史実に基づかない駿府城天守閣はやめよ

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DSC_0430◯38番(山本明久君) 私は、2つの問題を取り上げます。  1つは、駿府城天守閣建設についてです。  市長は、天守閣建設を目指して、3次総でまず天守台の復元を着工するという方針を示しています。私は、天守台復元ありきではなくて、少なくとも3次総では発掘調査にとどめるべきだと考えます。なぜなら、この天守台跡地は、明治時代に陸軍が天守台を壊したわけですが、昭和50年代の調査によって旧今川館跡が出て、当時その場に県立美術博物館建設を予定しているのをやめたという経過が明らかになっています。  今回の3次総での調査対象区域は、そこと隣接しており、旧今川館跡の上に天守台が構築された複合施設として、慎重に史実を解明することや対応が求められるからです。  そこでまず、お聞きすることは、駿府城天守台にかかわる発掘調査について、旧今川館跡、天守台跡、そして本丸濠など、文化財保護の観点からどのように行うのか、示していただきたい。  そして、もう1つの理由は、市長が言う整備方針については、発掘調査の結果を受けて、歴史的事実を確認してから、是非を判断すべきではないかということです。つまり、3次総でまず復元ありきは拙速であり、複合遺跡の姿が明らかになってこそ、それらを保存するかあるいは復元するか、あるいは一部公開の活用をするか、適切な方針が史実に基づいて打ち出されるのではないか、この点を市長はどのように考えているのか、示していただきたい。  さらに、市長は、これまで平成11年と平成22年度の2度にわたる教育委員会や専門家などの調査と議論の結果まとめられた、史実に忠実であるべきで、天守閣の復元はできないという、正しい歴史を大切にするこれまでの市の立場を切り捨て、なぜリセットするのか。史実と違っても、天守閣風の建造物がどうしても欲しいのか、あるいは一部市民団体からの建設要望に応えた政治的判断が史実より優先するのか、はっきり示していただきたい。  2点目は、リニア新幹線建設についてです。  JR東海が8月、環境影響評価書補正版に基づく工事実施計画を申請しましたが、政府がもしこのまま認可して着工になれば、世界の宝である南アルプスユネスコエコパークにとって、取り返しがつかない重大局面であり、力を合わせようという立場で質問します。  JRの準備書への本市の意見書では、リニア建設について、豊かで多様な自然環境への多大な影響を懸念した上で、河川、生態系、残土置き場など、エコパーク全体の機能喪失の危険性を指摘して、周辺環境や住民生活に及ぼす影響に対して、保全と対策に万全を求めていました。  また、環境大臣においても、環境影響を最大限回避・低減するとしても、なお相当な環境負荷が生じるという厳しい意見をつけていました。  しかし、こうした指摘を受けても、なおJR評価書では、全体として準備書と本質は変わらず、影響は極めて小さい、影響はない、小さいと予測するなどを乱発する、許しがたい態度です。このままの見切り発車を専門家も非常に心配しています。関係自治体、住民などが力を合わせて対応することが今、喫緊に求められています。  そこで、お聞きしますが、本市が表明した意見にまともに対策がとられないまま進められようとしているもとで、国やJRに対して、市が提起した懸念や問題が解決されるまで認可すべきではないこと、このまま進めるべきではないことを早急に申し入れる必要があると思いますが、どうするのか、お答えください。  また、市長は、リニア建設についてもっと議論すべきだという考えを持っているとの報道がありました。ちょうど9月6日付の毎日新聞がリニア建設、本当に進めていいのかという社説で、必要性に疑問を投げかけました。リニア中央新幹線の採算性、生産年齢人口大幅減少等、需要見込みの過大な問題、地震の代替ルート論、本市が鉄道幹線から外れてローカルになる問題など、リニア建設の必要性等について、どのような認識を持っているのか、考えをお聞かせください。  以上、1回目です。

 

◯副市長(山本克也君) リニア新幹線建設についての御質問にお答えをいたします。  中央新幹線の環境影響評価書に対する国土交通大臣意見においては、事業に伴う地域住民の生活環境や自然環境等、多岐にわたる分野での影響が懸念されていることから、JR東海に対し、環境保全措置に十分な配慮を求めるとともに、地域住民等への丁寧な説明や地方公共団体との連携による事業の円滑な実施について言及されているところであります。  現在、JR東海が国土交通大臣に認可申請をしております工事実施計画が認可されれば、工事の実施が可能な段階を迎えることとなりますが、従前から環境影響評価準備書に対する市長意見などで表明しております、発生土置き場の選定や水環境への影響などについての懸念は残されたままでございますので、工事の着工を急ぐべきではないと考えております。  この工事は、市民の皆さんの環境の保全に関する議論を踏まえた上で行われるべきであるとの認識のもと、現在、第3次総合計画のパブリックコメントに合わせ、中央新幹線建設事業の工事着工に関し、皆様の意見を伺っているところでございます。  今後は、市民の皆さんからいただいた意見を踏まえ、環境の保全に対する懸念が払拭されるよう、JR東海に対し、誠意ある対応を求めてまいりたいと考えております。

 

◯生活文化局長(安本 睦君) 駿府城天守台整備に伴う発掘調査をどのように行うのかという御質問でございますが、駿府城天守台整備に伴う発掘調査では、対象区域を天守台部分と天守台の外側に掘られた本丸堀部分とし、目的としては、天守台及び本丸堀の埋蔵状況を確認することにより、その規模や構造など、天守台の全容の解明に努めるものであります。  駿府城の築城以前に存在していたと推測される今川館跡については、駿府城の天守台及び本丸堀をつくった際に、天守台の基礎工事や本丸堀の掘り下げ工事により、今川時代の地表が壊されたことが予測されるため、今回の調査で今川館跡が発見される可能性は低いと考えております。仮に今川館跡が確認された場合は、文化財保護の観点から、適切な記録保存をしていくこととなります。

 

◯企画局長(加藤正明君) 私からは、天守閣建設について、発掘調査を実施し、事実確認を行ってから再建、整備の是非を判断すべきではないかという御質問と、過去の調査結果をリセットする理由についてお答えします。  天守閣の再建、天守台の整備については、幾つかの段階を踏んで検討を進めてまいりたいと考えております。まずは、天守台跡の発掘調査を実施し、遺構や埋蔵物等の調査及び資料等の整理を行い、事実の確認を進めてまいります。  次に、この結果を踏まえ、改めて天守閣を見据えた天守台整備の検討を行います。  そして、天守台の着手に当たっては、財源となる寄附の状況や市民の皆さんの御意見などを、総合的に勘案して判断していきたいと考えております。  また、天守閣再建に向けた方針転換の考え方でございますが、平成21年度に出されました駿府城天守閣建設可能性検討委員会の報告では、現時点においては、天守閣復元を行うべきではないとされていますが、その一方で、現存する絵図等の資料から、天守閣の建設は可能との考え方もございます。  また、天守閣再建に向けた熱心な市民活動など、機運の盛り上がりも見られること、さらには徳川家康公顕彰四百年記念事業の開催を契機に、市民の皆さんの歴史認識の高まりも期待できることなどを受け、再度検討を行うことといたしました。

 

◯38番(山本明久君) 駿府城についてですが、リセットの理由は、機運が盛り上がってきて絵図でもできるからだという話ですが、絵図じゃできないから専門家が言っているわけですよ。  リセットの大義も道理も示されませんでした。言ってみれば、長年にわたる行政機関や専門家の積み上げてきた議論や調査を否定するものです。  文化庁も建設当時の材料と工法による史実に忠実な復元を原則としているもとで、そうでない絵図に基づくだけの天守閣風の建造物を幾ら建設しても、400年前にあった価値だから情報発信するといっても、それは市民や子供たち、そして来訪者にとって、見るべき価値ある歴史遺産にはなり得ません。  幾ら夢だ、観光だといっても、市民や国民の理解は得られませんし、誇りと愛着は史実に基づく歴史的価値あるものから生まれるものです。復元できる指図がないのに天守閣建設を目指す方針を打ち出すこと自体、本市と市民にとってはマイナスです。  もし、旧今川館跡が出たら記録保存すると言われました。ですから、それもやっぱり調査結果を受けて、保存が必要かどうかとなれば、天守台復元という方向は少し待たざるを得ないわけです。そういう誠実な態度をとるべきです。  じゃ、その天守台復元、答弁では整備としか言いませんでした。復元が、整備が可能だと言われる天守台はどうすべきなのか。駿府城公園の整備方針として、歴史遺産の保存という理念が打ち出されている以上、文化財として保存するのか、復元するのか。今言いましたように、やっぱり発掘調査を待って、複合の部分が絡んできますけれども、そこの結果を待ってどうするかを決めるわけですから、3次総では判断するというところにとどめるべきです。復元ありき、着工ありきは、これはまずいですよ。貴重な複合遺跡を壊す可能性もあります。どう考えているのかをお聞かせいただきたい。  もう1つ、もし天守台を復元するという場合でも、恐らく復元は考えていないかもしれませんが、将来の天守閣建設を想定すると、近・現代に建設された他市の天守閣のように、鉄骨、コンクリートでは、木造より重さも数倍になり、基礎となる天守台そのものの基礎工事や補強工事が必要となって、史実に基づく天守台復元はできないのではないか。どう考えているか、答えていただきたい。  ですから、復元じゃなく、単なる建設整備ということなのか、天守台を史実によって復元しようとすれば、その上には木造復元以外の天守閣風建造物は、物理的には建てられません。  また、復元した天守台の上に、歴史的価値のない天守閣が建つのはふさわしくないと思いますが、どうか。  次に、リニアです。  ずばり、急いで、やっぱりこのまま進めるのはだめだと、緊急に申し入れるべきなんですよ。まだちょっとそこまでいっていない。9月初めに県内の山岳4団体が、南アルプスの保全は工事に優先するという立場で、県知事に要望を出しましたけれども、本市もホームページでは、万全の環境保全対策が図られることが確認された上で、事業を進めるべきですと、一度失われた自然はもとに戻らないと、警鐘を鳴らしています。この立場で国交省、JRに、厳しく今こそ物を言ってほしいです。ですから、そういう点では、頑張っていただきたい。  南アルプスが年間4ミリも隆起して、瓦れきや土砂が急峻な山々からどんどん崩れて、林道や河床に堆積している危険な現状を、私たち党市議団も7月に残土置き場を中心に視察してきました。貴重な動植物の宝庫で、エコパークとして豊かな生態系や生物多様性を保全することの大事さも実感してきました。  ところが、例えば市の意見書にも記載した絶滅危惧種のヤマトイワナについて、生息情報のある種については、その情報の把握に努め、必要な調査の実施及び環境保全措置を講ずるよう求めましたけれど、JRの評価書では、対象事業区域を含む南アルプス地域から、重要な魚類は報告されていないという姿勢です。ですから、このまま進めるわけには絶対にいかないわけです。  こういうJRの着工ありきの姿勢に対して、生態系、生物多様性への影響に対して、どのような実効ある措置を求めていくのか、考えを示していただきたい。  以上、2回目です。

 

◯都市局長(松浦和彦君) 天守台の復元についての2点の御質問について、一括してお答えをいたします。  このたびの第3次総合計画骨子案において、駿府城天守閣再建を目指した天守台の整備を打ち出しておりますが、現在のところ具体的な整備方法等につきましては、位置づけておりません。  文化財保護の観点から、まずは、発掘調査を実施し、天守台の遺構の確認を行い、その結果を踏まえ、具体的な整備方針等の検討を行ってまいりたいと考えております。  また、天守台の整備につきましては、復元とすべきか否かという議論があるかと考えますが、この点につきましても、発掘調査の結果を踏まえ、本市にとって何が最善かを検討してまいります。

 

◯環境局長(小林正和君) 工事による生態系などへの影響に対して、どのような措置をJR東海に求めていくかとの御質問でございますが、本市ではJR東海に対し、環境影響評価法に基づく準備書に対する市長意見で、環境への影響を回避・低減するよう最善の措置を講ずる責任を果たしていただきたい旨、求めてまいりました。  JR東海では、準備書に対する関係都県知事等のさまざまな意見や環境大臣、国土交通大臣の意見を踏まえ、補正した環境影響評価書を本年8月、公告及び縦覧いたしました。  その補正された評価書では、ヤマトイワナなどの希少動植物の追加調査や、調査結果に基づく環境保全措置を実施するとの見解が示されました。  今後、これらの見解の実効性が確保されるよう、JR東海に対し求めてまいりたいと考えております。

 

◯38番(山本明久君) 駿府城です。  答弁を聞いていると、だから3次総では復元ありきなのかどうかというのが不明だし、復元か、単なる建設かもちょっと不明だというところでいいんでしょうか。  この天守閣に至っては、絵図でみたいに言っていましたけれど、姿かたちを似せようとしても指図がないわけですから、かつて1990年代に復元できるという内藤 昌氏などがまとめた学術調査報告書を見ても、資料の上では高さも不明、2階の寸法や広さも特定できずというわけですから、建たないわけですよ。そんな天守閣の建設を目指すということ自身が、やっぱりまずいのではないかと思います。  史実と歴史遺産の価値というのを、後見人をやっているわけですね。そういう姿勢を改めるべきです。  今、駿府城公園は史実に基づいて、これから清水御門などの整備を計画して、価値ある歴史遺産の保存整備を進めているのに、天守台についても復元するというわけではない、単なる建設に恐らく補強工事して、コンクリートで建てられるようにするような考えであれば、公園自体の価値を低めるものになってしまいます。史実に基づく歴史的価値ある遺跡こそ、市の大事な観光資源として活用できるのではないでしょうか。  そうした立場からお聞きしておくことは、歴史遺産の保存と再整備を駿府城公園の方針としているもとで、史跡指定を受けて歴史的価値あるものにすることが必要じゃないか。逆に言えば、この史跡指定を受けずに史実に基づかない天守閣建設や復元足り得ない天守台建設では、本当の価値あるものにならないではないか、考えを示していただきたい。  次にリニアです。最後に、本市の大きな懸念である残土置き場の問題についてお聞きしておきます。  市の意見書では、南アルプスの観光資源としての価値を損なう懸念を表明しています。JR東海は、これに対してはまともに対応しようとしない。一番危険だと言われていた扇沢を取りやめて燕沢に集約するというような検討もされているようですが、しかし、燕沢は私たちも現場を見てきましたけれど、あそこは崩れて流れてきた土砂や瓦れきが堆積して、見た目にはほとんど林道沿いの河床か河川敷という現状です。そこに大量の残土を持っていくというのは、幾ら擁壁をつくったとしても、それは無理がある。もし、土石流の発生によって崩れた場合は、大変な影響があると。自然環境阻害にもなります。  こうした危険な工事計画はやめさせる必要があると思いますが、どうするのか、考えを述べていただきたい。  以上です。