海洋文化施設への巨費投資を質す

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◯寺尾 昭 ゆうべの熱戦で眠くなる頃だと思いますので、ぜひ注目をお願いしたい。
 海洋文化施設について、今日は質問いたします。
 海洋文化施設については、本年度、最終年度を迎える3次総で5大構想の1つである海洋文化の拠点づくりの重要な柱として位置づけられ、来年度スタートする4次総に引き継がれております。
 11月25日の市長定例記者会見の資料に基づいて、その概要を整理しながら、問題点を挙げてみます。
 海洋・地球総合ミュージアム整備運営事業として、1つは、駿河湾を中心とした海洋文化、海洋研究の価値を結集することで、国際海洋文化都市としてのブランド化を図る。2つ目は、海洋文化エリアの形成により、国際的な集客を図り、にぎわいを創出する。3つ目は、海洋分野における人材育成により、研究・教育を促進する。4つ目は、産学交流拠点の形成により、新産業創出と振興を図り、経済波及効果を生み出す。この4つの役割を持つとしております。
 さて、果たして、この思惑どおりに進むのか。そこが問題ではないでしょうか。
 最大の課題は、集客とにぎわいの創出という点です。
 クルーズ船の再開というニュースも最近、伝わっておりますけれども、これまでの乗客は、下船口に止めておいたバスに乗ってそのままよそへ行ってしまうというのが相場であったわけであります。利用者増を狙い、今度は駿河湾フェリーの乗降場所が、日の出地区から江尻地区に移ってしまうということでありますから、その分のお客も減っちゃうんじゃないかという心配もあるわけであります。
 他都市の水族館の状況を見てみますと、成功している例というのは、沖縄の美ら海水族館ということになっておりますが、そのほかの成功している例といいましょうか、集客の多いところというのは、大体大都市をバックにしている水族館に限られているわけです。
 そういう意味では、清水も決して大都市をバックにということではありませんから、集客についての心配は大きい。そしてまた、その道筋も見えていないというふうに言っていいのではないでしょうか。
 そして、契約方法についてでありますが、いわゆるPFI方式を取っております。11月25日に、株式会社乃村工藝社を代表企業とする9社の事業者グループが落札したことが公表されておりますけれども、入札はこの事業者グループの1者のみであったということであります。今後、SPC、いわゆる特別目的会社をこの9社で形成して、契約を進めるということになっております。
 今回、1者のみであったというところに、企業がここに関心を寄せる、その関心度というのも表れているんじゃないかと。あるいはまた、水族館という困難さ、複雑さ、そういうものも影響していたのではないかなとも思われます。
 今、研究者から、PFI方式についての見直しがかなり多く提起されているわけなんです。民間活力の導入を旗印に、住民サービスの向上と効率的な運用、コスト削減などが、その目的とされてきておりましたけれども、民間企業がこれを進めるということになれば、税金を払わなきゃならない、株主に配当もしなきゃいかん、結局、利益の上乗せをしていかなければいけない。これは公的事業にはない要素ということにもなるわけです。それを捻出するために、そこで働く労働者の長時間労働や賃金へのしわ寄せ、こういうことも心配になってくるということであります。
 PFI先進国と言われているのがイギリスで、サッチャー時代に始まったということであります。そして、実は、イギリスでもこのPFIの見直しが今、始まっている。再び、民営化から公営化というところに戻されている例も増えているんです。
 国内でも実はあるんですよ。隣の愛知県西尾市の、公共施設のPFIを断念した例だとか、高知県でも公立病院のPFI契約を解除したというような例もあるんです。決して珍しくはありません。
 市は、公費負担分として169億6,000万円を契約期間中、分割して支払い続けることになるわけであります。経費に充当する入館料が計画どおりに入ってくるかどうか、ここについては、ロスシェアということがあらかじめ契約の中に含まれているということであります。その分は公費負担ということで跳ね返ってくるわけであります。スケジュールとしては、今後15年間が事業の契約期間ということになっているわけでありますけれども、ロスシェアということは、言い換えれば、民間の事業者に保険がかかっているというふうに言ってもいいわけであります。
 そしてさらに、水族館の海水は常に確保する必要があり、海水の取水方法は重要な問題であります。清水港内の海水は、私たちの目から見れば決してきれいとは言えないんじゃないかなと思います。大雨の際などを見てみると、ごみや泥が流れ込んでくるということであります。釣った魚も食べないという人が多いということでありますが、そんな状況も心配されます。
 さて、質問です。
 落札者の事業提案における事業費と海水の取水方法、そして、15年間の入館者数の見込みや収支はどのようになっているのか、そしてまた、その需要予測を市はどのように捉えているのか、まず、お聞きいたします。
 水族館は生き物を管理するので、特殊な技術が必要であることは言うまでもありません。その技術は常に新たな開発と発展、継承されなければならないわけです。多くの人に学習・見学してもらう。それも1回だけじゃなくて繰り返し来てもらう、リピーターになってもらわなければならないわけです。また、その方法を編み出していかなければいけないという課題もあります。そのためには、他の機関との協力などの関係もつくっていかなければなりません。
 また、地方の施設の多くは集客で効果を上げておりません。先ほど言ったとおりです。大都市をバックにしていないということでありますが、他都市と同じような施設を造っても、興味を持ってもらえない。そこでどう差別化を図っていくのかということが大事であります。
 東海大学やJAMSTECといった教育・研究機関との連携を挙げております。そして、市は、令和元年度に東海大学とJAMSTECそれぞれと、静岡市海洋文化拠点施設の学術コンテンツの集積等に係る協力に関する覚書を締結したことを公表しているわけです。これは清水ならではとは聞いておりますけれども、効果は未知数で、まさにこれからということではないでしょうか。
 そこで、質問です。
 コロナ禍で再開した現在の東海大学やJAMSTECとの連携・協力体制はどのようか、また、この連携によって、他の水族館との差別化をどう図っていくのかについてお伺いします。
 施設運営の理念として、駿河湾とつながる多様な生命や人々との出会いを通じて、地球環境と海洋、人々とのつながりを探求するとし、それが地元企業との連携を促し、清水のまちのにぎわいや経済活性化に貢献すると描いておりますけれども、海洋文化施設ができるとなぜそのようになるのか、その過程や関連は明確ではありません。確かに入館者数の見込みは出ておりますけれども、じゃ、その根拠は何なのかということになると、これも明確ではない。
 そこでお聞きいたしますけれども、4次総の期間において、施設周辺ににぎわいや経済活力をどのように波及させていこうとしているのか、お伺いいたします。
 以上です。

◯海洋文化都市統括監(杉山雄二君) 海洋文化施設に関する3つの御質問にお答えします。
 まず、事業者提案における事業費と海水の取水方法、そして、15年間の入館者数見込みや収支はどのようで、その需要予測を市はどのように捉えているかについてですが、今回、落札した事業者は、総事業費を約242億円、15年間の入館者数を681万人、入館料収入を約72億円と見込んでおります。
 そして、この事業費には海水の取水に係る費用も含まれており、主に取水管を地下に埋設して岸壁から直接、取水する方法が提案されております。
 また、事業者が想定した入館者数は、本市が想定した15年間の入館者数約688万人と同程度であることから、本市としては需要予測は妥当と考えております。
 次に、現在の東海大学やJAMSTECとの連携・協力体制はどうなっているのか、また、この連携によって、他の水族館とどのように差別化を図っていくのかについてですが、本市は、東海大学、JAMSTECと締結した覚書に基づき、入札期間中には事業者との意見交換会に参加していただくなど、連携・協力体制の下、着実に事業を進めております。
 また、東海大学やJAMSTECと連携することにより、それぞれが保有する最新の研究成果や映像展示などの提供、さらには、研究活動や成果の発表の場としての活用が見込まれるなど、本施設は、水族館と博物館を融合した新たな視点のミュージアムであることから、他の水族館では味わえないサービスを提供できることが差別化につながると考えております。
 最後に、4次総の期間において、海洋文化施設周辺ににぎわいや経済活力をどのように波及させていくのかについてですが、まず、本年9月議会で答弁したとおり、落札者が決定したことにより、本施設周辺の民間開発が具体的に動き出すことが期待されます。
 そして、開館後は、本施設が広域集客の基点となり、周辺エリアへの回遊案内、地域の祭りなどと連動したイベントなどの仕掛けを、本市、事業者、そして商店街を含む地域関係者と連携して行うことで、にぎわいや交流人口の増加につなげてまいります。
 さらに、本施設は、先ほど答弁したとおり、東海大学やJAMSTECとの連携により、今後、海洋・地球に関心のある様々な方が集い、コミュニケーションできる場ともなることから、中長期的には、本市における海洋研究・産業に関する人材の育成や関連ビジネスの集積などへの波及も見込んでいるところです。
  

◯寺尾 昭 御答弁いただいたわけですけれども、数字はそういうことでしょう。
 しかし、やっぱりそこに根拠、理由、そういうものが明確にされていないというところにまだ、現在、問題があると言わざるを得ません。
 ロスシェアについても、契約時にうたわざるを得ないということが、結局、心配の種にもなっていると、その証明にもなっているということになるんじゃないでしょうか。
 岸壁から直接、取水する方法が提案されているというお話がありました。水質への影響はないのか。そしてまた、その方法によっては、事業費全体にも大変大きな影響が当然、出てくるわけです。その辺についての説明もやっぱり必要だと思います。
 にぎわいの創出ということについてですけれども、清水のまちの活性化につながるのか。これはあまりにも不確定要素が多いと言わざるを得ません。
 また、費用対効果という観点から、市民の理解が得られるのか。ここについても非常に心配があるわけです。
 PFI方式についての問題点も、先ほど言いましたように、ここもしっかり検証する必要があると思います。
 約72億円の入館料を見込んでの242億円。これは、1万円札を積み上げますと、242メートルになるんです。大変巨額な投資ということになるわけであります。
 この効果が本当に生み出せるのか。大規模箱物事業が多過ぎるという批判も少なくないわけでありますから、私たち日本共産党市議会議員団は、この事業についてはやはり一度立ち止まって、中止を含む見直しを行うべきではないか、このように4次総に向けても提案したところであります。改めてこの場で申し上げまして、総括質問といたします。