してくるような考えを示されましたけれど、しかし、給与が低いほうに流れるとは思えません。
 5)では、厚労省調査、非正規雇用の現状と課題、平成25年度版ですが、非正規雇用が、イにありますように、20代から30代で3割前後を占めており、そのうち不本意非正規雇用という人も、30代半ばまででは30%もいて、ウによれば、その非正規雇用の人は、正規雇用の人と比べて年齢別時給も青年世代で7割から8割と低くなっていて、年収で見れば、エにありますように、これも全国平均ですけれど、非正規雇用の人のほうが100万円未満や200万円未満が圧倒的に多くなっています。
 その非正規雇用は、オに見るように、健保、年金は正規雇用の半分しか加入してなくて、退職金と一時金は1割から3割しかないというふうになっています。厚労省はこれを受けて、不安定、低賃金、セーフティーネットの加入が不十分と非正規雇用を特徴づけています。やはり将来不安、結婚に踏み出せないという要因になっていると思わざるを得ません。
 それを裏づけている調査が、6)の内閣府の結婚家族形成に関する調査報告書23年版ですが、先週、池谷議員も引用されましたけれど、これを形態別に見れば明らかなように、20代、30代男性の既婚率が、正規雇用と比べて非正規雇用の方は5分の1から6分の1です。
 私は、さらに同じ調査で、7)では年収別に見ますと、300万円未満の青年の婚姻が8%、9%であるのに、300万円超の人の25%、26%と比べて、やっぱり3分の1から4分の1と低いことがわかります。
 こうしたことが、本市のデータがないものですから、本市にも言えるのではないのか。これはもう本当に市に調査していただきたいということを問題提起しておきます。
 そうしたことを踏まえて、お聞きしていきますが、これからの人口減少対策を検討する上で、やっぱりここにも目を向けて、少子化や出生率、出生数の低下、低迷について、収入所得や雇用形態などにも大きな要因がある、影響しているのではないかという点について、どう認識しているのか。また、東京都、神奈川県、愛知県等への転出超過について、どう分析しているのか、お聞かせいただきたい。
 あわせて、2025年の70万人維持に全力で取り組んだとして、あるいは万全の対策に取り組んだとしても、その20年、30年先には、本市が大幅に人口減少になる可能性についてはどのように捉えているのか、考えを述べてください。
 以上、1回目終わります。

◯企画局長(加藤正明君) まず、出生率と所得、雇用形態との関係でございますが、厚生労働省の25年度版厚生労働白書によりますと、若者が理想とする子供の数は2人を超えていますが、約3割が実現できていないとの調査結果が出ております。
 理想を実現できない理由としましては、やはりお金がかかり過ぎるといった経済的な理由を挙げる方が多く、結婚、出産、子育てに対して、所得不足などが大きなハードルとなっていることは十分認識しております。
 このような状況を踏まえ、今後策定します総合戦略においては、若者の夢や希望を実現できるような取り組みを打ち出していきたいと考えております。
 次に、人口流出の要因でございますが、平成22年度国勢調査によりますと、平成17年から22年までの5年間における県外への転出先としましては、東京都への転出が最も多く6,742人、続いて愛知県で6,155人、続いて神奈川県で5,832人と、そのようになっております。
 このうち、18歳から23歳の若者の転出が最も多いところが、東京都で2,181人、愛知県で1,148人、神奈川県で1,691人となっております。この要因の1つとしましては、卒業する高校生の人数に対して、市内の大学、短大等のキャパシティーが少ないことが考えられますが、具体的には27年度に実施します人口減少対策基礎調査において調査、分析を行っていきたいと考えております。
 最後に、将来の人口減少でございます。
 本市の人口は、1990年をピークに、その後減少に転じております。このまま何も策をしないでほっておきますと、社会保障・人口問題研究所の推計では、このまま推移しますと、20年後の2035年には60万人を割り込み、59万1,000人になることが予想されております。
 このために、まずは3次総で掲げた最大の目標である2025年の総人口70万人の維持を目指し、あらゆる施策に取り組んでまいります。
  〔38番山本明久君登壇〕

◯38番(山本明久君) 私は、この問題を重視するのは、安心して働き続け、暮らせる社会というのは、やっぱり安心して子供を産み、育てられる社会でもあるという点で、つまり人口減少への対応は、これからの地域社会と自治体がどうあるべきかという問題だからです。
 経済は暮らしと社会を発展させる土台ですから、人口減少問題もやっぱり働き方、経済的、所得的な要因にメスを入れる必要があると思います。
 私は、非正規雇用やワーキングプア問題の解決が必要だということに焦点を当てて聞きましたけれど、今の答弁では、経済的、所得的要因は一定認識しつつも、そこまで踏み込めていないんですね。認識としては、私は浅いんじゃないかというふうに思うんです。
 今後の少子化や人口減少への対応を全面的に進めていくためにも、これから戦略を立てていく上でも、こうした分野における実態調査をしっかりやる必要があると思いますが、どう考えているのか、お聞かせいただきたい。
 そういう重要な事業であるけれど、27年度当初の人口減少対策登載事業というのは、スタートにしては余りにも貧弱過ぎませんか。従来とほとんど変わらない事業で、どれぐらい効果を上げるのかが見てとれません。
 3次総前期実施計画の予定事業や取り組み概要を見ても、最大のミッションと言う割には、とてもふさわしいものにはなっておりません。今後どう充実するよう展開していくのか、どのように発展させていくのか、展望を示しておいてください。
 戦略は半年後に策定ですけれど、総合的にとは言うけれど、それが万全なのかどうかという点が不明なんですね。はっきりさせてください。
 オール静岡で取り組むと言うならば、それは必要ですけれど、やっぱり社会的に解決する必要がある要因であれば、先ほど指摘したような働き方、非正規の働かされ方、賃金、給与水準など、国の政策が当然重要になってきますけれど、地域の企業を初め、多くのところの協力がやっぱり全面的に必要です。
 そういう点で、中小企業は雇用の受け皿ですから、政府は財界に賃上げを要望しましたけれど、自治体としても、企業に対して雇用環境の改善や結婚しやすい環境づくりなどについても、やっぱりしっかり賃金水準とともに求める必要があるのではないか。
 市長は、施政方針で企業への連携強化という、協力を強調していますから、この点でぜひ取り組んでいただきたいと思いますが、どうする考えなのか、示しておいてください。
 この点では、先ほどの資料の右の一番下のところに、8)、さきの内閣府の調査ですけれど、結婚を希望する人、男女1万人へのアンケートで、行政に実施してほしい取り組みとして、一番多いのは安定した雇用機会の提供で55.4%。安定したというところにやっぱり注目する必要があると思います。
 2番目に多いのは、夫婦ともに働き続けられる職場環境の充実が49.1%。これも行政がどう対応するのかが問われてきます。
 3番目が、やはり経済的な支援で、住宅などの資金補助で42.3%。これ、自治体では実施しているところもありますけれど、広く、ですから民間住宅へも家賃補助をする必要があるんじゃないかと思います。
 こうした点で、資料にはつけてありませんが、先ほど局長は厚労省のデータを示されましたけれど、26年度の本市の子ども・子育てプラン案の策定資料の中で、本市の調査結果も同じようなものがあります。
 例えば、市内の婚姻数、平成20年度には4,111組だったのが、24年度には3,705組に減少していることとあわせて、勤め先に望むこととして、年次有給休暇の取得促進や長期休暇制度の導入を求める声が上位になっています。
 国全体では、先ほど理想の子供数が2人を上回ると言っていましたけれども、本市の調査では、静岡市の人は半分が3人と答えているんですね。理想の人数より現実が少ない理由として、やっぱり先ほどの答弁と同様に、子育て費用の不安が重いからという人が41%から48%もいます。
 安心して産み育てられる環境のために、やっぱり負担を軽減するという支援策が、これはもう行政には本当に求められているということだと思います。
 同様に、本市が実施した26年度の市民満足度調査では、静岡市は働きやすいまちだと思いますかという問いに、思っていない人が約40%もいると。ですから、転出先の東京等よりも賃金が低いし、市内では働きにくいと、これはもうはっきり出てるんですね。
 若い女性も含めて、青年労働者の流出抑制のためには、この声にやっぱりこたえる必要があるんじゃないか。そのためにも、先ほど聞きましたように、企業と行政がしっかりとこの点でも連携する必要があるんじゃないか。考えをお聞かせいただきたいと思います。
 以上、2回目です。

◯企画局長(加藤正明君) まず、人口減少対策に関する調査でございますが、3次総で掲げた70万人の維持に向けた取り組みといたしましては、大きく3つの柱があると考えております。1つ目が、本市の人口流出を抑制し、市外から流入を増加させる社会減対策、2つ目が、少子高齢化を食いとめる自然減対策、3つ目が、状況に対応するための適応策でございます。
 雇用対策は、社会減対策に位置づけられ、既にさまざまな取り組みを実施しておりますが、27年に実施する人口減少対策基礎調査において、さらなる調査を実施してまいります。
 次に、人口70万人の維持に向けた展開でございます。
 まず、27年度は、先ほど申し上げました基礎調査を実施し、この詳細な人口動態要因や人口構造の分析などを踏まえ、本市の人口ビジョン及び地方創生総合戦略を策定してまいります。
 さらに、総合戦略の策定に先立ち、社会減対策に早急に取り組む必要があることから、移住希望者の相談窓口である静岡市移住支援センターの設置や移住希望者向けのホームページの開設など、さまざまな移住・定住政策を積極的に推進してまいります。
 また、3次総には、現在想定される人口減少対策を全て網羅しており、これらの施策を推進するとともに、今後総合戦略に位置づけられる新たな事業についても、3次総に盛り込み、着実に実行してまいります。
 最後に、人口減少に向けた企業等との連携でございます。
 これにつきましても、既にさまざまな形で取り組みを行っております。例えば、ワーク・ライフ・バランスに関する取り組みを積極的に実施している事業所を表彰する静岡市ワーク・ライフ・バランス推進事業所表彰を行い、雇用環境の改善を促進しております。
 また、企業との連携につきましては、この4月に産官学に金融、労働、マスコミなどを加えた有識者会議、静岡市創生会議を立ち上げることから、その中で十分な検討を行っていきたいと、そのように考えております。
  〔38番山本明久君登壇〕

◯38番(山本明久君) 答弁を聞いても、余り展望が見えてこないという面があります。安倍首相は、まち・ひと・しごと創生について、これまでとは異次元の施策に取り組むというふうに言っていますけれど、私は本当に人口減少社会における自治体や行政のあり方にとって、これが問題解決に資するんだろうかと疑問を持つわけです。
 代表質問でも取り上げられましたけれど、国交省の国土のグランドデザイン2050や、第31次地方制度調査会による地方行政体制とガバナンスのあり方の議論などを見ると、やっぱり政府は国全体を、リニアで3大都市圏を結んで商圏とするスーパーメガリージョンですね。これ以外の地方というのは、人口は3割減るというのを前提にして、拠点化、ネットワーク化、集約化、これが打ち出されているわけですね。当然、答弁にありましたように、道州制も視野に入ってます。
 つまり、こうして見ると、地方創生路線というのは、既に破綻済みの構造改革路線の新しいバージョンにすぎないというふうになります。
 人口が大幅に減少するから、暮らしやなりわいの拠点も集約化だ。公共施設も統廃合だ。コスト削減だ。合併の次は道州制だというのがねらいになっている。私は、これでは真の地方再生とは逆行するということがはっきりしているんじゃないかと思います。
 今、必要なことは、安倍政権版の地方創生ではなくて、万全の人口減少対策をとる必要があるから、とらなければいけないですけれど、しかし、とったとしても避けられない人口減少のもとで、安心して住み続けられる持続可能なゆとりあるまちづくりに切りかえていくことが必要だと思います。
 これまでも政府と自治体によって地方経済活性化や地方再生、子育て支援策など、あれこれ打ち出され、取り組まれてきましたけれど、その結果が、今の地方衰退、人口減少、少子化ということになっているわけですから、今までとられてきた結果、こうなっていることについて、どういう認識を持っているのか。そして、これから市が戦略であれこれ打とうとしている地方創生の諸施策について、市長はこれまでと違ってクリエーティブに取り組むということが言われましたけれど、本当にこれまでの諸施策とどのように違うのか、説明をしていただきたい。これまでは効果がなかったけれど、今度のは効果があるという根拠があるのなら、はっきり示していただきたい。
 全国の市町が国、県の戦略を下敷きにして交付金事業をメニューに沿って、いわば同じようなメニューに沿って戦略を立てるわけです。どこも同じことをやるわけですね。ですから、本市が独自に本当に効果が出せるのかどうかというのは甚だ疑問です。
 その上で、これからの人口減少社会において、地域経済が元気になり、暮らしも支え、自治体も発展する。どこに住んでいても、安心して住み続けられ、安心して働き続けられて、安心して結婚もでき……

◯副議長(中山道晴君) あと1分で終わりにしてください。

◯38番(山本明久君)(続) 子供も産み、育てられるまちをつくっていくためには、やっぱり地域内で資源、雇用も所得も消費も循環させるという、これに行政も市民も企業も力を合わせることが必要だというふうに、文字どおり地域循環型社会、この方向について、どう認識しているのか、お聞かせいただきたいと思います。
 地域のコミュニティと雇用を支えるのは中小企業ですから、循環型社会で受け皿になるのは、やっぱりかなめは中小企業の振興なんですね。当然、高齢者福祉の分野での雇用拡大というのもありますから、私たちもこれまで産業連関表を使って、雇用、所得を拡大させるための経済波及効果の分析もしてきましたけれど、これからは当然、1次産業、エネルギー産業や高齢者福祉、社会保障の分野になります。その担い手は、やっぱり中小企業をどう振興するかというところに行き着くと思いますので、対策をしっかり……。

◯企画局長(加藤正明君) まず、地方の人口減少及び衰退の認識についてでございますが、これまで地方においては、さまざまな取り組みを行ってまいりましたが、地方から大都市圏、とりわけ首都圏への若年層を中心とした一極集中が発生し続けており、これが予想外に強い人口吸引力となって、地方の人口減少及び衰退に歯どめがかからない状況を引き起こしているものと認識しております。
 次に、地方創生と従来の取り組みとの相違点でございますが、今回の地方創生の取り組みは、3次総で掲げた2025年の総人口70万人の維持を実現するための中心的な役割を果たすものでありますので、確実な達成を目指し、スピード感を持って、あらゆる方策を講じてまいります。
 このため、全庁挙げて推進する体制を整えるべく、既に人口減少対策推進本部を立ち上げ、来年度新設される人口減少対策室がその指令塔となり、人口ビジョン及び地方創生総合戦略を策定してまいります。
 また、先ほども御答弁いたしましたが、首都圏から本市への移住促進を図るため、ことしの4月に静岡市移住支援センターを設置するとともに、東京事務所と連携をとることにより、移住に必要な情報等をワンストップで提供できる体制を構築します。
 したがいまして、この推進体制の構築と推進窓口の設置がこれまでの取り組みとは異なる点でございます。
 最後に、地域内の経済循環についてですが、国のまち・ひと・しごと創生ビジョンでは、人口の減少は労働力人口の減少や消費市場の縮小を引き起こし、地方の経済規模を縮小させ、それが社会生活サービスの低下を招き、さらなる人口流出を引き起こす悪循環が発生していると指摘されております。
 本市といたしましては、地方創生総合戦略の策定及びこの推進により、この負のスパイラルを打破し、持続可能な発展につながる好循環を生み出せるよう、検討を行ってまいります。