大規模災害対策に対応する静岡市の防災力について

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◯12番(寺尾 昭君) 災害は、忘れる間もなくやってくるという、最近は大規模な災害が連続して日本列島を襲っております。
 私たちの静岡には、近年大災害と呼ばれるものはありませんが、これは、一時の幸運だというほかはありません。
 東海地方で巨大地震が起こる確率は、今後30年間で70から80%と言われております。今すぐに起きてもおかしくないと言われております。
 静岡県は、第4次地震被害想定を発表、それによりますと、静岡市全体で東海・東南海・南海地震などレベル1の地震、津波と南海トラフ巨大地震のレベル2の地震、津波の場合に分けて、それをさまざまな条件下で想定をしております。震度階級別の面積集計、最高で1,410平方キロメートル、液状化危険度別の面積集計で最高では1,410平方キロメートル、建物の全壊数、最高で9万3,000棟、死者数は最高で1万5,300人、避難者数は最高で33万6,000人余りということで例示をしているわけであります。
 これらの災害に対し、本市では、さまざまな地震防災計画を策定しているわけですが、大規模災害に対して静岡市の防災力はどのようになっているのか、幾つかの角度から伺っていきます。
 ことしは、台風の当たり年でした。9月末に来襲した台風24号の際には、市内各地域に避難準備・高齢者等避難開始、避難勧告が出されたわけであります。
 しかし、実際に避難した市民は少なかったという状況だったんです。この避難準備や避難勧告に対する市民の受けとめは必ずしもかみ合っているとは言えません。また出された地域が広域のため、自分の住んでいるところが該当するのか当惑したとの意見も少なくないわけであります。
 どのような場合に自分の住んでいるところが対象になるのか、どんな事態になったときに避難行動に移るのか、実効あるものにするために市民が判断できる基準を示していくということが必要ではないでしょうか。
 そこで、質問ですが、この風水害時における避難の呼びかけの基準はあるのかどうなのか、その点をお聞きいたします。
 ハザードマップについてです。
 最近の豪雨災害は、まさに一定の狭い地域に想定外の被害をもたらしております。これまでの常識をはるかに超えた雨量により大水害や土砂災害が発生し、短時間で避難不可能な事態になっている。ハザードマップはこのような状況にも応じたものにしていく必要があるんではないでしょうか。
 そこで、これらに対応できるようなハザードマップの整備状況について伺いたいと思います。
 次に、津波避難対策として、これまでの避難タワーの設置、避難ビルの指定を進めてきているわけです。命山の整備、高速道路や高架橋の上を避難場所としたというところもあります。津波に対する避難対策は格段に向上したと言えるかと思いますが、地域によって配置にばらつきがあること、住民の数と避難施設の収容数とのバランスがとれているのか、避難ビルがいざというときに確実に使用できるような状態になっているのか、そのための日常的な点検の必要性などの課題もあるわけであります。
 この点から、津波避難ビルの指定状況と課題について伺っておきます。
 次に、安倍川の堆積土砂による河床上昇の問題です。
 安倍川沿いの市民から、河床の上昇は水位の上昇につながる、豪雨の際には水が堤防を乗り越えてこないか、堤防決壊につながらないか大変心配だ、堆積土砂を何とかしてほしい、こういう不安の声が寄せられております。
 安倍川の管理は、御承知のように国、あるいは上流部分が県ということで、静岡市が直接処理することはできないわけでありますけれども、市民の安全を確保するためには当然無関係では済まされません。
 そのためには、国や県を含めた協議を積極的に進めていく必要があります。また今後、市としてどのような対応をしていくのかが課題と言えるわけであります。
 そこで、安倍川河床の堆積土砂の現状について伺いたいと思います。
 災害に襲われたとき、地域において避難や救助の最前線に立って役割を果たすのは、消防団員ということが言えるわけであります。使命感や責任感が強く、地域住民とも日ごろから顔なじみになっており、頼りになる存在であります。
 ところが、東日本大震災では、消防団員、何と254人が命を失うという事態に至っております。公的な職員では、自治体職員も390人が命を失っておりますけれども、その多くが避難支援などの活動中に津波に巻き込まれた方々だったということです。
 消防団員の命を守ることは、その後の復旧復興の役割を担う方々という点からも、非常に重要であると思います。
 そこで、質問ですが、防災対策を進める上での消防団員の命を守るための対策はどのようになっているのか、伺いたいと思います。
 1回目です。
◯危機管理統括監(海野剛幹君) 初めに、風水害時における避難の呼びかけの基準についてでございます。
 本市における避難準備・高齢者等避難開始の情報を発表する基準としましては、土砂災害や浸水のおそれが見込まれる状況で、気象情報や河川の洪水予報をもとに発表することとしております。
 なお、避難行動を開始する時間帯が夜間にかかるおそれがある場合は、日没前に避難行動ができるよう早目に発表いたします。
 さらに、避難勧告や指示の基準としましては、大雨警報が発表されている状況で、県と気象台が共同で発表する土砂災害警戒情報や河川の水位情報をもとに地域を限定して避難を勧告し、災害発生の切迫性が高まった場合には避難の指示をすることとしております。
 次に、ハザードマップの整備状況についてでございます。
 近年の全国各地で発生する甚大な水害により、水防行政を取り巻く環境が大きく変化しております。平成27年の関東・東北豪雨災害を契機に逃げ遅れゼロなどを目標に、堤防などの施設では守り切れない大洪水は必ず発生するものへと意識を変革し、社会全体で洪水に備える水防災意識社会再構築ビジョンが国から発表され、このソフト対策として想定し得る最大規模の洪水に備える避難情報などをまとめた洪水ハザードマップを作成することになりました。
 これを受けまして、平成29年3月に、国管理河川である安倍川・藁科川のハザードマップを作成し、同年8月には富士川のハザードマップを作成し、流域全戸に配布いたしました。
 ことしの5月には、静岡県から巴川・長尾川における想定最大規模の浸水域が示されたことから流域の自治会や水防団を対象にワークショップを開催し、その意見を反映させたハザードマップを作成しているところです。
 このハザードマップは、A1サイズのカラー刷りで見やすさを考慮したハザードマップとなっています。特に迅速かつ円滑な避難行動につながるよう、避難の呼びかけに対してとるべき避難行動を図解で掲載します。
 本年度中に流域全戸に配布するほか、ホームページ上でも閲覧でき、図形や文字など自分に必要な情報を加えてマイハザードマップをウエブ上で作成する機能も追加しております。
 これらにより、地域に想定されている災害リスクをみずから認識いただくことで防災意識の向上につなげてまいりたいと考えております。
 なお、平成30年度中に、丸子川、興津川、庵原川、山切川の想定浸水域が県から示される予定でございます。同様に進めてまいります。
 次に、津波避難ビルの指定状況と課題についてでございます。
 東日本大震災当時、本市が指定する津波避難ビルの数は57施設であったものが、防災意識も高まり、現在では147施設を指定しております。また市の指定した津波避難ビル以外にも個々に自治会や町内会がビルの所有者の了承をいただき、そこを避難場所としているビルも数多くあります。
 市では、できる限り多くの津波避難ビルを指定していくよう努めておりますが、施設のセキュリティーなどの問題や対象となる浸水区域内の対象ビルの減少により、年々新たな津波避難ビルの指定は難しい状況になっております。
 このため、本市では、津波避難ビル整備事業として避難者の安全を確保するための外階段や屋上に手すりを設置する整備などに対しまして、上限1,000万円の補助金を助成する制度を設けております。この制度のさらなる周知を進めるとともに、より多くの避難場所の確保に取り組んでまいります。
◯建設局長(伊東正高君) 私のほうからは、安倍川の河床上昇に関する対応についてお答えいたします。
 安倍川では、上流の大谷崩れなどの崩壊地からの土砂流出により、土砂災害や河床上昇など防災上の課題があります。
 国では、全国に先駆け、安倍川から世界遺産の構成要素である三保松原の三保半島に至るまでの静岡・清水海岸への土砂移動を管理するため、安倍川総合土砂管理計画を平成25年に策定し、計画的な河道掘削とモニタリングを毎年行いながら同計画のフォローアップ委員会で土砂移動の検証を行い、以降の対策に反映しております。
 このことから、今後も、河床上昇に対する適切な河道管理が継続的に行われていくと認識しており、流域自治体として安倍川の治水事業の充実を国へ要望するなどの取り組みを続けていきたいと考えております。
◯消防局長(村田吉伸君) 私からは、消防団員の命を守るための対策についてお答えいたします。
 東日本大震災においては、強い使命感のもと住民の避難誘導に当たった多くの消防団員のとうとい命が失われました。
 本市としては、発生が想定される南海トラフ巨大地震や各地で多発している風水害に対し、何よりも消防団員の命を守り、消防団が持つ大きな地域防災力を維持するため、3つの対策を講じております。
 1つ目は、装備の充実強化です。
 これは、消防団を中核とした地域防災力の充実強化に関する法律の施行を受け、活動中の消防団員に危険情報を素早く伝達し共有できるよう携帯無線機を増強しました。また防塵マスクや救命胴衣などを全消防団員に配備し、安全の確保を図りました。
 2つ目は、地震発生時の活動マニュアルの見直しです。
 内容は、津波浸水想定区域では避難広報活動をしながら、消防団員みずからが津波到達予想時間を考慮した退避行動をとることなど、安全の確保を図りました。
 3つ目は、実技中心の研修会の開催です。
 これは、消防署と合同で救助資器材の安全な取り扱い方法などを習得し、安全知識の向上を図っています。
 今後は、イラストシートを用いて活動現場に潜むさまざまな危険を見抜く危険予知トレーニングなどを導入し、一人一人の安全意識の向上を図り、消防団員の命を守る対策をさらに進めてまいります。
  〔12番寺尾 昭君登壇〕

◯12番(寺尾 昭君) 2回目です。
 12月2日、静岡県内各地で一斉に地域防災訓練が行われました。全県の参加者は68万人だったということです。静岡市ではどのくらいあったんでしょうかしら。それぞれの地域でその地域に適合した訓練が行われたと報道されております。
 私の住む地域でも、自治会で組織をしております自主防災会が中心となって自治会役員がおのおのの任務を分担し、地元の消防団の皆さんも協力して訓練が行われました。多くの住民の皆さん、中高生も、私の行った会場では150人ほどの参加が見られました。私も、実は防災委員の1人なんですけれども、町内の方々と一緒に訓練に参加をいたしまして、消火器の使い方、地下の貯水槽からの水道水の供給、倒壊家屋から助けるためのチェーンソーの使い方、けが人運搬のためのリヤカーの組み立て、災害用簡易トイレの組み立てなど一緒にやりまして、参加者も近年、非常に真剣なまなざしが強まってきたというふうに思っております。
 これらの訓練が、いざ発災というときに役に立つのかというような声も実はあるわけでありますが、しかし、みんなが協力し合って取り組むこと自体にやっぱり意味があるんではないかと感じたところであります。
 災害対策基本法は、国と自治体の責務はうたわれていますが、地域として市民の役割というところまでは規定されておりません。現在、県内には5,440の自主防災組織があるそうで、ほぼ、100%の組織率だということです。私たちにはある面では当たり前のような感じがするんですが、これだけ組織されているのは、実はほかの県にはないようです。
 自主防災組織は、県や市町と協力し地域の防災はみずからの手で担うという意欲を持って、防災資機材の整備、消火、避難、救出、救護、炊き出し、さらに避難所の運営も地域の自主防災組織が行うことになっております。
 毎年の防災訓練が、いざ本番と、これを想定して役に立つ内容にしようとの努力が続けられております。特に、ことしの訓練はこの間の連続する災害を見聞きしてきた皆さんが、そういう状況があって一段と真剣さが加わった訓練だったと感じたわけです。ことしの防災訓練についてのまとめはまだできていないと思いますけれども、これまでの地域防災訓練に取り組んできた経緯から、訓練の内容や課題、今後についてどのように考えているのか、伺います。
 災害対策は、あらゆる事態を想定して、市民の生活実態に立脚した対策が必要です。住民の皆さんには食料や水の備蓄、住宅の耐震補強、家具の倒壊防止、避難所などへの避難路の確保、隣近所との協力連携など、日ごろから備えをしていくことが必要だと思うのです。
 それには、何といっても市民への周知啓発ということがとても大事だというふうに思うんですが、この辺をどう進めていくのか伺い、2回目とします。
◯危機管理統括監(海野剛幹君) 初めに、地域防災訓練の内容や課題と今後についてでございます。
 市民一人一人の防災意識の高揚による減災の実現と地域被害想定に応じた災害対応力の確立を目的に、毎年、自主防災組織を中心として地域に即した内容で地域防災訓練を実施しております。
 例年、地域防災訓練は、都市部を中心に働き盛り世代の男性が少ないなど、参加する年代の偏りが課題となっております。
 市民一人一人が地域防災の主体であることから、今後、訓練内容を見直すことや自覚を促すことで、各世代がそれぞれの役割を持ち、訓練に参加する仕組みづくりを今後とも進めてまいります。
 地域内の多くの方々が参加して訓練を重ねることで、有事の際の実効性が担保され、ひいては地域の防災力向上だけでなく地域コミュニティの醸成にもつながっていくものと考えております。
 次に、今後の市民への啓発をどう進めるかについてでございます。
 平成27年9月の関東・東北豪雨や平成30年7月の西日本豪雨では、あらかじめハザードマップが配布され、避難の呼びかけが行われていたにもかかわらず、河川の氾濫域に多数の住民が取り残されるという事態がありました。そうならないためには、自助の1つとして、一人一人がハザードマップなどにより地域に想定されている災害を正しく理解していただき、避難の呼びかけに対して自分はどのように行動するのかを平時からシミュレーションしていくことが重要です。
 共助としては、避難情報が発表された際に、高齢者の方などが避難行動を速やかに開始できるよう隣近所等が声をかけ、必要に応じた避難支援ができることが基本となります。義務感からではなくコミュニティとして自発的にこのような関係が構築されることは、実効性の点からも望ましいと考えております。
 今後とも、本市としましては、市政出前講座、地区防災会議や自主防災連絡会、また各種パンフレット、ハザードマップの配布を通じて、さらなる市民への啓発を進めてまいります。

◯12番(寺尾 昭君) なかなか答えにくいというようなこともあって、私の考えたところの全てが今までの答弁の中には含まれていないわけで、まだ幾つか課題があると思います。その課題について、意見・要望を含めて提起をしたいと思います。
 まず、木造住宅の耐震補強助成は、市民の関心も高く助成を希望する市民が多くて予算確保が大変だという状況もあると聞いております。
 これは、ぜひ今後も県への要望も含めて、さらに強化をしていってほしいと思っております。
 一方、家具の倒壊防止対策がなかなか市民のところに広まっていない。助成があるんだけれども、市民に周知されていないという状況があるということです。このことは、結局、市民がまだ知らないということになるわけでありまして、やっぱり、木造住宅の耐震補強とあわせて、家具の倒壊防止の助成もあるんだということを、もっとしっかり周知を図っていただきたいと思います。
 安竹議員の質問に対して、急傾斜地の崩壊対策について市内の対象が654カ所、うち対策が施されているのが300カ所程度という話がありました。毎年、行われているのは数カ所、10カ所にも満たないということでありまして、残り約350カ所を、仮に毎年10カ所やったところで約36年かかるということになってしまうわけです。これでは、対策という点ではかなり間尺に合わないことになると思うんです。やっぱり急傾斜地の崩壊対策についても進むように、県、国にも急いで働きかけていただきたいと思います。
 東日本大震災では、自治体職員も390人が命を落としたということで、先ほど申し上げましたけれども、この10月に議員団で陸前高田市を訪れたわけであります。全国から職員を派遣していただいて大変感謝しておりますという話もあったわけですが、しかし、この職員の方は仲間がいなくなったショックと復旧、復興にも大変大きな影響があったと語っておりました。
 自治体職員の命を守るということも大事でありますし、もう1つは、職員の削減をするということがこれまでずっと続いてきておりますので、これもぜひ、やめてほしいということも含めて、意見・要望として申し上げておきたいと思います。ありがとうございました。