生活保護と国民健康保険について質問

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DSC_0424◯26番(鈴木節子君) 皆さん、おはようございます。

通告に従い質問いたします。

政府が進めようとしている社会保障制度改革は、貧困や生活苦の解決を、国民の自己責任と家族による助け合いに押しつけ、社会保障を真っ向から解体しようとするものです。

今回の質問は、生活保護と国保について、憲法第25条を守る立場で質問いたします。

まず、生活保護についてです。各地の自治体が保護を申請した人の親族に対し、親族の扶養が保護の要件と誤認される書類を送付していた問題で、厚労省は是正を求める文書を出しました。本市の書類もお手元に配布した資料のとおり、扶養義務者による扶養は生活保護に優先して行われるものとされていると強調し、民法の直系血族及び兄弟姉妹は互いに扶養する義務があるとの規定まで引用しています。

また、親族には、勤務先、月収、資産、負債まで記入させる扶養届書を求めています。これには、親族の扶養が保護の要件ではないとの説明は一切なく、援助しなければ保護を受けられないような誤解を招く内容です。

質問の1点目に、厚労省は是正を求める文書を出しましたが、その内容はどういうものか。また、本市のこれまでの扶養照会手続は、窓口対応も含めて保護の受給権侵害に当たることはないか、見解を求めます。

2点目に、生活保護費の地方自治体の財政負担についてです。保護費の財源は、75%は国庫負担金です。25%は自治体の負担と捉えられ、そのため、本市も今年度は保護費が140億円を超えています。市の財政を大きく圧迫していると再三言われています。

しかし、地方財政法第10条では、25%分も地方交付税で財源が保障されることになっています。人口規模、単位費用、補正係数により計算式で算出された基準財政需要額が保護給付費、人件費に充当され、保護費の財源は保障されているのです。

問題は、充当された基準財政需要額と生活保護費に充てた一般財源とで、膨大な乖離、差額が生じていることです。生活保護が多い大阪市は、240億円も不足が生じ、自治体の持ち出しによる超過負担が生じています。反対に、基準財政需要額より保護費の実額が少なく、余剰が生じている自治体もあります。本市はどのような状況か、お聞きします。

次に、国民健康保険について。国保加入者は、高齢者や非正規労働者がふえていると同時に、社会保障を反映し、無所得や低所得層が増加しています。暮らしが維持できずに、生活保護受給に至る世帯も一定の割合でいるのではないかと思います。本市の国保から生活保護受給に移行する状況はどのようなものか、動向をお伺いいたします。

以上、1回目の質問です。

 

 

◯保健福祉局長(小野田 清君) 生活保護行政と国民健康保険の2点についてお答えいたします。

初めに、扶養照会等について厚生労働省が是正を求める文書を出したが、その内容と、照会手続は生活保護受給権の侵害に当たるのではないかとの質問でございます。

平成25年11月8日付の厚生労働省からの文書の内容については、一部の地方自治体で使用されている扶養照会書等において、照会先の扶養義務者に対し、扶養義務が保護を受けるための要件であると誤認させるおそれがある表現が使われていたため、その改善を求めるものでございました。

本市では、従来から生活保護法施行細則の準則で示された内容とほぼ同じ書式を用いて、適切に扶養義務の履行を確認する文書照会をしてきておりますので、生活保護の受給権の侵害に当たる手続は行っておりません。

次に、生活保護開始により資格喪失をした国民健康保険被保険者数の動向についてお答えいたします。

平成20年度以降に生活保護受給を理由に国民健康保険の資格を喪失した人数は、平成20年度で約600人、21年度から24年度において1,000人前後の推移となっております。

 

 

◯財政局長(河野太郎君) 生活保護費の財政負担についてお答えをいたします。

地方交付税における生活保護費の基準財政需要額は、市部人口を測定単位として生活保護受給者数等の状況を密度補正により考慮し、理論的に算定するものであり、実際に支出しようとする額を算定するものではございません。

お尋ねの地方交付税における生活保護費の基準財政需要額と決算統計における生活保護費の充当一般財源の差額でございますが、いずれの年度も基準財政需要額を上回っており、その差額は、平成20年度は約4億7,000万円、平成21年度は約7億3,000万円、平成22年度は約4億6,000万円、平成23年度は約13億2,000万円、平成24年度は約10億6,000万円となっております。

〔26番鈴木節子君登壇〕

 

 

◯26番(鈴木節子君) それでは、最初に生活保護についてですが、親族に出す扶養照会手続について、本市の答弁は保護受給権の侵害には当たらないということでした。生活保護法の規定は、親族による扶養を保護の前提とするものではなく、親族が扶養を拒んでも保護の判断には影響しないという意味ですが、本市はこの説明もしていません。

もともと照会手続書の見本は厚労省が作成したもので、厚労省からの是正を求める文書は、根本的に改善を指導するものにはなっていません。保護受給権を保障する立場になり切っていないことにも問題があります。

質問の1点目に、本市の親族への問い合わせも誤解を招く内容のままです。生活保護の受給権保障を貫くため、親族への問い合わせ書の様式や窓口対応をどのように改善するのか、伺います。

2点目に、保護費の財源について。基準財政需要額と一般財源の差が億単位で余剰が生じていることが判明しました。ここ数年、7億、4億、13億、10億と、基準財政需要額に算定された交付税額より生活保護費が少なく執行され、数年続けて他の事業に回されていることになります。基準財政需要額は単なる目安だという答弁だと思いますが、この国の計算式は一定の根拠ある計算によって支給されています。この余剰の要因は、扶助費の算定と実額との乖離か、または、福祉事務所の人件費の抑圧でしょうか。

生活保護受給が平成20年度比で1.5倍にふえ続け、貧困により保護を必要とする世帯が急増する社会情勢の中で、いかに憲法第25条の立場で最後のセーフティネットと言える保護行政を充実させていくかが、自治体の姿勢にかかっています。福祉施策に詳しい相談員やケースワーカーの補充で、窓口体制の拡充や保護受給者に寄り添った援助ができる体制整備などが求められています。

当局は、定員管理計画で人員を縛られていると言いますが、保護費として措置された額は他の施策に回されているのですから、まだ施策を拡充できる余地は十分にあると考えます。財源措置された額に見合う保護行政の拡充について見解を求めます。

3点目に、生活困窮者自立支援法が国会で審議されていますが、この目的は、生活保護の前に就労を優先させ、保護が必要な人でも最低賃金の保障もない中間的就労を押しつけられ、生活保護から遠ざけられる危険性を含んでいます。この法が施行されても、要保護状態の人には保護の利用を拒否してはならず、受給権は優先し保障されるという認識か、確認の意味で伺います。

4点目に、生活困難者対応について。保護に至らない生活困窮世帯は、税金、国保料、水道料などの公共料金や市営住宅家賃などの滞納、多重債務、疾病の重症化、仕事につけないなど、暮らしのあらゆる分野で困難を抱えています。こういう方は、相談場所、救済制度、福祉制度も知らず、解決困難な事態がより深刻化、慢性化するケースがふえています。

生活困窮者自立支援法のモデル事業が全国で実施され、本市でも検討が始まったようですが、就職支援の域を出ていないように感じられます。生活困窮者自立支援法自体は、保護受給権の侵害のおそれなど問題をはらんでいますが、この法に捉われない困窮者に寄り添った事業展開で、貧困に陥っている方の早期支援、生活再建で貧困の連鎖から抜け出すために、行政として住宅、福祉、社会保障、医療、教育などの分野との連携を構築し、対応することが必要ではないか、その見解を求めます。

次に、国保について。毎年、国保から1,000人程度の方が要生活保護に至るほど、国保加入者は厳しい暮らしを強いられています。今年度国保料は、所得の2割を占める高負担で、政令市中2番目の高額です。限度をはるかに超えた負担を軽減するためには、一般会計からの繰り入れ増額は不可欠です。

先日、山根議員から紹介がありました、静岡女性の会の市長と語る会でも、女性の社会進出、介護、原発問題、教育など、市長とともに活発な討論があり、多いに盛り上がりました。市長、そうでしたね。

その中で、国保料の引き下げも大変強い要望が出されました。昨今、国保は社会保険だと、助け合いだから公費投入に頼るべきではないとの論調が始まっていますが、一般会計からの繰り入れがなければ成り立たないほど、国保は崩壊寸前です。本市の20億の繰り入れは、それでもまだ政令市平均以下です。国保は社会保障の立場から、また、低所得層が8割を占める国保には、一般会計のさらなる増額は必要と考えます。見解を伺います。

以上、2回目の質問です。

 

 

◯保健福祉局長(小野田 清君) 生活保護行政の何点かの質問にお答えいたします。

初めに、親族扶養が保護の要件とすることを誤りとした厚生労働省の是正措置を受け、照会書の様式や窓口対応をどのように改善するかにお答えいたします。

本市では、従来から適切な様式を用いて、扶養義務者に対して扶養が可能か、またはできないかの回答を求めております。

また、窓口対応では、生活保護を受ける権利を侵害することがないよう、十分な配慮をしております。窓口での対応の際には、より丁寧な説明に心がけ、扶養義務が保護を受けるための要件であると誤認されることがないよう努めてまいります。

次に、人員体制の充実や財源保障されている額に相当する生活保護行政を展開すべきではないかにお答えをいたします。

生活保護受給者の増加に伴い、平成20年度当初から本年9月まで、あわせて35人のケースワーカーを増員しており、平成24年度からは任期つき短時間勤務職員を採用し、体制整備に取り組んでおります。この任期つき短時間勤務職員は、幅広い年齢層にわたり、その中には民間企業の出身者や福祉関係の有資格者も含んでおります。

また、平成23年度から福祉行政に高い知識や意欲を有する福祉専門職の採用を開始し、平成25年度より生活保護担当課に配置している職員もおります。

さらに、面接相談や就労支援を専門に行う非常勤嘱託職員等も25人配置し、支援の充実を図っております。

特に、平成25年度からは、就労支援員の増員や、就労体験、職業訓練事業、就職先の確保のための補助事業など、就労による自立を支援する体制を強化しております。

今後も、これまでどおり保護を必要とする人には確実に保護を実施し、生活保護受給者にはより適切に対応できるよう、保護開始前の相談から受給中まで切れ目のないきめ細やかな支援が可能となる実施体制の底上げを図っていきたいと考えております。

次に、生活困窮者自立支援法が施行されても、生活保護の申請権は保障されるという認識でよいかとの御質問でございます。

生活困窮者自立支援法が施行されれば、平成27年度より生活保護に至る手前の方に対しても、これまで以上に自立に向けた支援を行うことになります。支援に当たっては、相談者の意思を尊重しながら、本人にとって最も望ましいと思われる支援を実施することになりますので、生活保護の申請を希望する方には、これまでどおり生活保護の相談窓口を案内し、申請いただくことになると考えております。

次に、生活困窮者自立支援法の施行に捉われず、生活困窮者の早期支援、生活再建関係機関との連携との御質問でございます。

生活保護に至る手前の方に対して、早期に支援を実施し生活を再建していただくことは、本人にとっても好ましいことであり、大切なことと考えます。また、生活困窮者は、失業や借金等、複合的な問題を抱えていることが多いため、実際の支援に当たっては、ハローワークや社会福祉協議会など庁外関係機関との連携が非常に重要になると認識しております。

最後の質問になりますが、負担の国民健康保険でございますが、保険料を引き下げるため、一般会計からの法定外繰り入れを増額する必要性があるのではないかとの御質問でございます。

国民健康保険事業は、被保険者の保険料を主として国庫負担金とその他の収入で賄うことが原則です。保険料率の算定につきましては、法令等に基づき、必要となる給付費を見込み、国の交付金等を差し引いた後、被保険者数、所得階層など、多くの要素を加え算出します。

平成26年度の保険料率につきましては、現在、給付費の推計等、算定作業に当たっているところであり、法定外繰り入れも含め、今後、算定作業を進め、静岡市国民健康保険運営協議会に審議をお願いしていくことになります。

〔26番鈴木節子君登壇〕

 

 

◯26番(鈴木節子君) 今、お答えいただきました。3回目ですけれども、生活保護は現在、全国で215万人が受給し、増加を続けています。その要因は、非正規雇用で働く労働者や、働いていても低所得層の増加、また、貧困の連鎖から抜け出せない層など、今の社会情勢を反映しています。

国は、保護基準引き下げを強行しました。さらに、親族の家計状況や勤務先などの調査を強めて扶養義務を強化し、水際作戦や門前払いにより保護が必要な人を締め出す違法を合法化しようとしています。

局長、今、お答えがありましたが、再度確認させていただきます。生活保護法の改悪が強行されようとしておりますが、親族による扶養が前提ではなく、扶養義務は強制しないという方針か、確認の意味で伺います。

2点目に、貧困の連鎖から抜け出し、生活を再建させるための相談体制について。今、孤独死など社会的孤立や貧困による経済的困窮に陥ったまま、生活の再建ができない人がふえています。滞納の督促状が何種類もたまり、多重債務も解決できず、病気が重症化しても病院に行く費用もないまま、解決しようという気力も失った方もいます。ようやく相談に行っても、行政の窓口は縦割り行政です。

例えば、滞納対策をとってみても、市営住宅、水道、福祉債権管理、納税課などはそれぞれ窓口で督促をし、払ってもらえればそれで接触の機会はありません。その方が抱える根本的な問題解決に導く相談体制ではありません。生活困窮に陥った方は、縦割りでは解決できないさまざまな問題を抱えています。どんな問題でも、行けばその場で相談できる、例えば、生活保護や医療、教育、福祉、住宅などの各部署と連携した困窮者の早期発見、早期支援、生活再建までかかわれる体制を構築し、総合相談窓口をつくる。そのための人員は、福祉、社会保障の専門家を配置すれば、スピーディーに解決につなぐこともできます。

この主張は、先日の安竹議員の主張と同じです。この問題では、連携して主張していきたいと思います。措置されている財源は、こうした体制づくりにも……

 

 

◯議長(井上恒弥君) あと1分で終了してください。

 

 

◯26番(鈴木節子君)(続) 有効に生かせるはずです。各部署との連携体制を今以上に構築し、総合的な相談窓口体制を構築する必要性に迫られています。生活困窮者自立支援法でも、全国でモデル事業が今、始まっています。静岡市もこうした事業をつぶさに研究し、よりよい静岡市なりの体制、システムを構築する、これを求めて質問を終わります。

 

 

◯保健福祉局長(小野田 清君) 初めに、扶養義務の質問にお答えいたします。

生活保護法において、扶養義務を履行するためには、扶養義務者が扶養するための資産や収入等々、扶養する意思を持っていることが必要になりますので、親族による扶養が保護の前提になっているわけではありません。こうした考え方は、今回の改正案でも何ら変わることはありませんので、扶養義務は強制しないものと認識しております。

次に、生活困窮者の生活再建を可能とするため、各部署との連携体制がとれる総合相談窓口の体制についてお答えいたします。

平成27年度から生活困窮者自立支援法に基づき、自立支援のための総合相談窓口を設け、相談内容に応じ、住宅支援給付や就労準備支援等の支援を実施する予定でございます。そのため、既に庁内関係課を集めた自立支援検討委員会で、生活困窮者に対して実施する施策や庁内外の連携体制の検討をしております。

今後も、国や他の指定都市の動向を踏まえ検討を進め、庁内関係課や庁外関係機関と緊密な連絡調整、連携体制がとれる総合相談窓口を整備していきたいと考えております。