中小企業振興条例を真に活きた条例にするために大規模な実態調査条例の検討の設置を

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11番(杉本 護君) 日本共産党の杉本 護です。
 通告に従って質問します。
 今回のテーマは、地域経済の振興策についてです。
 初めに、中小企業振興条例の制定に関して質問をします。
 本市は、ことし2月議会で、振興条例を今年度に制定すると明言しました。振興条例の制定は、日本共産党市議団が議会で最も多く取り上げたものであり、長年要求してきたことでもあり、歓迎するものです。つくるからには、活用しやすい実効性のある生きた条例にしていただきたいと思っています。
 さて、昨年6月議会で、私が中小企業の存在意義について本市の認識をただしたところ、事業所数や従業員数など数の上でも雇用を生み出し、地域経済を支えている基幹産業を支えるサプライヤーであり、地場産業の担い手としての歴史と伝統を守っている、経済活動以外でも地域社会に貢献していると、その存在を高く評価しました。
 一方、中小企業の支援策については、3次総においても中小企業の振興を重要な政策の1つに掲げ、創業期から成長、定着期といった企業のステージに応じた支援を行い、販路開拓への支援、新製品、新分野進出への支援、経営基盤、競争力の強化に取り組んでいると、既に中小企業の支援は十分に行っているかのような姿勢を示していました。
 そして、条例制定については必要性や有効性について整理しているとの回答にとどまっていました。ところが、私にとっては急転直下、本市は条例制定に踏み出しました。
 そこで、1つ目の質問として、どのような経緯で本年度条例制定をする考えに至ったのか、お聞きします。
 次に、小規模企業振興基本法との関係でお聞きします。
 この基本法は、従業員5人以下の小企業者が多数を占める小規模企業への支援を国や自治体の責務として明確化したものです。振興条例にもこの基本法はしっかりと位置づけられるべきだと思います。
 その上で、本年2月の議会答弁を振り返ると、振興条例を制定する目的として、新たな取り組みに挑戦する中小企業への支援を強力に進めていく原動力とし、静岡発の商品開発に挑戦し、オンリーワンを目指すなど、頑張る中小企業を応援すると言っています。
 言葉尻を捉えるわけではありませんが、このように言われれば、新たなものに挑戦するような意欲のある中小企業は応援するが、高齢化あるいは後継者がいない、今の商売を続けるのが精いっぱい、このような中小零細企業は振興条例の蚊帳の外にいるように聞こえます。むしろ、そうした中小零細企業こそ振興条例で市のやる気を示し、そして、具体的な政策で支援すべき対象ではないでしょうか。
 そこで、2つ目の質問は、市として、市内の中小企業者、特に従業員5人以下の小企業者の経営課題についてどのように認識しているのか、お聞きします。
 3つ目の質問は、振興条例制定に向けての取り組み方についてです。
 本年4月に行った市内の経済団体へのアンケート調査において、どのような意見が出されたのか、また、今後、条例制定に向けての意見聴取をどのように行っていくのか、お答えください。
 以上で、1回目の質問とします。

◯経済局長(池田文信君) まず、中小企業振興条例を制定する考えに至るまでの経緯についてですが、本市では、中小企業者は雇用を生み出し、地域経済を支えるだけでなく、地元に密着した存在としてまちづくりや地域社会に貢献する大切な存在であるとの認識のもと、これまで条例の必要性等について検討を重ねてまいりました。
 このような中、平成29年10月の静岡市創生推進会議において、中小企業者への支援として、創業時のみならず事業の継続や拡大の節目となる3年目から5年目の支援の必要性など、意欲ある中小企業者への支援の拡充に関する多くの意見が出され、本市においてもその必要性を強く感じたところです。
 また、平成29年12月には、国が地域経済の大勢を占める中小企業者に対する支援として、新しい経済政策パッケージを公表しました。本市としてはこれを好機と捉え、中小企業・小規模事業者等の生産性革命の推進を図るため、平成30年から3年間、生産性向上のための設備投資に対する固定資産税をゼロとする措置を含む新たな中小企業支援策に取り組むこととしました。
 こうしたことを踏まえ、中小企業者の自助努力のみならず、行政や産業支援機関から市民に至るまで、オール静岡による支援体制とともに、中小企業者の育成、成長に向けた支援策を進める原動力が必要であるという認識をより一層強くしたことから、中小企業振興条例を制定する考えに至りました。
 次に、小企業者の経営課題への認識、経済団体へのアンケート調査での意見及び今後の意見聴取についてお答えします。
 本年4月、条例の制定に向けて、静岡商工会議所や静岡市清水商工会など、小企業者を会員に含む市内の8つの経済団体に対して、中小企業、小規模企業の経営課題や条例に盛り込むべきものに関するアンケート調査を行いました。
 まず、経営課題につきましては、このアンケートの中で人材育成や人材の確保、事業承継、設備の更新・増強が挙げられました。実際に、市内企業の現場からは、人材を確保できないなどの人材不足に関する悩みや後継者が得られないといった事業承継への不安、また、売り上げが伸びない、設備の老朽化で生産性が上がらず、受注機会を逸しているといった声が聞こえてきます。したがいまして、これらのことが小企業者にとって経営上の喫緊の課題であると認識しています。
 また、このアンケートでは、行政、経済団体、産業支援機関、市民等の役割や責務、具体的な中小企業支援策を条例に盛り込んでほしいという意見がありました。
 今後は、このアンケート調査の結果や現場の声も参考に条例の骨子を整理し、企業や経済団体、産業支援機関などに対するヒアリングやパブリックコメントなどを行って意見を聴取し、条例案を作成していきたいと考えております。
  〔11番杉本 護君登壇〕

◯11番(杉本 護君) 答弁ありがとうございました。
 今の答弁で、本市は小規模企業のことを一般的にしか見ていないことがよくわかりました。
 列挙された経営課題を見ると、主に製造業に関することが中心に私は感じました。確かにものづくりは大切な産業であり、重要な視点だと思います。しかし、本市の小企業で多い業種は何かというと、経済センサス基礎調査の中分類では、1位が飲食店、2位が洗濯・理容・美容・浴場業、3位が不動産貸付管理業です。この後、その他の小売業、飲食料品小売業と続いています。そして、ここまでを合わせて4割以上を占めています。
 こうしたさまざまな業種の問題を個別具体的につかむことが必要ではないでしょうか。そして、条例制定の取り組み方も、私には本気度がみじんも感じられませんでした。この点を指摘し、振興条例制定の取り組みについての質問を続けます。
 私は昨年、観光文化経済委員会の視察で、松山市の中小企業振興基本条例の取り組みを学んできました。その中で、松山市は振興条例を制定するに当たり、市内約3,500社の中小企業を対象に実態調査を行い、経営実態や要望をリアルにつかみました。その上で、有識者による検討委員会を立ち上げ、会議を5回重ねて意見を集約、そのほか労働団体などの関係機関からも意見を聞き、それぞれが担うべき役割を整理、検討しています。
 松山市の条例では、中小企業者自身の努力はもちろん、中小企業関係団体や大企業者、そして金融機関の役割、学校の実質的な努力、市民の理解及び協力などをうたっています。それらを実効性のあるものにするには、そうした関係の方々に検討段階から参画してもらい、一緒に議論することが重要とのことでした。私もそのように思っています。
 さらに、ことし5月28日付の全国商工新聞が奈良県広陵町の中小企業・小規模企業等振興条例制定に向けた取り組みを紹介しています。ここでも条例制定の検討会議を設置し、そのもとで実態調査を行っています。人口3万5,000人の町ですが、初めから町内全ての事業所を対象として、855事業所に対しA4判7ページに及ぶアンケート調査を行い、回収は556事業所で全事業所の65%から回答を得ています。本市の人口比でいえば、1万6,000事業所規模の調査です。アンケートの質問項目を同友会や商工会の方々を初めみんなで知恵を出し合ったことで、一体感が生まれたというふうに言っています。
 そして、この大規模なアンケートでわかったのは、中小企業への支援制度が行政の一方的な片思いだった、事業者の願いとかみ合っていなかった、そのように地域振興課の課長さんが語っています。
 もう少し具体的に言いますと、広陵町は靴下生産日本一のまちです。そうしたことから、町は事業者に対して独自ブランド化を提案したそうです。ところが、事業者の大半は他社のブランド製品を製造していて、自社名を出せないOEM製造とのことでした。メーカーありきが今の靴下製造で、自分たちの独自ブランド化は難しいとの声が返ってきたそうです。
 そこで、1つ目の質問は、実効性のある条例を制定するためには、中小企業などの要望や課題などを把握するための大規模な実態調査を行う必要があると考えますが、市の考えをお聞かせください。
 2つ目の質問として、条例を市民の力でつくり上げるために、関係する業界団体や市民が参加する検討会などを設置する必要があると考えますが、これについてもお答えください。
 次に、振興条例が制定された後についても考えたいと思います。条例は理念や目的、責務、努力などがうたわれ、具体的な施策が書かれているわけではありません。ですから、当然、条例の制定後は、条例の理念や目的に沿って具体的な施策の検討が必要になります。
 市が条例を制定して中小企業の振興を図るわけですから、単なる一部局の施策にとどまるものではないはずです。さまざまな部局にまたがって、まさにオール静岡で中小企業を応援することにならなければなりません。
 そこで、3つ目の質問は、条例制定後、条例に基づき中小企業などの振興支援策を検討、提言する会議を設置する必要があると考えますがどうでしょうか、お答えください。
 さて、ここまでは振興条例制定についての質問をしてきましたが、次に、地域経済を循環する取り組みについて質問します。
 よく地域循環型経済という言葉を耳にします。地域を人間にたとえるなら、地域循環は血液の循環です。この血液がしっかりと循環しなければ、人の体は衰退します。地域も同じです。元気な地域をつくるには、地域循環型経済が重要な役割を担っています。
 ある大学教授は、地域循環には3つのパターンがあると言っています。その1つが地域の経済循環や住民福祉の向上のために自治体が税金を支出する、そのことで地域が活性化し、住民生活も活性化して税源が育ち、税収として自治体に戻ってくる。こういった公共と民間の循環です。
 そこで、公共と民間の循環の具体的な施策として、住宅リフォーム助成制度及び店舗リニューアル助成制度の創設を提案します。
 これは、昨年の6月議会でも創設を求めましたが、そのとき当局は、経済対策のみを目的として住宅や店舗のリフォームに関する助成制度を創設する考えはないときっぱり否定されました。その後も、この制度については余り調査研究はされていないように思います。
 お手元の資料にありますように、全国商工新聞の調査では、2017年度中の実施自治体で、住宅リフォーム助成は573自治体、店舗リニューアル助成は107自治体になっています。掛川市は申し込み期間が1週間程度と短期間ですが、ことしも200件を超える申請があり、既に締め切られているほど好評です。店舗のリニューアル助成は2年間で2倍にふえています。この制度が歓迎されているあかしではないでしょうか。グローバルな社会、地産地消、地域循環型経済は、経済の外的影響を最小限にして、持続可能な地域をつくっていくと思います。
 そこで質問ですが、地域循環型の経済を振興するための施策について調査研究すべきと考えますが、市はどのようにお考えでしょうか。
 この点をお聞きして、2回目の質問とします。

◯経済局長(池田文信君) まず、大規模な実態調査や検討会議の設置の必要性についてですが、中小企業者の要望や課題等につきましては、静岡商工会議所や中小企業団体中央会などの経済団体、産業支援機関と日ごろからさまざまな事業の実施を通じて、情報共有を図るとともに意見交換を実施することで把握に努めているところです。さらには、四半期ごとに実施している景況調査や職員による年間1,000件を超える企業訪問によっても情報収集に努めています。
 また、市民意見の聴取につきましては、先ほども御答弁いたしましたとおり、パブリックコメントを通じて行っていきます。これらの意見等を踏まえ、条例制定を進めてまいります。
 次に、中小企業者の振興支援策を検討、提言する会議の設置についてですが、条例制定後の施策の実施に当たって、その施策を効果的に推進するため、中小企業者を支援するさまざまな関係者から意見を伺うことは重要であると考えています。
 具体的には、中小企業者を初め産業支援機関、大手事業所などが参画する静岡市産業活性化懇話会などの既存の会議や静岡商工会議所との行政連絡会など、さまざまな機会を捉えて意見を聴取していきたいと考えています。
 最後に、地域循環型の経済を振興するための施策についてですが、地域循環型経済につきましては、中小企業者が生産性を高めることにより、企業収益、所得分配を上げ、雇用環境を改善し、消費や投資を喚起するといったサイクルが地域に好循環を生み出すものであると考えております。
 住宅リフォーム助成制度等に対する考えは昨年6月議会での答弁のとおりですが、地域循環型の経済を踏まえた中小企業者への支援につきましては常に考えているところであります。したがいまして、中小企業・小規模事業者の振興に資する効果的な施策を今後も企業ニーズや経済動向を踏まえ、引き続き検討していきたいと考えております。
  〔11番杉本 護君登壇〕

◯11番(杉本 護君) 3回目は、意見・要望です。
 条例制定について本市は結局のところ、大規模な実態調査はやらない、検討会もつくらない、そして、制定後も小企業などが参加する新たな会議を設ける気持ちはないとの回答でした。しかし、これではだめだと思います。どうやって条例をつくる意義や市の本気度を広く深く市民に知らせていくのでしょうか。
 本市は、これまでも中小企業の振興にさまざま施策を打ってきたはずです。調査も商工会議所などを使ってやってきたはずです。しかし、中小企業の振興が十分ではない、このように思っているのではないでしょうか。そして、条例がないもとでの施策では不十分と判断したのではないでしょうか。そこで、オール静岡で支援する原動力として振興条例の制定に踏み切った。このように私は思っています。
 条例制定によってオール静岡をつくるのなら、その過程が重要です。このままつくってしまったら、単なる文章をつくるだけ、条例をつくるだけで、本当に生きた条例にはならないと私は思います。
 静岡市が足を運び、地域に行って中小企業者の生の声を聞いていく、そういう姿勢をしっかり示して、今までと違った大規模な調査をやっていく、このことが本当に静岡市も本気なんだ、俺たちも頑張ろう、そのように中小企業者は感じるのではないでしょうか。
 私はぜひ大規模な実態調査を行い、検討会を設置して、条例について議論していただきたい。これによって条例の制定がもしことしできなくて、来年、再来年と延びるなら、私はそれでもいいと思っています。ぜひ生きた条例にしていただきたいと思っています。
 地域循環型の経済対策について、住宅リフォームや店舗リニューアルへの助成制度を提案しましたが、具体的な回答はもらえませんでした。私の昨年の質問のときには、この質問に対して柱100本プレゼントのことを答えていましたが、今回はそうした循環型の……

◯副議長(望月俊明君) あと1分です。

◯11番(杉本 護君)(続) 事例すら語っていません。
 経済局がそういった案を持っていないんでしょうか。そうであれば、大変情けない話です。岩手県の宮古市が住宅リフォーム助成制度をつくるとき、住宅政策ではなく経済政策として切り口を変えて始めています。工事が始まれば近くの食堂がにぎわい、クリーニング屋の量がふえた。飲食店は畳屋のつけを払ってくれたなど、思いもかけないところに経済が波及したそうです。市内に住んでいる人が市内の中小業者に発注する、小規模事業者が元請けになれる、特別な条件をつけないことで売り手にも買い手にも喜ばれています。
 ぜひこういったことも調査研究をしていただき、施策として実現されることを心からお願いをし、私の質問を終わります。