1.高齢者の虐待防止の取り組みについて 2.生活保護行政について 

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◯市川 正
 通告に従いまして質問いたします。私は、福祉行政について2点伺いたいと思います。
 大項目1、高齢者の虐待防止の取組について。
 高齢者虐待の実態については、本年3月、厚労省が令和元年度高齢者虐待の防止、高齢者の養護者に対する支援等に関する法律に基づく対応状況に関する調査の結果及び高齢者の虐待の状況等を踏まえた対応の強化についてという通知を発出しました。これによりますと、高齢者の虐待については、養介護施設従事者による相談・通報件数が2,267件、虐待判断件数は644件ありまして、いずれも過去最高となっています。養護者による相談・通報件数は3万4,057件、これも過去最高です。また、虐待判断件数は1万6,928件ということで、前年の1万7,200件余に比べて僅かに減少したものの、高止まり傾向が続いているとしております。養護者による虐待判断は49.7%ということで、養介護施設従事者によるものの28.4%に比べて非常に多くなっております。このことから、今回は養護者による虐待防止について考えたいと思います。養介護施設従事者によるものについては、要望・意見の中で触れることといたします。
 養護者によるものでは、養護される側の性格や人格によるもの、養護する側の介護疲れやストレスによるものが多くなっております。これらは認知症に起因するところも多いのではないかと推察されるところであります。家庭において高齢者が安心して生活できるためにも、高齢者の虐待をなくすことが求められます。
 そこで、静岡市の対応をお聞きいたします。
 1つは、静岡市の健康福祉報告書によりますと、令和2年度の虐待通報件数、在宅分でありますけれども、186件となっております。虐待の種別や要因など、高齢者の虐待の現状はどのようになっているのか、伺います。
 次に、虐待通報を受けた場合、虐待の当事者や養護者への支援や指導、これらは市としてどのように対応しておられるのか、伺いたいと思います。
 次に、高齢者虐待防止のための市の取組について伺います。
 コロナ禍で生活に困窮する市民が増えている中、認知症や要介護の家族を抱える養護者は、養護に関して常に緊張を強いられているのではないでしょうか。厚労省通知で、新型コロナ感染症の拡大防止のため、外出自粛や通所介護、短期入所生活介護の利用回数の変更などにより、多くの高齢者が外出を控え、居宅で長い時間を過ごすことが想定されています。そして、養護者の生活不安やストレスの増加が予想され、高齢者を取り巻く家庭内での人間関係、養護者の介護疲れなどの要因が影響して、高齢者の虐待の発生、深刻化が懸念されるとの警鐘も見逃せません。虐待が起こってしまったとき、あるいはその傾向があるときなど、深刻化する前に発見し、高齢者や家族に対する支援を開始することが求められます。同時に、虐待を未然に防止するためには認知症に対する正しい理解や介護保険の適切な利用など、養護者の負担軽減を図ることが大切と考えております。福祉事務所や地域包括支援センターなどと連携し、セミナーや当事者同士の体験交流の場や学習会を開くなど、市民への啓発活動を進めていくことが大切ではないでしょうか。
 そこで、高齢者虐待防止のため市民に対してどのような啓発活動を行っておられるのか、あるいは行っていこうとしているのか、伺いたいと思います。
 次に、大項目2です。生活保護行政について伺います。
 生活保護については、厚労省のホームページが改善され、生活保護の申請は国民の権利です。生活保護を必要とする可能性はどなたにもあるものですので、ためらわずに御相談ください。このように大きく明示されました。その上で、生活保護の申請についてよくある誤解として幾つかを例示し、保護申請をためらっている人も、まずは思い切って相談しようと納得できる呼びかけになっております。
 今年の6月議会において、寺尾議員の質問に対して、本市としましても従来より生活保護の申請は国民の権利であると認識していますとの保健福祉長寿局長の答弁がありました。昨日の本会議でも、創生静岡の長沼議員が触れておりましたけれども、コロナ禍の下、生活に困窮する市民が増える中で、改めて今こそ国民の権利である生活保護制度が市民にしっかり周知され、必要な市民への制度活用が図られなければならないと考えます。そのためにも市民に対して明確なメッセージを発信することが求められるのではないでしょうか。市民がためらわず生活保護を申請するための方策について伺いたいと思います。
 まず、市民への制度周知についてですが、厚生労働省のホームページの改善に伴い、各政令市のホームページも改善されてきました。全20政令市のホームページを確認しましたが、今年10月時点では、14の政令市が憲法で保障された国民の権利であることを明示しています。札幌市では、ホームページの表記も厚労省と同様に国民の権利であるとことを大きくはっきり明示しています。また、生活保護の申請は国民の権利です、こういったポスターを10の区民センター、5か所の税務事務所あるいは水道局へ掲出し、また、生活保護のしおりにも明示しているところであります。静岡市のホームページにはそうした記載がなく、保護を受ける前に自分でこのことに努力してくださいと、生活保護を受けるためのいろいろな条件が列記され、これらを様々努力してもなお生活できないときに、初めて生活保護を受けることができますというような表記から始まっております。生活保護をためらわせるこうした記載は、厚労省のホームページと比べてみますと、その印象が大きく異なっているというのが現実であります。
 そこで、伺います。本市として生活保護をためらう人のために、生活保護の申請は国民の権利であることを広く市民に周知することが必要であると考えますがいかがか、伺いたいと思います。
 以上1回目の質問です。

◯保健福祉長寿局長(杉山友章)
 高齢者の虐待防止の取組についての3点の御質問と、生活保護行政についての御質問にお答えします。
 まず、高齢者虐待の現状についてですが、令和2年度に福祉事務所等で受理した高齢者虐待の通報件数は186件で、元年度に比べ28件増加しております。増加の理由は、元年度に市の高齢者虐待防止マニュアルを改訂し、軽微な虐待疑いでも、通報を求めるようにしたためです。この通報件数のうち、福祉事務所で虐待と判断した件数は、令和2年度が59件、前年度が57件で、ここ数年横ばい傾向となっています。
 次に、通報者の割合は、ケアマネジャーが最も多く、全体の4割を占め、警察、介護保険事業所、家族・親族、近隣住民等の順になっています。虐待の種別としては、身体的虐待が最も多く、全体の7割を占め、心理的虐待、介護放棄、経済的虐待の順になっております。また、虐待の発生要因は、介護疲れ・介護ストレスが9割弱となっております。
 次に、虐待通報を受けた場合の対応についてですが、通報があった場合、福祉事務所の保健師や社会福祉士等の専門職が地域包括支援センター等の職員と連携して、家庭訪問や関係機関への聞き取り等により、事実確認を行います。そして、高齢者の安全確保のため、介護者との緊急の分離が必要となる場合には、特別養護老人ホーム等での一時保護を実施します。また、高齢者の介護について家族間の調整を行い、個々の状況に応じて介護サービスにつなげるなど必要な支援を行います。さらに、介護者に対しても、介護者同士の情報交換の場である家族会等への参加を勧めたり、介護技術に関する情報提供や適切な相談窓口への紹介等を行い、その後も継続的に見守りを行うなど、丁寧な相談支援を行っております。
 次に、高齢者虐待防止のため市民に対してどのような啓発活動を行っているかについてですが、高齢者虐待の発生要因の9割弱が介護疲れや介護ストレスとなっているため、介護の負担を軽減するための介護サービスや相談窓口につなげたり、高齢者の特性や認知症等の病気の特性を介護者に理解してもらうことで、高齢者虐待の防止につながるものと考えます。そのため、高齢者の特性や認知症等の病気の特性と、それぞれの特性に応じた対応方法を紹介する市民向けの講演会や講座を開催するほか、介護サービスや相談窓口の情報も盛り込んだ啓発用パンフレットを作成し、福祉事務所や地域包括支援センター、講演会や講座等で配布するなど、市民に対する啓発に努めています。また、広報紙静岡気分12月号において、高齢者虐待の特集記事により高齢者虐待の防止について周知したところです。
 今後も市民への周知、啓発活動を積極的に行い、虐待防止の意識を高めるよう努めてまいります。
 最後に、生活保護の申請は国民の権利であることの市民への周知についてですが、生活保護を申請する方の心理的負担の軽減を図るため、ホームページや生活保護制度のパンフレットに、生活保護の申請は国民の権利であることを表示するなど、広く周知してまいります。
  

◯市川 正
 ありがとうございました。2回目の質問になります。
 生活保護の申請は国民の権利であるということを市のホームページあるいは生活保護のしおりにはっきり明示するという御答弁をいただきました。できるだけ早く市のホームページを厚労省並みに変更する、あるいは広報でお知らせするとともに、できれば窓口をはじめ公共施設に、保護は権利ですというポスターも作成して貼り出していただければと思います。よろしくお願いしたいと思います。
 生活保護行政については、市民がためらわず生活保護を申請するための方策について、生活保護の利用をためらう大きな理由が、親族に扶養照会の問合せが行くことではないでしょうか。日本共産党の小池 晃参議院議員の国会質問への答弁の中でも、厚労大臣が扶養照会は義務ではないことを何度も何度も明言しました。2月26日付で厚労省から発出された扶養照会に関する通知で、DV該当者には照会してはならないこと、あるいは扶養義務者であっても10年以上交流がない場合には照会しなくていいこと、このような重要な変更がなされております。
 そこで、生活保護の申請において心理的負担となるのが扶養照会であると考えます。政府答弁や国の通知を受け、どのような点に留意して事務を実施していくのか伺って2回目の質問といたします。

◯保健福祉長寿局長(杉山友章)
 生活保護の扶養照会に係る留意点と実施についてですが、本年2月の厚生労働省事務連絡において、生活保護の扶養照会について、扶養義務の履行が期待できないと判断される者には、直接の照会を行わないとする取扱いが改めて示されました。具体的には、例えば70歳以上の高齢者や施設入所者などで、金銭面で扶養が期待できない者や10年以上音信不通であることなど、要保護者の生活歴から明らかに扶養ができない者、さらには虐待の経緯があり、要保護者の自立を阻害することになると認められる者等には、直接の照会は行わないとするものです。
 このため、こうした取扱いに留意し、要保護者の相談に当たっては、一人一人に寄り添い丁寧に生活歴を聞き取ることで、適正な扶養照会の事務を実施するとともに、市民に広く周知し、生活保護を必要とされる方がためらうことなく申請できるように努めてまいります。
  

◯市川 正
 ありがとうございました。3回目は要望・意見です。
 養介護施設での虐待を防止するには、ここで働く人の待遇を改善し、ゆとりある介護ができるようにすることも欠かせないことではあります。厚労省通知でも、養介護施設での虐待の発生要因は、仕事に対する教育、知識、介護技術等に関する問題や、職員のストレスによるもの、人員不足や配置によるものなどが多いとされています。セミナーを充実させていくとのお答えもありましたが、当事者同士の経験交流や地域づくりを進める、こういったことから必要な学習会についても充実されるよう取り組んでいただくことを要望いたします。
 また、政府の介護報酬抑制路線、こういったことで多くの事業所は経営難に苦しみ、介護分野は低賃金の非正規労働が主流となっているというのが現実です。介護報酬を引き上げながら、事業所の雇用管理や法令遵守を図り、正規化、常勤化の流れをつくっていくこと、サービス残業の根絶、長時間労働の是正を進めること、また、高齢者の尊厳を大切にした介護を行うためにも、介護職の人員配置基準を改善し、介護報酬で評価することが必要となっております。現在、利用者3人につき職員1人となっている実態を、原則2対1に引き上げるなどの改善が必要ではないかと考えます。
 また、生活保護は国民の権利であるという観点から答弁をいただいたわけですけれども、生活保護行政を市民本位できめ細かく進めるためには、執行する側の体制の充実がどうしても欠かせません。この前の内田議員の質問で、生活保護ケースワーカーの1人当たりの件数が相当多くなっているということが明らかになったんですけれども、ここの改善を何としても早めに進めていただかないと、小手先の対応ではいずれ行き詰まってしまいますので、国民に寄り添ったきめ細かい行政を進めるため担当職員の増員を求めて、質問を終わります。ありがとうございました。