認知症対策は予防に重点を

◯寺尾 昭
 この議会最短の12分で、2つのテーマを行います。
 今回は、認知症対策の推進と民生委員・児童委員の活動推進についてでございます。
 高齢化の進展に比例し、認知症も増加しております。先日も、友人が長生きは喜ぶべきものですが、認知症になることが怖いと語っておりました。
 これまでは、これ以上悪化させないということが認知症対策の主要テーマであったと言えると思いますが、最近、ある医療に係る雑誌の特集記事を見ました。「認知症はよくなりますヨ」という記事であります。認知症は脳のどの部分に異変が起こるかによって病態や症状が異なり、多くのタイプに分類されます。認知症に共通しているのが記憶障害だということであります。
 よく言われることですけれども、前日の食事のメニューを忘れたことや思い出すのに時間がかかるのは老化現象でありますが、食事をしたこと自体を忘れたと、これをエピソード記憶障害というそうで、これがつまり認知症の可能性が高いと言われています。
 そこで質問ですが、静岡市における認知症高齢者数は、どのように推移しているのか、お伺いいたします。
 次に、民生委員・児童委員の件でありますが、この民生委員・児童委員は、非常勤の特別職地方公務員という位置づけであります。厚生労働大臣から委嘱され、任期は3年、今年が改選の年となっております。
 これまでも、本会議で議論されてきておりますけれども、今年12月に改選が行われるということで、今回取り上げることにいたしました。
 民生委員制度の歴史をたどると、創立以来、100年以上になり、その過程で様々な制度の変遷が重ねられてきましたけれども、法律でその根拠が明確にされたのは、1948年の民生委員法の制定であります。その後、1953年、2000年、2013年に主要な改正が行われて、現在の体系が整ったということであります。
 委嘱数は現在、全国で23万人以上、男女の比率は2対3で女性の比率が高くなっております。民生委員は児童委員を兼ねることになっており、うち2万人を超える方々が主任児童委員ということであります。給与が支給されていないんですね。活動の経費は実費支給ということでありますけれども、つまり、この方々の活動は、いわゆるボランティア活動ということになっております。
 そこで、委員活動の現状と課題は今どのようになっているのか、まずお伺いしておきます。1回目です。

◯保健福祉長寿局長(増田浩一君)
 初めに、本市における認知症高齢者数はどのように推移しているのかについてですが、要介護認定を受けた65歳以上の認知症の方のうち、日常生活がほぼ自立している方を除いた人数は、平成23年度には1万7,175人でしたが、10年後の令和3年度では2万6,513人となっており、この間約9,300人増加し、1.5倍となっております。
 なお、同じ期間における本市の高齢者全体の数の伸びは1.2倍となっており、高齢者数の伸びよりも認知症高齢者数の伸びが上回っております。このことは、高齢者数の中でも後期高齢者数がより増加していることによるものと考えられます。今後も後期高齢者数の増加が見込まれており、認知症高齢者数はより一層増加するものと考えております。
 次に、民生委員・児童委員の委員活動の現状と課題についてですが、まず、現状については、本市では1,100人余の民生委員・児童委員が支援が必要な方への見回りのほか、地域の行事や福祉活動への参加、会議や研修への出席など、地域のボランティアとして多岐にわたる活動をしております。こうした活動は、委員1人当たり年間120日以上に上り、1日の間に見守りと会議への参加等、複数の活動を行うことも少なくありません。
 しかしながら、コロナ禍で思うように活動ができない時期もあり、相談や支援の件数で見ますと、令和元年度は約2万1,000件に対し、2年度は約1万7,500件となりました。
 こうした状況を受け、民生委員児童委員協議会では、自らコロナ禍での活動のガイドラインを作成し、対面によらない見守りなどを進め、令和3年度は約2万件の相談や支援を行っていただきました。
 次に、課題についてですが、12月の一斉改選に向け、地域から委員候補者の推薦が進む中で、自治会・町内会において候補者探しに苦慮している状況があります。
 本市の委員の充足率は、前回の一斉改選の時点で96.5%と政令市で4番目に高い数値ではありますが、委員の約6割が70歳以上と高齢化が進んでおり、委員の担い手の確保は大きな課題と認識しております。
  

◯寺尾 昭
 2回目です。
 これまで認知症は高齢者にとって避けがたい病気と言われてきました。そのため、認知症対策は事後措置、つまりこれ以上進行させないことや、進行してしまった方に対する対策をどうするかに力点が置かれてきたように思われます。最近の研究では、様々な予防措置により病気にならない、あるいは相当程度、遅らせることができると言われております。また、認知症には様々な要因が絡んでいると言われております。これまでかかった病気が関係していること、それらの病気のため処方された薬の影響、睡眠の状況、習慣性下痢症や便秘、腹痛など──リーキーガット症候群というそうですが、食事や生活習慣に関わることが要因となっているということであります。
 高齢化の進展により、認知症は今後も増加すると思われます。認知症になった方の対応はこれまで以上に進める必要がありますが、予防により重点を置くことが求められるのではないでしょうか。
 そこで質問をいたしますが、認知症の発症を予防する対策について、市はどのように取り組んできたのか、お伺いいたします。
 海外では、最近になって研究が進み、認知症は予防できる、認知症は回復することが可能と言われるようになってきております。例えば、イギリスでは、一般の家庭医が患者を診療、必要と判断すれば専門医を紹介する仕組みが出来上がっております。その結果、全ての人に原則無料で疾病予防やリハビリを含めて包括的な医療サービスが提供されています。また、禁煙対策や減塩の推進など生活習慣病の予防から認知症の減少を進めてきております。事後対策から予防へ大きくシフトしてきている状況であります。
 市も認知症施策の中で、認知症疾患医療センター運営事業、サポート医、かかりつけ医の研修や介護予防、生活支援ではS型デイサービス事業や地域介護予防活動支援事業など様々な活動に取り組んできていることは私も承知しております。行政と医療の連携がさらに今後必要になってくると思われます。
 そこで質問ですが、認知症に係る医療体制の整備に関し、市はどのように取り組んでいるのか、お伺いします。
 次に、民生委員・児童委員についてであります。
 先ほども申し上げましたが、今年は、民生委員・児童委員の改選であります。先ほど、委員活動の現状と課題について答弁がありましたが、その解決に向けてどのような取組をしていったらいいか、幾つかの問題提起をさせていただきたいと思います。
 民生委員の職務は、民生委員法第14条に規定されております。住民の生活状況を適切に把握していること、援助を必要とする方の能力に応じ、自立した日常生活を営むことができるように生活に関する相談に応じ、助言その他の援助を行うこと等としております。
 加えて、災害時の避難行動の要支援等関係者にも位置づけられ、高齢者等の避難や安否確認、避難後の生活支援などを行うことが要請されております。
 具体的な活動は多岐にわたっており、やり出せば切りがないという状況で、それだけに職務の範囲を明確化することが必要だと言えます。その活動にやりがいを持って積極的な活動を進めている方も少なくないわけでありますが、少しでも負担を軽減してほしいという要望は出されております。委嘱される方は必ずしも専門職とは言えず、なって初めて任務の内容を経験するという方も多いということです。
 委嘱数は先ほどありましたように、定員の96.5%で、確保できているということですが、推薦に当たって、自治会長や現在の民生委員が後任探ししているところで、大変苦労しています。いわゆるなり手の問題です。やむを得ず、自治会長本人がなってしまうというケースも出てきているわけです。
 そこで質問しますけれども、一斉改選に向けて、課題についてどのようにまず取り組んでいるのか伺って、2回目でございます。

◯保健福祉長寿局長(増田浩一君)
 3問の御質問にお答えいたします。
 初めに、認知症の発症を予防する市の対策についてですが、国の認知症施策推進大綱においては、認知症予防に資する可能性があるとされていることとして、運動不足の改善、糖尿病等の生活習慣病の予防、社会参加による社会的孤立の解消などが挙げられております。
 これらのことを踏まえて、本市では、主に次の3点の事業に取り組んでおります。
 まず1点目は、認知症の予防に関する理解を促進するための普及啓発です。民間企業や自治会などで開催する認知症サポーター養成講座や、医師会と共同で実施している認知症ミニ講演会等で周知するほか、パンフレットを作成し、図書館等の市の施設、民間の介護事業所等へ配布し、周知を図っています。
 2点目は、高齢者が身近に通うことができる通いの場の整備です。
 本市では、通いの場として認知症カフェを市内21か所、S型デイサービスを市内276か所整備し、認知症の予防に向けた高齢者の運動不足の改善、社会参加による社会的孤立の解消を図っています。
 3点目は、認知症予防のためのMCI改善プログラムの作成です。MCIとは、認知症の一歩手前の状態をいい、この段階で予防して、年齢相応まで回復させたり、できるだけこの状態を維持することが重要であると言われています。
 現在、認知症ケア推進センターかけこまち七間町をはじめとする市内数か所で、有識者や専門職とともにプログラムの開発、検証を進めているところです。そして、今後はこのプログラムをS型デイサービス等の通いの場で認知症予防に関する普及啓発と併せて実施することにより、より効果的な取組となるよう進めてまいります。
 次に、認知症に係る医療体制の整備に関する市の取組についてですが、議員から御案内いただいたことも含めお答えいたします。
 本市では、相談、診療、そして困難事例の対応の3点から医療体制を整備しております。
 1点目の相談につきましては、相談窓口として、認知症ケア推進センターかけこまち七間町や市内30圏域に設置している地域包括支援センターがあり、必要に応じてかかりつけ医等の医療機関へつないでおります。
 2点目の診療については、まず、かかりつけ医において、適宜、認知症の診療に習熟している認知症サポート医の支援を受けながら対応しております。このかかりつけ医の認知症対応力を向上させるため、本市では研修を実施し、現在までに、市内内科診療所の医師の約半数が研修を修了しています。また、認知症サポート医を養成するための研修も実施しているところであり、現在、約50人の医師が登録されております。
 なお、より専門的な医療を提供するため、認知症疾患医療センターとして3病院を指定しており、医療相談や鑑別診断、身体合併症への対応等を行っております。
 3点目の困難事例への対応については、医療の受診を拒否している等の事例に対して、各地域包括支援センターに設置された認知症サポート医等で構成される認知症初期集中支援チームが認知症の方や家庭を訪問し、適切な医療や介護サービスの提案などを行います。
 今後も医師会などの関係機関と連携しながら適切な認知症医療が提供されるよう取組を進めてまいります。
 最後に、民生委員・児童委員の一斉改選に向け、課題についてどのように取り組んでいくのかについてですが、課題である委員の担い手の確保には、自分に委員が務まるかという活動上の不安や実際の活動における負担の軽減が重要なことから、委員の協力を得て整備した活動マニュアルの更新や休日夜間等も含めた緊急時の市職員の支援体制の充実を図ってまいります。
 また、相談を受けた際の専門的な対応や個人情報の取扱いなど、活動上の重要な事項について、委員の経験年数や役職に合わせ、実際の事例を踏まえた実践的な研修を充実し、活動を支援してまいります。
 このほか、地域での負担が委員1人に集中することがないように、市民の皆さんに委員の意義や役割を周知し、活動に関心を持っていただくとともに、地域の方の協力を得られる環境を整備することも重要であると認識しています。
 具体的には、委員の活動を紹介する市民向けの出前講座の実施やパンフレットの作成、学校における福祉教育を通じた啓発などを行い、様々な機会を捉え、幅広い世代に働きかけてまいります。
 委員の担い手の確保は難しい課題ですが、新たな担い手の創出とともに円滑な活動の確保に向け他都市の状況や有識者の意見も参考にしながら、さらなる支援の充実を図ってまいります。

◯寺尾 昭
 3回目、意見・要望ということにいたします。
 まず、認知症対策であります。先ほど、記事も紹介しましたけれども、見て驚きましたのは、認知症誘発の要因の1つに多剤服用、つまり、必要以上に大量の薬を服用することで起こるということでした。たくさん薬を飲んで副作用で様々な症状が現れる薬害起因性老年症候群、新しい言葉がいろいろ出てくるんですけれども、その1つに認知機能の低下があるということです。認知症を改善するために開発された薬が正しく処方されず、それがまた悪化の原因になるというのも、私もちょっとびっくりいたしました。
 行政と医療の連携が必要です。市は地域包括ケア推進本部の下、様々な施策を進めておりますが、進んでいる医療技術をどう活用していくのか、そのために医療従事者等との連携をどう図っていくのか、ここをさらに検討していってほしいと私は思います。
 それから、民生委員・児童委員についてであります。
 地域で大切な役割を果たしている民生委員・児童委員ですけれども、その活動について、住民の周知という点では、大変不十分であります。5年前の全民児連の調査では、民生委員を知っている人の割合は7割ですけれども、9割以上の方がその役割や活動内容を理解していないという結果であったことを公表しております。
 私のところにも何人かの方から声が届いておりまして、高齢者の実態調査を行っておりますけれども、民生委員の推薦の条件が75歳までになったということで、調査をする側が調査をされる側の人よりも年が多いというケースも結構あるということなんですね。高齢者同士ですから、気楽さはあるということでありますけれども、なかなか笑うに笑えないといいましょうか、そういう課題もあるということです。
 児童委員についても個人情報の保護の意識が高まっており、子供や家庭の問題など情報が伝わらず、後から知ったというケースも出てきているということであります。委員活動に当たって、委員と行政、地域住民との情報共有が非常に重要ですが、当然、個人情報の適切な取扱いには留意して行う必要があります。
 支援を受ける側の立場に立つと、委員の方を信頼して自分の機微な個人情報を伝えているというわけですから、見守りなどの対象者の情報が確実に保護されるよう、答弁にもありましたけれども、個人情報の取扱いなどの研修の充実をお願いして、質問を終わります。