TPP交渉参加に関する意見書、攻勢的な外交交渉による尖閣諸島問題の平和的解決を求める意見書の提案説明

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165◯4番(鈴木節子君) 私は、日本共産党議員団を代表し、発議第12号TPP交渉参加に関する意見書と発議13号攻勢的な外交交渉による尖閣諸島問題の平和的解決を求める意見書、この2件の提案説明をさせていただきます。

まず、TPP交渉参加に関する意見書についてです。

野田佳彦首相は、TPP(環太平洋連携協定)交渉参加に向けた日米協議を加速すると表明しました。TPPは関税を原則撤廃し、農産物の輸入を完全に自由化するもので、農林漁業と国民の食料に大打撃となります。さらに非関税障壁撤廃により、食の安全、医療、金融、保険、官公需・公共事業の発注、労働など、あらゆる分野での規制緩和をねらうものです。

政府は協議を始めるに当たり、情報収集が目的の事前協議であり、すぐに交渉に参加するわけではないと説明しましたが、実際、事前協議のうちから譲歩を求められています。アメリカは、日本のTPP参加の条件として牛肉、保険、自動車の分野の関税撤廃を執拗に迫っていますが、アメリカの業界や企業の利益を代弁したものであり、受け入れなければ参加は認めないという居丈高な態度で、アメリカ型の貿易と投資の自由化と市場原理主義を国際ルールとして押しつけようというものです。

国内では、財界が国際競争力、規制緩和などの名目で雇用を壊し、地方を切り捨て、国民生活をずたずたにした構造改革路線を、さらに推し進めるためにTPPを推進しています。

TPPに正式に参加となると、例外のない関税撤廃を迫られ、米を含む日本の農業が壊滅的な打撃を受け、日本がはかり知れない被害を受けることは明らかです。アメリカなど3カ国は、秘密裏のうちに交渉を続け、日本が参加すれば、その合意を受け入れなければなりません。野田首相も安倍自民党総裁も守るべきは守る、国益は守ることが可能であるかのように説明しますが、これは国民を欺く行為です。

今、TPPへの参加に断固反対するとして、農林水産団体、消費者団体、日本医師会、全国農業協同組合中央会などが総力を挙げて反対し、地方議会の大方から反対や慎重審議を求める決議が上がっています。

食料、暮らし、農業、地域経済を守り、食料自給率の向上や食料安全保障の観点からも、TPPへの交渉参加の暴走は食いとめるべきです。

次に、尖閣諸島問題についてです。

日本と中国の両国間の対立と緊張が深刻になっていますが、日本への批判を暴力であらわす行動は、いかなる理由であれ許されません。道理に基づき、冷静な態度で解決を図るという態度を守るべきです。

また、物理的対応の強化や軍事的対応論は、両国や両国民にとって何の利益もなく、理性的な解決の道を閉ざす危険な道であり、日中双方ともに厳しく自制することが必要です。

尖閣諸島の領有権について、日本の領有は歴史的にも国際法上も正当です。1895年1月、日本は尖閣諸島の領有を宣言しましたが、これは国際法上全く正当な行為でした。

領有が国際的に認められるには、主権の継続的で平和的な発現が基本的要因となります。無主の地の先占については、通例、占有の対象が無主の地であること、国家による領有の意思表示、国家による実効的な支配、この3つが国際法上の条件として上げられます。尖閣諸島に対する日本の領有は、このいずれの条件も満たしており、国際法上全く正当なものです。

一方、領土紛争において、相手国による占有の事実を知りながら、これに抗議など反対の意思表示をしなかった場合には、相手国の領有を黙認したとみなされるという法理も、国際裁判所の判例を通じ確立しています。

この法理に基づいて、1895年の日本の領有宣言以来、中国側が75年間にわたり一度も抗議を行っていないことは、日本の領有が国際法上正当なものである決定的な論拠の1つとなります。

中国側の主張は、同諸島は台湾に附属する島嶼として中国固有の領土であり、日清戦争に乗じて日本が不当に奪ったものだと言っていますが、尖閣諸島は日本が戦争で不当に奪取した中国の領域には入っておらず、中国側の主張は成り立ちません。

尖閣諸島問題を解決するためには、日本政府が尖閣諸島の歴史上、国際法上の正当性について、国際社会と中国政府に理を尽くして主張する必要があります。この点で日本政府の態度には重大な問題があります。それは、領土問題は存在しないという立場を繰り返すだけで、中国との外交交渉によって尖閣諸島の領有の正当性を主張する努力を怠ってきたということです。

歴史的に見ると、日本政府の立場は2つの問題があります。

その第1は、1972年の日中国交正常化、1978年の日中平和友好条約締結の際に、尖閣諸島の領有問題を棚上げにするという立場をとったことです。これは日中間に領土紛争が存在していることを中国との外交交渉で認めたものにほかなりません。

第2は、その後日本政府は、領土問題は存在しないとの態度をとり続けてきたために、新たな問題を引き起こしたことです。

日本政府は、中国政府に対して一度も領有の正当性について理を尽くした主張をしたことはなく、そうした主張を行うと領土問題の存在を認めたことになるというのがその理由です。中国政府は、尖閣諸島は日本が不法に奪い取ったと、日本の軍国主義による侵略だとする見解を繰り返していますが、日本政府は反撃を一度も行わず、反撃すると領土問題の存在を認めたことになると自縄自縛に陥っています。

この問題を解決するためには、領土問題は存在しないという立場を改め、領土にかかわる紛争問題が存在することを正面から認め、冷静で理性的な外交交渉によって、日本の領土の正当性を堂々と主張し、解決を図るという立場に立つべきです。

また、政府間の交渉だけでなく、相手国の国民世論をも納得させるような対応が必要です。日本軍国主義の侵略だと考えている中国国民に対し過去の侵略戦争に対する真剣な反省とともに、この問題をめぐる歴史的事実と国際的道理を冷静に説き、理解を得る外交努力こそ、今求められています。

以上、2件の意見書の提案説明をさせていただきました。

この議場の全員の皆様の御賛同をいただけますよう訴えて、提案といたします。